第三十二話 襲撃
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あれから僕はどのくらい眠っていたのだろう。意識はまだハッキリとしないし、腹の痛みはひかない。ボーッとする最中、僕の顔は誰かに軽く平手打ちされ完璧に目を覚ました。目の前に居たのは僕に溝うちをした顔に傷のある男だった。
「……覚ましたか、まあしばらくの間大人しくしてろよ。そしたら解放してやるから」
僕は逃げようと立ち上がろうとするが、両手両足が椅子に縛り付けられていた。どうやら拘束されているみたいだ。座ったまま周りを見渡すと薄暗い倉庫のような所にざっと五十数人はいるようだった。一体何の為に僕は連れてこられたのか僕には判断出来なかった。
「それじゃ! 人質もいることだし始めますかな!」
「「「ヒャッホー!!!」」」
男達は日本刀や拳銃を持ち、何かするつもりだ。僕は人質らしいから殺す事はしなさそう。先ほどから僕の近くに居座っている傷の男にこれから何をするのか聞いてみた。
「あの、一体何をするつもりですか? 僕は何の為に連れてこられたんですか?」
「あぁん? そんなの人質だからに決まってんだろ?」
「いや、一体誰の人質かが分からないんですが……」
「誰って……お前の姉の人質だ」
一瞬、世界が静止したのかとか錯覚するほどに僕は意識が飛んでいた。すぐに意識が戻ると、傷の男に問い続けた。
「え!? 何で? 何で美羽姉が貴方達に狙われるんですか? 意味が分からない……。何かの間違えって事は無いんですか? あの美羽姉が何かしたって事がーー」
僕はその時に今までの美羽姉がしてきた事を思い出してきた。確か入学式の日に裏カジノやお金がどうとかいっていたような……。
「ーーありえますね……。もしかしてお金関係ですか?」
正直それで無い事を祈りながら自分が予想してみた事を男に告げると男は驚いた反応を見せ、ベラベラと話し始めた。
「お前知ってんじゃねえか! ……ああ、そうだ。あの女、俺らの金をバックに借金してんだよ! その借金返済の日過ぎているってのに一向に振り込んでこないから、自宅を襲わせてもらった。だが、家には金はねぇ。価値のあるもんも無い。そうときたら無理矢理にも払ってもらうしか無いだろ? そういう事で借金返済しないとお前を帰さないって事にした。そして、これからもう一度お前の家に全員で乗り込んであの女に無理矢理払わせるって寸法さ。まあ悪く思うなよ、返さないあの女が悪い」
男は話し終わると、仲間のいる方に向かっていった。僕は頭を垂れて落ち込んだ。全く僕は関係ないじゃ無いかと、ただ巻き込まれただけだと。そう思うと、無性に腹が立ってきた。一発殴りたい、この思いを僕の全力の拳で殴りたい。
倉庫にいた男達は武装した状態で僕の家に乗り込む話をしていた。見立てでは残り数時間以内にも出て行きそうだ。その間にここを脱出した方が良さそうだ。巻き添えを食うのはもうこりごりだ。両手を上下に動かし、縄からすり抜けないかやってみる。しかし、手首が擦れるだけで抜けられなさそうだ。
「そんじゃ、準備の出来た奴から先に行け! 金を回収してこい!」
男達は倉庫の扉に行き、外へ出ようとするが、扉が開かない。男が何人か集まったが、ビクともしない。すると、男達が騒ぎ出した。ここに来て一体何かあったのかもしれない。
「どうしたんだっ!!」
「と、扉が開きません!!」
「そんな事ねえ! しっかりしやがれ!!」
「ほ、ほんとですって。これじゃあの女の家に行けません!!」
男達の話がどんどん騒がしくなっていくが、そんな騒ぎの中やたらと大きな音が頭上から聞こえてくる。男達も騒ぎを止め、頭上に耳を傾ける。
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そして話は一時間ほど遡るーー。
場所はヘリの中。美羽姉と美夜さんが僕を救助しに行っている最中。
「あの、美羽様。これから何をなさるおつもりですか?」
美夜が興味本意でこれからやろうとする事を問う。私は当然のように答える。
「ん? 勿論、ゴミ掃除だけど? どうかしたの?」
「い、いえっ……。それと、このヘリで奇襲でもかけるおつもりなのかと気になったもので……」
「そうだけど? 何か問題ある?」
「はい……。和馬様が怪我しないか心配になります」
「はっ! それもそうか!! それじゃどうしよっか? ん〜。……あっ! そうだ! なら先に私が突入するからそれから十分後位に殲滅開始って事でいいかな? うん♪ そうだそうしよっと」
私は携帯を取り出し、買収した軍隊の指揮官に連絡を入れた。既に目的地周囲に張り込んであり、入り口の封鎖。いつでも突入出来るとの事だった。先ほど考えたことを指揮官に事細かに伝え、携帯をしまう。
「さてと、美夜は私に着いてきてね♪」
「えっ! あ、はい……」
全員の動きを把握したところでタイミングよく、目的地に到着。私はヘリを屋根に近づけ跳び移った。
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頭上からボコンと音がしたと思ったら、その後、屋根の破片が僕の真横に落ちてきた。男達も僕の頭上に注意を向けるが、時すでに遅し。倉庫内に誰かの侵入を許してしまった。侵入者は僕の横に立つと男達に言い放つ。
「……はぁーい♪ 泥棒の皆さん、こんにちは~♪ 私の弟を返してもらいに来ました~♪」
「み、美羽姉!? どうしてここに!」
「何でって……カズ君を返してもらいに来ました♪」
美羽姉はポケットから鋏を取り出し、僕の縄を解いてくれた。僕は手首や足を擦りながら、美羽姉にどうしてここが分かったのだろう?
「美羽姉、僕の場所なんてよく分かったね?」
「まあ、カズ君の匂いなら、例えこの町を出たとしても大方の場所は嗅ぎ分けられるからね~♪」
「……………それは、う、嘘だよね?」
「やだ~♪ 流石の私も一キロ以上離れたら分からなくなっちゃうから、今回は発信器でここまで来ました♪」
「へぇ~……って! 一キロ以内なら匂いで分かるの? それと発信器って! 何!?」
「さーて、話もすんだし、殺りますか。準備はオッケー? 美夜」
「待って! 美羽姉。まだ話は終わってないよ! それに『やりますか』って何か字が違うような気がするし、美夜さんもここに来てるの?」
呼んだ名前に答えるように屋根の穴から縄ばしごを下ろし、美夜さんが降りてきた。
「勿論ですよ、和馬様。それと美羽様、準備に問題ありません」
「み、美羽姉? 一体何をするの?」
美羽姉は足下にあった鉄の棒を拾い上げ、自分の手に馴染ませるようにブンブン振り回し始めた。振る度に風が僕の頬を撫でる。僕も男達もそれを呆然と眺める。
素振りが終わった美羽姉は僕を背に隠して男達の前に立つ。
「それで一体私に何の用なの?」
男達の中から一人ゆっくりと美羽姉に近づいた。どうやら男達のボスのようだった。顔や腕に複数の傷があり、多くの死線を乗り越えてきた雰囲気を漂わせていた。
「覚えがないか……。岩永さん、貴女に貸した金のことですよ」
「……お金、お金…………嗚呼、随分前に借りたお金のことね。あれ? 返さなかったっけ?」
「ええ、こちらに返してもらっていません。なので、強行手段でこのような手段を取らせてもらいました」
男は僕の方を指差した。どうやら人質の事らしい。美羽姉は「それで?」と話を無視しながら男を睨む。だが、男もそんなもんでは怯まない。
「借りた金さえくれれば、大人しく弟さんは返しますからーー」
「それで? いくらですか? いくら払えば気がすみますか?」
「……と、とりあえず利子プラス延滞料金込みで……三億円。三億円払いやがれっ!」
男は美羽姉が全く動じないので怒鳴るように言う。しかし、三億円は借りた分を考えても多い気がする(いくら借りているかは分からないけど……)。
その事は僕でも怪しいと分かったが、美羽姉は「ふーん」と手を顎に触れながらしばらく考えると、男に言った。
「その程度なら、いくら払っても問題無いから、さっさと払っちゃいます。現金がいいですか? それとも小切手?」
「何でもいい!! 今すぐ払え!」
「分かりました……カキカキ……はい。これどうぞ三億円の小切手です」
「なっ!? 嘘だろ……」
「本物ですよ? 確認してみますか?」
美羽姉は小切手をペラペラ手で振り、馬鹿にするように言う。男は小切手を無理矢理奪い取ると、凝視するように見つめる。
「た、確かに本物だ……。だが、借りた百万円で一体いくら稼いだんだ!?」
美羽姉は男に向かって指を一本だした。男はそれを見て、いくら稼いだかが分かった。
「い、一兆円だと!? 岩永さん、そんなの金どうやってーー」
男が話を続けるが、美羽姉は飽きれとように男を見つめる。
「何を勘違いしているの? 私が稼いだのは一京円ですが……。何を早とちりしているの?」
すると、男の態度が一変した。どこかで見るような悪役じみた笑い方をし、反対方向の男の部下達に喋りかけた。
「聞いたか! 諸君。この女からの借金は受け取った。だが! この女の懐はまだまだ余裕があるようだ。となれば、やることは分かっているな?」
男の部下達は先ほどから持っていた刀や銃を掲げ、声を荒立たせた。
「「「おおおおおおおぉ~!!!」」」
声とともに男達が一斉に美羽姉に襲いかかった。
更新が少しばかり遅れてしまい、申し訳ありません。捕まってしまった和馬も美羽姉によって助け出されそうですね。それにしても美羽姉の変態っぷり! まあ、考えている事ややっている事は異常ですから仕方ないです。次回は……って言っても結構早めに更新かもしれませんので特になしでっ!
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