第二十九話 強盗
僕は信三とゲーセンに入ると百円玉を取り出し、いつもやるUFOキャッチャーに硬貨を投入した。狙いはあの可愛らしいヒヨコのぬいぐるみ。美羽姉が高校に入学する前に一緒にここに来た時があった。その時に美羽姉はヒヨコのぬいぐるみを見て欲しいと呟いていたので、ここに来たついでにとって帰ろうかなと思ったのだ。
「さてと、久々だから上手く取れるかな? まあやってみないと分からないよな」
ボタンを押して狙いを定める。クレーンが動き、目標のぬいぐるみに近づく。クレーンは目標を持ち上げ、僕は内心取れたと感じたが、目標物は簡単にポロッと落ちてしまった。
「くそっ! 流石に一回じゃ取れないか……」
ポケットにしまった財布から何枚か硬貨を取り出し、もうワンプレイするが、結果は先ほどと同じ。これじゃ貯金箱みたいに金がどんどん吸われてしまう。手元に出した硬貨を見つめながらどうするか考える。すると他のゲームをしていた信三が僕の所にやってきた。
「和馬ー、どうだ? 何か取れたか?」
「全然取れない……。信三これ取るの手伝ってもらって良いか? 飯一食分奢るから」
信三は腕を組みしばしの間考え込んだ。随分前にこいつの財布の中身を空にしたから、多少金欠のはずだ。それに試験前にあった賭け事でクラスの連中にかなりの金が渡ったはずだからほぼ一文無しに近いのかもしれない。
「んーまあ、それならいいぜ。正直飯には困ってたから。それでこのヒヨコを取ればいいのか?」
「うん。よろしく頼むよ」
「了解」
信三に先ほど出した百円玉を手渡しUFOキャッチャーを譲る。そのまま硬貨を投入し、ぬいぐるみを狙う。僕はそれを横から眺めつつ携帯電話を取りだし、美羽姉に連絡しようと思ったがすでに連絡が来ていた。まあいつもの事だろうと言いつつも送られてきたメールを開く。他愛もない連絡と帰りはもう少し遅くなっても良いとの事だった。
ーー可笑しい。
僕はいつもの美羽姉なら早く帰ってきてやら会いたいとかメールで送ってきそうな物なのに今回に限って『帰りは遅くなっても良いよ』なんて送ってくるなんてどう考えても変だ。携帯電話を開いたまま僕はその場で硬直してしまった。
「……おっしゃっ! 和馬、目的の物取れたぞ……ってどうしたんだ? 携帯開いたまま硬直しちゃったりして」
「……信三なら、美羽姉が僕に帰り遅くなっても良いよなんてメール寄越してきたらどう思う?」
昔から美羽姉の事を知っている信三に意見を聞いてみる為に質問してみた。
「んーと、多分家で何かあったんじゃ無いかな? それか何らかのサプライズとか!」
確かに信三の言うサプライズはあり得ると可能性だと思うものの美羽姉ならそんな事を隠す事は決して無い。携帯を閉じて二つ目の可能性を考える。やっぱり家で何か起きたのかな? 妙な胸騒ぎがした僕は信三にぬいぐるみを預けて、先に家に帰る事にした。
*****
カズ君が私のメールを見た後、信三を残して何処かに行ってしまった。他の監視カメラで確認すると家の方面に向かっているのが分かった。
「何で家に帰ろうとしてるの!? お姉ちゃんが遅くなっても良いって言ってるのにっ!」
「和馬君はおそらくいつもと違う内容のメールをしてきたから心配になったのではないですか?」
「か、カズ君が私の心配を…………ポッ♪」
「照れてる場合ですか? こういう時に護衛を雇ったんじゃないんですか?」
私は杏ちゃんに言われ我に返った。カズ君が先に家に行ってしまったら、無関係なのに迷惑をかけてしまう。すぐさま美夜を呼ばなくては。机の裏にある緊急用のスイッチを押し、美夜を呼ぶ。押してから数秒で来てくれるはず。数秒後、生徒会室の扉が開かれ、美夜が入ってきた。
「何かありましたか? 美羽様」
「原野先生、大至急私の家に行ってカズ君を護衛してあげて! もし、トラブルと呼べるような事があった場合は…………何をしても構わないから」
「畏まりました。直ちに向かいます」
美夜はそのまま生徒会室を出て行った。彼女に任せれば安心だろう。さてと、私も早くカズ君の所に行かなくっちゃ! すべてのモニターをしまい、荷物の整理をする。残りの雑務やら何やらは杏ちゃんに任せれば大丈夫。
「それじゃ、杏ちゃん。後の事は任せたよ。私はカズ君の所に行くから! バイバイ~」
私は足早に生徒会室を出ていった。
今回で二十九話となりました! 投稿してから間もなく一年…。まあ辞めずによくここまで来ましたって感じです。今回も短めです、どうもすみません泣。でも内容としては盛り上がってきたんではないでしょうか? 次回の更新は金曜日を予定としていますので、予定としていますので、大事な事なので二回言いました笑。
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