第二十七話 試験勉強その四
美羽姉の部屋の前まで来てノックをする。いつもなら部屋を飛び出してくるはずなのだが……。
「…………ん? 美羽姉?」
もう一度同じようにノックをするが、返事がない。もしかしたら寝ているのかもしれない。僕は一言断りを入れる。
「美羽姉? ……入るからね?」
ドアノブを掴み、扉を開けようとする瞬間。ガチャッと扉が勝手に開いた。僅かな扉の隙間から美羽姉が顔を覗かせる。
「……カズ君? どうしたの?」
いつもの美羽姉らしい覇気が感じられない。流石にリビングでの一言は効いたのかもしれない。落ち込んでいるようなので謝ろうと頭を下げようとするが、自分の頭が急に前に引っ張られる。
目の前は真っ暗。一体何が? 頭が混乱している僕はすぐには分からなかった。だが、頭上から聞こえる声でようやく理解した。
「……カズく~ん。カズ君カズ君カズ君カズ君カズ君。んんっ~、いい匂い。クンクン、クンクン。すーはーすーはー。はぁ~♪ 落ち着く~♪」
「……って何してんの!? 恥ずかしいから離れてっ!」
僕は逃げるように美羽姉から離れると、この状況を理解することが出来た。どうやら胸の中で頭だけ抱き締められていたようだ。
「カズ君何でそんなに嫌がるの? お姉ちゃんの事嫌いなの?」
「いや、嫌いと言うより恥ずかしいだけなんだけど……」
それより美羽姉が部屋から出てきた時、やけに部屋の中が暗かった。もしかして電気が切れてしまったのかな? 僕は美羽姉に部屋が暗かったことについて聞くことにした。
「美羽姉、もしかして部屋の電気切れちゃってる? 切れてるなら僕が交換してあげようか?」
「い、いや! 別に切れてるわけじゃないから気にしないでっ!」
「そう? それならいいけど……。そうだ! 今日の晩ご飯は美羽姉にお願いしてもいい?」
「そのくらいいいよ。私が食べたいもの作るけどそれでもいい?」
「大丈夫だよ。それじゃ、みんな待ってるから先に下に降りてるね」
僕は美羽姉の挙動が可笑しいとは思わずにそのまま下に降りていった。
*****
カズ君が下に降りていき、ホッとした。カズ君が部屋に籠もっててと言うから部屋でのやることが無くなってしまい、ついつい仕掛けてある監視カメラを起動してカズ君ばっかり見てしまった。
「はぁ~、でもカズ君にさっき部屋の中に入られなくて良かった」
後ろを振り向き机の正面を見る。そこには十四インチくらいのモニターが大量にあり、それぞれ別の場所を移しだしていた。家のリビング、カズ君の部屋、お風呂、登下校の道、学園の廊下、教室、体育館等々と何百とあるそのモニターは勿論カズ君を見るためだけに設置した物だ。明るい部屋だと画面が反射してモニターがよく見えないから部屋はカズ君がハッキリと見えるようにわざと暗くして見ていた。
「まあ、カズ君に危険が及ばないように見守ってるだけだから問題ないよね? うんうん、大丈夫大丈夫。それにしても……」
また何か言われると嫌なので部屋の電気をつけ、リビングモニターでカズ君が戻っていくのをニヤニヤ見る。戻ったのを確認するとモニターをリモコン一つで全部しまい込み、部屋を後にする。
「……カズ君の為に……お姉ちゃん頑張るよ」
そんな一言をこぼし、私は晩ご飯を作りに一階に降りていく。
今回は短めなので軽い気持ちで読んでいって下さい。勉強会は今回でおしまいです。次回からは話が進むので楽しみにしていて下さい。
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