第二十四話 試験勉強その一
土曜日。今日は知り合いが僕の家に集まって勉強会を開くのだ。それが気になってか今朝は妙に早く起きてしまった。
「カズ君~♪ カズ君~♪」
「……何?」
「添い寝しよ~♪ 添い寝♪」
「添い寝って……はぁー。もうしてるじゃん……」
目が覚めて横を見ると、既に僕のベッドの中に潜り込んでいた。今の時刻が四時過ぎだから、それより前に布団に入ってたという事になる。
「美羽姉。僕もう子供じゃないんだから、ベッドに入ってくるなよ……」
「だって~カズ君の寝顔、興奮しちゃうくらい……いいんだもん!」
「何さらっと変態発言してんの? もうベッドから出るから離れて」
美羽姉を押し出し、ベッドから立ち上がる。軽く欠伸をしながら伸びをする。早く起きたせいかまだ少し眠い。
着替えをしようとクローゼットを開けて着るものを選ぶ。今日は他の人が来るから、だらしない格好は出来ない。
決めた服を手に取り、着替えようとするがーー
「…………美羽姉」
「……何?」
「……僕のズボンに手をかけて何してるの?」
「何って? ……着替えを手伝ってあげようとしてるんだけど?」
「恥ずかしいからやめて!! 早く出ていけい!!」
ズボンから手を離し、部屋から追い出した。全く何と恐ろしい姉だろうか。女性として恥ずかしさに躊躇が無さすぎる。
いつからあんな感じになってしまったのか。スキンシップが減ったと思ったら、急に過激になったりと何を考えているか弟の僕でさえ分からない。着替え終えたタイミングで声がかかった。
「カズ君? もう着替えすんだ? すんだよね? はぁーはぁー……洗濯物もらってもいいかな?」
妙に扉からの声が荒い。熱でもあるのか。でも、怪しいので一応確認をとる。
「いいけど、何に使うの?」
「べべべ別に何も使用したりしないし! 汚してりしないから!!」
もはや弁明の余地もない。絶対何かするつもりだ。考えは分からなくとも可笑しいのは僕でも気づいた。
「自分で後で洗濯するから別にいいよ。美羽姉も自分の事しなって。僕一人でも出来るから」
「分かった、じゃあご飯出来てるから降りてきてね? ……ちっ! 回避スキルが上がってやがる」
階段の音がトタトタと聴こえたので下に降りていったのだろう。ゆっくり扉を開けてリビングまで行った。
*****
朝と言っても五時過ぎの時間だ。こんな早く家に来る人と行ったら新聞配達の人しかいない。いないはずなのに……。
「おはよう、岩永和馬。良い勉強日和だな」
リビングで優雅にモーニング珈琲を飲む輩が居た。
「……何でもう居るんですか……岡野先輩。はぁー」
「溜め息つくなよ! 哀しくなるだろ!」
珈琲を置き、机をバンバン叩く岡野先輩。珈琲が零れてるし……。美羽姉が先輩をなだめる。
「まあまあ岡野さん、落ち着いて下さい。カズ君もいくら胸を弄った相手だからって失礼じゃないの?」
「ま、弄ってないし、それにあれは事故だ!」
「……そう? でも触り心地はどうだったの?」
「そりゃ、良かーー……って! 何言わせるつもり!?」
「カズ君……私の胸じゃ駄目なの? そんなに他の人がいいの?」
「いいも悪いも姉弟! 姉弟だからそんな事しません!」
「お姉ちゃんはいつでも準備万端だよ♪」
「あーあー何も聞こえないー。聞こえないからなー」
美羽姉の事は無視してしまおう。それより、お腹が空いて美羽姉に構うだけで疲れてしまう。台所からすでに出来ている朝ご飯を取って、もう来てしまってる岡野先輩と朝ご飯を食べる事にした。
「そういえば、岡野先輩は何でもうここにいるんですか? 常識ってもんを知らないんですか?」
ご飯を食べながら目の前の岡野先輩をいじることとしよう。
「じょ、常識ぐらい……ある」
「本当ですか? 僕は信じられませんが……。じゃあ、何か常識っぽい事話してくださいよ」
「えと、……自分の身を守るために常に拳銃を持ち歩く! とか……」
腰にぶら下げている拳銃を取り出し、僕に銃口を向ける。
「何だか自信ありげですが、拳銃を持ち歩いている時点で非常識です」
「そんな!? 私はそうやって教わったぞ!」
「誰にですか?」
「パパ……じゃなくて、父親から」
「岡野先輩……いい直しても遅いですよ」
拳銃を机上に置き、恥ずかしそうに顔を伏せる。何とも分かりやすい人だ。
「お姉ちゃんを放って置いて、何だかイチャコラしてていいですねー。カズ君は岡野さんに教えてもらったら? 私は部屋に一人で籠ってるからー」
先ほどから無視していた美羽姉もそろそろ限界に来たのだろう。僕に構って欲しくていじけ始めた。だがそれもいいかもしれない。僕はそんな事を思いつつも岡野先輩にわざとお願いをして美羽姉をからかう事にした。
「じゃあ、そうさせてもらうよ。岡野先輩、お願いーー」
しかし、その言葉を大きな音と声が遮った。
「駄目ー!! 和馬の勉強はあたしが見るんだからっ!!」
リビングに飛び込んできたのは頭に寝癖をたくさんつけた千景だった。
*****
普段ならもう少し寝ているはずだが、騒がしかったのか珍しく早く起きてきた。この時、時刻は午前六時過ぎ。
「和馬もあたしとかに頼んでよ! 教えてあげるから」
千景が僕にそんな事を言うが、そもそも気になっていたことがある。それを聞いてみないことには判断が出来ない。
「千景って勉強できるの?」
「ふふふっ! 馬鹿にしないでよ。あの学園に編入するための試験で合格したんだから!」
「編入試験なんてあったんだ。それで美羽姉、千景の点数はどうだったの? うちの学園そこそこ点数良くないと入れなかったはずだけど。僕も去年物凄く勉強したの経験したから分かる」
「ふーん、カズ君には教えてあげないー。お姉ちゃんを無視したからー」
「分かった謝るから、点数がどうだったかくらい教えてよ」
「そう? それなら教えてあげる♪ チカちゃんの点数は……」
「……点数は?」
「どの教科もギリギリだった。それなのに杏ちゃんがあの時勝手に編入書類に編入オッケーの許可出したから……」
あの時とは天峰さんが僕に謝罪したいから生徒会室に来てほしいと言って生徒会室に行った日の事だ(注釈:第十二話)。
それ自体、あの時自分で面倒だからって天峰さんに押し付けてたせいだと思うけど言わない事にしておこう。
「つまり、千景はギリギリの合格でまぐれであると」
「ちょっ!? それ酷い! 一応合格点には達してたからここにいるのに!?」
「まあ、そうみたいだね……。それと話を聞くに千景は僕に教えられる立場にないという事が分かった」
「うぐっ!」
千景は僕の指摘に息を飲む。まあ、それが普通の反応だろう。
「それよりチカちゃん、朝御飯どうするの? 食べる?」
「ん? あぁ、食べます。どこにありますか?」
「台所にチカちゃんの分は置いてあるから、それを食べて」
「分かった」
千景は美羽姉に言われた通りに台所に行く。僕はもうそろそろご飯を食べ終えてしまうが。
「何これ!?」
ちょうど食べ終える瞬間。台所から千景の声が響いた。一体どうしたのだろう? バタバタと足音がしてリビングに戻ってきた。
少し遅れましたが、更新できました。さて、千景のご飯が一体とうしたのでしょう? (おおよそ見当がつくが……)次回の話としましょう。
最近のスランプが酷いですが、のんびりとやっていきましょう! それとブックマークしてくれた読者様ありがとうございます。
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