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第二十二話 勝負その四

 

 さて、残りの審査は先生と岡野先輩、それに天峰さんの三人となった。先程から食べている料理は何の問題もなく食べられた。だが、ここらか先は確実に生死を伴う命懸けの審査だ。


「そんじゃ、原野先生。お願いします」


 信三の一言で料理を改めて運んでくる先生。手筈てはず通り信三が食べる予定となっているが、心配はいらないだろう。

 僕の目の前に置かれる皿。普通ならここで美味しそうだと思うはずだ。しかし、原材料を知ってしまっては美味しそうなんて思うはずがない。


「……和馬様、どうぞお召し上がりください」


 お召し上がりも何も、この料理には『蛙』が混入してるから絶対食べたくない。しかし僕は見た目を見て素直に驚いた。先生は蛙の形をした料理を持ってくると思っていたからだ。


「先生? これは一体……」


 目の前の料理について聞いてみる。先生は何でそんな事を聞くの? みたいな顔をしたが、僕の問いに答えてくれた。


「何、とおっしゃいましても……。見た目通り『ハンバーグ』ですが? それがどうか致しましたか?」


「い、いえ! 何でもありません! ……見た目は凄く美味しそうですね」


「和馬様、一応味も問題ないはずです」


「そ、そうですよね! すみません……」


「私なんかに謝らないでください。そんな事より、どうぞお召し上がり下さい」


 僕は箸を持ち、ハンバーグらしいものを上から押してみる。普通のハンバーグ同様肉汁が溢れ、非常に美味しそうだ。箸を置き、先生に向き直る。


「……先生、審査となっていますが、僕だけの試食で基準が分からないので、信三に試食してもらってもいいですか?」


「はい、私は構いませんよ」


 案外素直に返事をする先生。多分、雇い主である美羽姉の命令で護衛対象には逆らわないとか指示されているのだろう。信三に箸を渡し、僕は信三が息絶える瞬間でも眺めることにしよう。


「そんじゃ、いただきます! あーん……」


 おそらく箸を口に入れながら気絶するに決まってる。だが、すべてを見た目で判断してはならないと美羽姉に言われたことを思い出す。全く、何でそんな事を急に思い出したのか。それは信三の様子を見れば分かる事。


「う、美味い! てか、何て美味さ何だよこれ! 普通に店出しても可笑しくないレベルだぜ!」


 信三が先生の蛙入りハンバーグを美味い美味いと言って食べているからだ。可笑しい、だってあんな可笑しな物を使って美味しい料理が出来るはずがない。


「信三、僕も一口貰っていいか?」


「ん? ああ、いいぞ。ほれ」


 箸を受け取り、ハンバーグを一口サイズに切ると、意を決して自分の口の中に入れてみた。肉汁が口の中で溢れ、肉があっという間に消えていった。本当に美味しかった。しかし、僕は何だか食べたことのある『ハンバーグ』だと思った。すると先生の後ろで美羽姉が手招きしているのが見えた。


「すいません先生、ちょっと美羽姉の所に行ってきますね」


「はい、分かりました。残りはどうしますか? いただきますか?」


 先生はハンバーグの方を見て言ったが、視界に入った信三が残りを俺にくれという目をしていたので先生に残りは信三にあげてくださいと言って立ち去る。


 *****


「何か用なの美羽姉」


 周りに聞こえない程度の声で美羽姉に話しかける。美羽姉はハンバーグを気にするように僕に質問する。


「あのハンバーグどうだった?」


「どうだったって……普通に美味しかったけど、もしかしてあれ作ったの……美羽姉?」


「ピンポンピンポン大正解! よく分かったね。流石カズ君!」


「てか、何でそんな事したの?」


「だって~……先生の料理って不味すぎるんだもん。あんなものをカズ君に食べさせる訳にはいかないよー。先生が作るもの知ってたから作り終わった瞬間にあらかじめ作っておいた私のハンバーグと先生のハンバーグを入れ替えたのだー。まあ結局、信三が食べる事になったのは想定外だけど……」


 信三を見ながら美羽姉は不機嫌そうな顔をした。だけどよく見た目そっくりの物を作れたよなと感心してしまう。

 試食席では信三が全部平らげたみたいで僕に帰ってくるように手招きをする。


「ほら、和馬。さっさと帰ってこーい、審査が進まん」


「分かった、今行く。……美羽姉それじゃ、ありがとね」


「お返しは十倍返しでお願いね♪」


 嫌なお返しだが、命が助かったとしては随分と安めにしてくれたのだろう。普段の美羽姉だったら、何らかの条件を出してきそうだが、今回はそれが一切ないのでありがたい。


 *****


 さてさて、審査の続きだ。残りは二人、岡野先輩と天峰さんだ。先ほどは美羽姉がすり替えて何とかゲテモノを食わずに済んだが、今度の料理は怪しすぎる。

 別れ際、美羽姉に岡野先輩の料理はすり替えたのか聞いたが、全くもってしていないとの事。なので確実に信三に食わせないと、明日から僕が再起不能になってしまう。


「それでは、岩永和馬! 私のを食うがいい!」


 次の審査対象の岡野先輩が僕の前に皿を置いた。匂いも見た目も美味しそうだが、作っている最中に色々聞こえてしまったので食べる気にもならない。


「あ、ありがとうございます。でも、さっきからの試食で結構お腹にきたので、信三に食べてもらってもいいですか? 先輩」


「え!? んーと、なるべく岩永和馬に食べて欲しいのだが……」


「……分かりました。それじゃあ、信三これやるよ」


 僕は横にいる信三に皿を回し、その様子を眺める事にした。


「和馬、いいのか? さっきも俺が貰っちゃったけど……」


「いいよいいよ。僕は次の天峰さんの物を貰うから」


「お! そうか、なら遠慮なく……いただきます!」


「え! 何で……。って駄目だ。やめろー!」


 岡野先輩の声も届かず、信三は先輩の毒入り確実な料理を口に入れた。


「……う、ぎゃああぁぁあーーー!!」


 椅子から転げ落ちて床をゴロゴロと転がり回っている。何というか見ているだけで本当に食べずに良かったと思う。その後信三は気絶でもしたように急に動かなくなった。それにしても一体どんな毒をもったのだろう? そもそも毒だったのか、それすら不明だ。


「ちっ! 竹光が食べてしまったが、まあ次は確実に成功させてやる……」


 岡野先輩が信三を見ながら、物騒なことを言っている。それに、僕が手を出すほどの事じゃないだろう。


「岡野さん。何ですか? 毒とは……」


「……え?」


 岡野先輩の背後には原野先生が立っていた。言い訳しようと岡野先輩が口を開こうとした瞬間、先生は岡野先輩の口を塞いだ。


「岡野さん、何も言わなくても大丈夫ですよ。だって、先ほど岡野さんから使用した毒を回収させてもらいました」


「……っ!?」


 岡野先輩は自らの身体中を触り、ポケットの中にも手を入れた。どうやら毒は自らのポケットにしまっていたようだ。


「い、一体どうやって……」


 不思議そうに思った先輩は先生に聞く。僕もどうやったのか気になるため聞くことにした。


「そんなの簡単ですよ。だって…………調理台に置きっぱなし何ですから」


「嘘だ! あ、ありえない!」


 先生の腕を振り払い、正面を向く。


「ひとまず、岡野さんは和馬様を毒殺しようとしたという証言で問題ないですね?」


 先生が毒を懐にしまい、何故か先輩に対して構える。まるで取り押さえますよと言っているようだ。だがそこに割り込んできた人物によって大騒ぎにはならなそうだ。


「まあまあ、原野先生。岡野さんだって何か事情があるんじゃないの?」


 美羽姉だ。どうやらこの事態を収めてくれるみたいだ。


「み、美羽様! そんな事は問題ではないのです! 和馬様が毒殺されそうになっているのですよ! ここで取り押さえないでどうするのですか!」


「カズ君、もう気にしないよね?」


「うん。僕は無事だから、もう気にしないよ美羽姉」


 僕に話を振ってきた美羽姉。確かに僕はそんな事は特に気にしない。一応は生きてることだし、それに信三の尊い犠牲によってーー。


「ぐはっ! ……ぺっぺ。何だか一瞬、三途の川が見えた気がするが……」


「信三! 生きてたか!」


「おう、和馬。何だかスゲー頭が痛いが……休めば問題ねーよ」


「あら、折角、地球の汚物除去が出来たのに何で蘇ってくるの? ねえ信三」


「あ、姉御それは無いでしょ……」


 何とか信三も生きていたので岡野先輩は観察処分という事で先生が見てくれる事となった。まあ殺人未遂だから一応は監視下に置くそうだ。


 *****


 さて、そんなさなかに僕は皆に岡野先輩の事を任せて、天峰さんの所に行き、料理の審査をした。流石と言っていいほどに美味しかった。いや、本当に美羽姉と同じ位と言っておこう。本当に一番まともで良かった。

 最終的な結果は生徒会室で後日という事になったため、僕達七人は調理室を片付け、帰ることとなった。









 さあ、ついに料理バトルも決着になりました。もう少し長めにしようと思いましたが、ダラダラ続けるのも良くないのでざっくり終わらせました(笑)

 次回は多分、テスト勉強の回になるかと思います。読者様お楽しみに。

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