第十八話 テスト勉強
そんなこんなで千景が編入してから、あっという間に一ヶ月以上の月日が経った。僕は騒がしくも充実した生活を無事に送っていた。だが、そんなある日……僕は椅子に縛り付けられていた。
周りには姉の美羽姉、幼馴染の千景、護衛の原野先生、最近見かけなかった岡野先輩、副会長の天峰さん。その五人が僕を取り囲むようにして立っていた。
「それでは、勝負内容を発表しまーす」
端っこの方では信三が紙を持って司会の様な役割をしていた。
「お題はーー」
信三が発表する刹那の時間。何がどうなっているのか分からないが、僕が縛り付けられる丁度三時間前の事を思い出していたーー。
*****
美羽姉と学園で昼食を一緒に摂っていると、千景が僕の隣に腰を下ろした。
「和馬。一緒にご飯食べよ?」
「あぁ、僕は別に構わないよ」
「ありがとっ!」
最近、千景も僕と美羽姉の食事に参加するようになり、とても嬉しいが、最初美羽姉は物凄く反対していた。
それもそうだ。嫌いな人と一緒にご飯を食べたいと思うか、僕は思わない。
「和馬君、昼食ですか? 私も一緒していいかな?」
「天峰さん。どうぞどうぞ、遠慮なんてしないでください」
「そう? なら遠慮なく……」
そうそう。天峰さんも最近、千景と同じように僕達の食事に参加するようになった。まあ、ほとんどは美羽姉に生徒会の仕事のことで話をするんだけどね。
「お! 和馬、俺もそこの席いいか?」
「ん? 信三か。僕は構わないけど……美羽姉いいかな?」
「モキュモキュ……。ん? まあ、ゴミ屑とはいえカズ君の友達だしね。私の隣やカズ君の隣、それから半径一キロ外……それ以外だったらいいよ」
「あ、姉御……最近の扱いが酷くね……」
「まあまあ、信三。美羽姉はいいって言ってるんだから座りなよ」
「うううぅぅ~。和馬は優しいな……」
「全く、泣くなって。おかず一品あげるから……」
信三はそのまま僕の右斜め前の席に座った。今座っている配置は左に美羽姉、右に千景、美羽姉の正面に天峰さん、千景の正面に信三となっている。
皆仲が凄く良い訳ではないが、自然とこのグループで食べていることが多くなった。
食事を進めるが、美羽姉はいつもと変わらずに僕にベタベタとくっついている。
「カズ君カズ君♪ ほら、この漬物美味しいよ? はい! あーん」
「いいよ、こっちも漬物あるんだから……」
「えっ……お姉ちゃんの漬物は……嫌い……」
あからさまにガッカリするもんだから、こっちは物凄く困る。美羽姉にはいつでも笑顔でいてほしいからそんな顔をしないでほしい。仕方なく、口を開けて漬物を頬張る。
「うん、美味しい美味しい。美羽姉が美味しいと思う食べ物は本当に美味しいね」
「でしょ? じゃあじゃあこれは?」
差し出してくるが、天峰さんが代わりに横取りして食べた。
「モキュモキュ……。こらっ! 和馬君が困ってるでしょ? それに私との話が終わってないでしょ」
「ぶー! 杏ちゃんはいつもそうだよね~。私の事よりカズ君の事ばっかり気にかけて……まさか!? 狙ってないでしょうね? あ、あげないからね? 私のだもん」
ご飯に気をとられていて、話の内容が分からなかった。美羽姉が急に僕を胸に抱き寄せる。豊満な胸に顔が埋もれた。……柔らかいし、落ち着く。とても心地がいい。
「なっ!? そんな訳ないじゃない!」
いつもより声を上げた天峰さん。その様子を気になったのか千景がこちらを伺うと、僕が美羽姉に抱きしめられている。
「ちょ!? 和馬に何やってんの! 美羽さん。離してって、ほら」
今度は右に居た千景が抱き寄せる。豊満ではないが、女の子としては中々いい形の胸をしている。大きさより質かな。……ってこれじゃ変態みたいじゃないか! 平常心平常心。
僕は千景にそろそろ離してほしくので、腕で軽く叩く。
「ん? ……あっ! ごめんね? 和馬、大丈夫?」
「う、うん。気持ちがよかっ……じゃなくて、大丈夫」
二人の胸に顔を埋めたせいで少し顔が熱くなってしまった。落ち着かなくては……。
深く深呼吸していると、信三が何だか、羨ましそうにこっちを見ている。
「ん? どうした? 信三。僕の顔に何かついてるか?」
「……いや、これが格差社会なんだなって思ったら悲しくって……」
「お前は何言ってんだ?」
いつも……通りとは言いたくないが、こんな感じで毎回の食事は進んでいく。
そろそろ終わりに差し掛かった頃、美羽姉がふと、口にした。
「……そういえば、そろそろ中間試験だね……」
「「……っ!!」」
その時、女二人が目を光らせた。僕はその事に気づかず、思い出したかのような返事をする。
「あぁ、そうか。そういえばもうすぐだったね……中間テスト」
僕も美羽姉に言われるまでは忘れていた。そろそろテスト勉強でもするかな。
成績はそこまで悪くはないが、流石に勉強をしないと苦手科目は赤点行きだ。僕が勉強しようと思ったのを察知したかのか美羽姉が話を続けた。
「だから、カズ君の勉強、お姉ちゃんが見てーー」
「「そんな事させない! (させません!)」」
同時に声を上げたのは、千景と天峰さんの二人だった。すると、美羽姉が千景や天峰さんにニヤニヤしながら言う。
「あれあれ? 二人とも私がカズ君に勉強を教えてあげるのに何か問題でもあるの~?」
「いや、そうじゃない……けど、美羽さん絶対和馬に何かするでしょ?」
千景の気持ちも分かる。確かに美羽姉の事だから、勉強から逸れて別の事をしそうだ。
「それに……」
「それに? 何?」
千景が途中で言いよどむ。話しにくいことなのかな? 千景が無言になっていると天峰さんが助け船を出してくれた。
「生徒会長は色々と忙しいし、そんなことしている暇はあるのって事……でしょ? 赤崎さん」
「そ、そう。そういう事なの!」
「ふーん、そう……。でも、私はそもそもテストなんてしなくていいから、カズ君の勉強を見てあげる時間は余るほどあるから心配しなくてもいいよ」
確かに美羽姉の言う通りだ。美羽姉はすでに卒業できるだけの単位を持っている。だから、僕の勉強をマンツーマンで見てもらっても何にも問題は無い。
だから、毎日僕のクラスに入り浸っている訳だ。僕の片腕を引き寄せ、抱き着く。
「ーーという事でカズ君の勉強は私が見るから、二人は邪魔しないでね?」
「でも美羽さんだと、違う学年の和馬の勉強は教えずらいんじゃ……」
「そこも問題ないから。カズ君に教えられない勉強はない! そう、夜の個人レッスンさえもね!」
「……くっ! なんて羨ま……じゃなくて、ずるい……」
そんな話をスルーして、すかさず天峰さんが意見を言う。
「それなら、私が和馬君の勉強を見ましょう。私なら生徒会長みたいな事はしないし、赤崎さんも安心でしょ?」
だが、美羽姉は即否定する。
「駄目、杏ちゃんは私の仕事を代わりにやってもらうから」
「ですが、生徒会長は理事長としての仕事もありますし……」
天峰さんはあんまり言い争いが苦手なようだ。それに、このままでは何だか面倒臭くなりそうだから、僕から断るとするかな。
「あのー、美羽姉。僕一人で集中して勉強したいから、また次回って事じゃ駄目かな?」
「「「カズ君(和馬)(和馬君)は黙ってて!!」」」
「……はっ! はい……」
三人の声に威圧され、退いてしまった。その後、話し合いが続き、昼休みの時間も過ぎても話し合いが終わらなかった。
美羽姉と千景、天峰さんは生徒会室に行くようで、僕には関係ないので授業に行こうとすると美羽姉に呼び止められた。
「カズ君? どこに行こうとしているの?」
「どこって、教室に戻るんだけど……」
「駄目だよ、授業なんて後回し♪……原野先生お願いします」
「はい、了解しました」
「……って何で先生がここにいるの!?」
「何でと言われましても、護衛ですから……」
「そういえばそうでしたね……」
最近先生の姿が見えなかったので、すっかり頭の隅になっていて忘れていた。
「それで私は何をすればいいのですか? さっき来たばかりなので、正直何の話か分かりません」
先生は美羽姉に大体の事情を聞く。僕は美羽姉が余計な事を言っていないか心配になる。
「……なるほど、事情は大方理解しました。それではーー」
懐からロープを取り出し、僕の背後に回った。この後の事は僕でも予想が出来る。
「和馬様、失礼いたします」
身体をロープで拘束。先生に担がれ食堂を後にした。
大変ながらくお待たせしました。第十八話の投稿となります。体調不良やスランプ気味だったのですが、何とか執筆できました。
そして何と言っても、登録者数がまた増えており、読者様には感謝感謝でございます。これからも応援よろしくです。
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