第十七話 賭け事
幼馴染の事は美羽姉が何とかしてくれた。こちらに一週間早く来てしまったのだから、早く編入すればいいとのことで、そのまま編入。僕が頼んだらあっさり許可してくれた。
だが、それだけが理由ではないらしい。ただ単に嫌いな相手を自分の家に一人で置いておくのが美羽姉は嫌だったのだ。
学園に着くと、千景は生徒会室へ手続きをするために向かった。美羽姉も理事長兼生徒会長として手続きをするため一緒に向かう……と思ったのだが、僕から離れようとしない。
「美羽姉、早く行ってあげなよ。そうしないと千景が困るでしょ?」
「……んん~いーやー♪ カズ君から離れたくないの。それに私の仕事は杏ちゃんがやってくれるからいいのー」
美羽姉はどうやら千景と一緒に行きたくないようだった。僕は美羽姉が確実に離れるであろう方法をとることにした。まず、腕にしがみついている美羽姉に顔を近づける。
「えっ!? カズ君どうしたの? こ、こんなところで……。恥ずかしいよ。でも、カズ君が望むなら……ん~」
何故か唇を突き出してくる美羽姉を無視して、そのまま耳元に口を持っていって一声。
「……言う事聞いたら、良いことしてあげるよ?」
「はいっ! 今すぐやることやってくるね!」
途端に僕から離れて千景を追って学園内に入っていった。まあ、僕が何かしてあげるっていえば、大抵は何とかなる。さて、僕は教室に向かおうかな。
教室に着くと、どこから漏れたのか信三が千景の編入の話をしていた。僕は信三に挨拶する。
「……おはー」
「ん? おお、来たか。チカの事はもう知ってんだろ? うちのクラスに編入するか、しないか、今男子で賭けしてるんだよ。どうだ? やるか?」
信三の誘いを断り、席に着く。だが、賭けに関しては僕には予想がつく。あの美羽姉が決めるとだと思うから、多分、僕のクラスには確実に入ってこない。なぜなら、毎時間僕にべったりしたい美羽姉が嫌いな奴と同じクラスにするはずがないからだ。
信三の方を眺めていたら、クラスの輪から離れ、ボーっとしている僕の方に不敵な笑みをこぼしながら歩いてやってきた。
「……なんだよ信三」
僕は元々賭け事は苦手だからやりたくないのだが、信三が耳を貸せと指で指示してきた。嫌々耳を貸すと、とんでもないことを言ってきた。
「……和馬和馬。実は俺、姉御からこのクラスに編入してくるって聞いて、分かってんだ。男子共には隣のクラスって嘘で騙してるから、賭けるときはこのクラスに賭ければ勝てる!」
「…………はぁ?」
「だから、この賭けは確実に勝てるんだよ。お前も参加しろよ。分け前は半々でいいからさ」
こいつはこの後の出来事が想像できないのか。全くいつもながら呆れてくる。
「……それでもやめとく。後々痛い目に遭うのはごめんだから」
何故か、それはこれから起こる出来事を見ていればわかるだろう。信三がクラスの男子共から掛け金を預かっていく。
「俺は、一年一組に千円~!!」
「じゃあ、俺は……嘘かもしんないから、このクラスに二千円!」
「ハイハイ。まいどあり~。結果は原野先生が来た時にわかるから、それまで賭けは有効だから、どんどん賭けてくれ」
「なら、俺はあえて、隣のクラスに一万円!!!」
「俺も俺も!」
何だか大量の金が動いてんな。多分、信三が僕が来る前に自分と和馬は千景の『幼馴染』ってことをクラスに話し、更に生徒会長である美羽姉にでも聞いたんだろうな。
そんなクラスの皆は信三の言っていたクラスに編入すると信じる。それも隣のクラスだと……。
そして生徒会長の言った事だから絶対だ。そして一人でも賭ける奴がいれば皆もそっちにお金を出すんだろうな。
「はいはい、席に着いてください」
原野先生が来たようだ。さてさて、男子は期待している奴がいるが、無理だろうな。
「それでは手短に。隣のクラスに編入生が来ましたので仲良くしてあげてください」
すると、男子生徒が定番とも言える台詞を先生に質問した。
「先生! 男子ですか? それとも女子ですか?」
「編入生は……女生徒ですよ」
その瞬間、クラスが歓喜をあげた。それは全て信三に向けられるものだった。
「「「信三! バンザーイ! バンザーイ!」」」
「なっ! 何でだ!? 俺はちゃんと姉御から……」
「「「言い訳無用! 勝ったんだから金出せや!!」」」
予想通り。美羽姉の事だから大体予想可能。信三の作戦はこうだった。
クラスの奴らに隣のクラスに編入すると、真実味のある話をする。だか、信三は美羽姉に自分達のクラスに編入させると聞いていた。
それを利用し、クラスから金を騙し取ろうとしていたが、実際に騙されていたのは信三本人。美羽姉は全く違う隣のクラスに編入させた。
つまり、信三はクラスの連中から金を騙し取ろうとしていたが、逆に美羽姉の策略でクラス男子に金を払わないといけなくなったわけだ(……ややこしい)。
「はいはい。竹光君から金を搾り取るのは後回しにして、先にホームルームを終わりするから」
その時、クラスの男子一人が手を挙げた。
「はい、何ですか?」
「先生。竹光の金……全て取ってもよろしいですか?」
「……生徒会長が仰っていたので、許可します」
「「「よっしゃー!」」」
信三よ、自業自得だ。こっちを向いても助けてはやらん。
結局、信三は騙した罰として男子から持ち金……自分の賭けていた金は全て男子共に持っていかれた。
今回は読者様の意見を参考に早めに投稿してみました。少しずつ慣れていけるようにしたいですね。
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