第十五話 幼馴染登場!
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和馬は不思議でならなかった。何でいきなり凸ピンをしてきたのか。全く女の子はよくわからん。
「カズ君カズ君。女の子にあんなこと言われてどう思った? 思った?」
「和馬君。あんまり気にしないでくださいね。人は昔のことを忘れやすいですので……。それに、昔と比べて大人びたからわからないだけですよね?」
さっきから美羽姉と天峰さんが横から色々言ってくるが、それを無視する。まあ、確かに写真と比べて大人びたことは認める。それよりもーー。
「……和馬のバーカバーカ。何で覚えてないの。折角戻ってきたのに……和馬はあたしのことを何とも思ってなかったの……告白もまだなのに」
ぶつぶつと何か言っているが、よく聞き取れない。仕方がない、フォローでもしておくか。
「……あの、赤崎さん」
僕が声をかけると、こっちを振り向いてくれた。だが、まだ機嫌が悪いみたいだ。僕が言いよどんでいると、そっちから話を振ってくれた。
「……千景」
「えっ!?」
「昔の呼び方は恥ずかしいから、千景って名前で呼んで……。それに幼馴染なんだから敬語とかは無しにしてよ」
「お、おう……」
何とか機嫌はよくはなってきたみたい。しかし、僕のサイドにいる二人はご機嫌斜めなようで……。
「カズ君、お姉ちゃんより幼馴染を優先するんだね……。もうっ! カズ君の今晩のご飯は作ってあげないんだからね! ぷいっ!」
「和馬君は、先輩より幼馴染を選ぶんですね……ショックです……」
「何!? さっきから二人ともどうしちゃったの? 僕、何か怒らせるようなことした?」
「……はぁー、和馬は相変わらず年上から人気だけど、たまに鈍いよね……」
「えっ!? 鈍いって何が? 教えてよ千景」
「自分で考えたら?」
そんなこんなで何でか来週くらいに編入してくる赤崎千景。別称、幼馴染が何故かここにいます。
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その後、放課後までは千景は生徒会室で待つことになり、見張り役には原野先生にお願いした。誰かがそばにいないと、何かやらかしそうだからと美羽姉が言ったからだ。
そもそも、千景はまだ編入すらしていないので実質的に不法侵入という事になっている。まあ美羽姉が学園の理事長だから、問題なんてもみ消してしまうんだろうね。……そう考えると怖くて鳥肌が……。
昼食はいつも通り食堂で済ませるが、周りには美羽姉、千景、天峰さん、原野先生……。
「ん? ……って何で千景がここにいるの!? 放課後まで生徒会室で待ってるんじゃなかったの?」
「あぁ、あたしも大人しくそうしようかと思ったけど、和馬に逢いたくて朝ご飯抜いて来ちゃって、お腹すいたの」
「……という事で見張っている私が折角だから食堂で食べてみてはと思い、連れてきました。もしも何かあった場合は私の責任にしてくれてもかまいませんので……よろしいですか? 美羽様」
「うん。別にいいよ♪ 見張り任せちゃったんだし、好きにして」
「ありがとうございます。美羽様」
「……」
その光景を見ていた千景が口を開けて、呆けている。そしてパッと瞬きを一回すると、僕の耳元に顔を近づけ、質問してきた。
「……ねえねえ和馬」
「はいはい、何でしょう?」
「……何で先生なのに生徒に対してあんなにペコペコしてるの? 美羽さんが理事長だからってあそこまではしないでしょ?」
ちなみに千景は美羽姉の事を『美羽さん』と呼ぶことにしたそうだ。それより、色々説明が面倒だからな。適当に誤魔化そう。
「あーそのー何ていうか、まあ気にしないで。あれが普通だから」
「ふーん、そうなんだ……」
千景はそう言いながら、食事を再開したーー。
「……って何で納得してるの!? あの説明で!」
「だって、美羽さんの事でしょ? 昔からあんな人だから考えるだけで無駄だし……。それに和馬が折角丁寧に教えてくれたから、あたしはその説明で納得しとく」
「いやいや、全然っ丁寧じゃないし! 大丈夫? 病院行っとく?」
「……怒るよ?」
「すみません……」
そんな事を話している間に食事を済ませてしまった天峰さんが席を立った。そういえば黙々と食べてたな。
「それでは皆さん、私は生徒会室の仕事が残っていますので、失礼させていただきます。生徒会長、後ほど書類仕事を机に置いておきますのでやっておいてくださいね」
「えぇー! めんどくさいな~」
「……もう仕事、手伝いませんよ」
「よーし! 仕事頑張るぞー! おー!」
傍から見るとどっちが生徒会長っぽいって聞かれたら、絶対、天峰さんの方だと感じる。食堂から出て行った後も僕達は食事を進める。
騒がしくも楽しく食事を済ませ、僕は授業に、千景と先生は生徒会室に向かった。そして毎度の事だが、授業を美羽姉と一緒に受け、放課後となった。
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美羽姉はこの時、昔の事を思い出していた。そう、あの時の事をーー。
チカちゃんの引っ越しが決まってカズ君とチカちゃんが最後に逢うことになった日。私はそのことをカズ君に取り付けていた盗聴器によって知ることが出来た。そして彼女があの日にカズ君に告白しようとしていることも……。
だが、それが何時にどこでするのかはわからなかった。なので、チカちゃんの連絡がいくであろう両親を注意深く探っていたら、案の定チカちゃんが私の両親に電話をしてきたのだった。そして時間と場所を入手。私は彼女がカズ君に告白しないように邪魔する計画を立てた。
そしてその日。私はそのことを知らないふりをしてカズ君に腕時計を渡し、買い物を頼んだ。基本的には私のお願いなら聞いてくれるカズ君。勿論、腕時計の時間は三十分位ばれないようにずらしておいた。これなら、気づいても間に合わない。チカちゃんの告白を阻止できる。
カズ君をおつかいに行かせてから、数十分。家にチャイムが響き渡った。私には予想できた。玄関を開くと、そこにはチカちゃんがいた。カズ君の事を聞いてくるが、私は知らないふりをした。そんな事をしていたら、チカちゃんはどこかに行ってしまった。ーー計画通り。
すれ違いになったのかその後、カズ君が帰ってきた。時間を聞いてくるので教えると、荷物を私に渡して駆けていった。さてさて、間に合うのかな……。
結局、間に合ったみたいだけど、盗聴器で聴いたところ告白はされてないから安心した。私は絶対に弟に彼女は作らせない。作るなら姉である私を愛してほしい。
多分その頃だろう。私が他の人に邪魔されず、イチャイチャしたい空間が欲しいと思ったのは。そして、カズ君と四六時中一緒に居られる場所を作るなら、学園だと思った。その夢は叶いつつもあるが、確実な実現まではまだまだ時間がかかりそう。
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今となれば懐かしい昔のことを思い出しながら、カズ君と帰る準備をしていた。
だが、杏ちゃんに言われていた書類を忘れていた。仕方がないのでカズ君に言っておこうかな。私は教室を出ようとするカズ君に話すのだった。
さてさて、幼馴染も本格的に登場しましたね。現在私が考えているキャラクターはこれで全てです。でも、もしかしたらこれから新キャラも出るかもしれません。和馬が時間に遅れたのはこういった理由だったのか……。美羽姉もこの時から色々考えていたんだな~。それでは次回をお楽しみに。
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