第十三話 編入生その二
あらすじ……ではありません。
今回からあらすじを書くのを止めようと思います。他の作品を見ると、あらすじ無しでそのまま続きを投稿している人が多いので私もそうします。では、続きからです。
その後帰るのが遅くなるが、美羽姉に編入生の事を教えてもらった。やっぱり知っている人みたいで僕に教えるのは嫌々だったみたい。彼女の名前は赤崎千景……というか僕も知っている人だった。しかし、見覚えのある顔だと思ったけど、やっぱり僕の幼馴染の子だったか。僕は美羽姉に何で教えたくなかったのか聞くことにした。すると、一言、美羽姉は言った。
「……嫌いだからに決まってるじゃない。あの子は……敵よ、敵」
何で敵なのかはわからないが、嫌いな相手らしい。僕としては会うのが楽しみなんだが、それを言うとまた美羽姉に何をされるか恐ろしくて仕方がない。そんなこんなで編入生として僕や美羽姉、信三の幼馴染の千景が学園に来るという。僕はあんまり覚えていない為どんな子なのか楽しみでもあった。
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そして現在、いつどこで何されるか不安との事でその日から常に僕の腕にしがみついているわけだが、この事もあり、僕のシスコン疑惑が学園全体にさらに深まった。廊下を歩くたびに横から冷たい視線を感じたり、学園の美羽様親衛隊通称『ML』に美羽姉が御手洗いに行っている間に絞められたり、先生達からは何故か悩みがあるのかと相談室に呼ばれたりと何だか僕の日常が段々壊れていってる。
そして今は美羽姉と移動教室の化学室に移動中なわけだが、毎日腕にしがみつかれては流石に邪魔。美羽姉に離れるように頼むことに。
「美羽姉、何にも心配いらないからさ、離れてくれない?」
優しく言ったつもりだが、美羽姉には離れるという事が酷く傷ついたみたいで、手で顔を覆い、座り込んでしまった。
「……酷いよ、カズ君。お姉ちゃんはカズ君のそばにいちゃいけないの~ぐすん」
「いや、別にそんな事は無いけどさ、時と場所を弁えてもらえれば……はっ!」
その時言うのを止めるのが遅かったと後悔した。何故そう思ったのか、それは僕がさっき「場所を弁えれば」と言わせることが美羽姉の目的。つまり、僕が美羽姉をこの腕から離すことが不可能になったという事だ。場所を弁えれば問題ないと言っているようなものだ。僕は美羽姉に訂正を求める。
「ごめん美羽姉。さっきのは学園ではもう少し自重してって事、だから、場所がよければ何してもいいって事じゃないからね? わかってる?」
「大丈夫だよ、お姉ちゃんだって四六時中べったりしたいのは本当だけど、カズ君を前にすると自重するのは難しいかな? だって本能でこうしたくなっちゃうんだから仕方ないよね?」
また腕にしがみつき、くっつく力を強くして余計に離れなくなった。もう少し詳しく話すかな。
「美羽姉、僕がトイレや自分の部屋、風呂に入ってる時、それと僕が離れてって言ったら離れる事。その時はくっついてこないでわかった? ドゥー ユー アンダー スタァン?」
「……うーーん、うーーん。……苦渋の決断だけど、ここは言う通りにする……ちっ」
「美羽姉今、舌打ちしただろ! 聞こえてるからな!」
「わかったわかった。カズ君の言う通りにするから」
本当かどうかはこれからわかる。何故なら早速美羽姉に言うからだ。僕は美羽姉に向かっていい放つ。
「なら、早速……。一人になりたいから離れてくれない?」
苦虫を噛み潰したような顔をする美羽姉。さらによく見ると、血の涙も流しそうで怖い。そんな美羽姉が離れてくれるか待つが一向に距離を取ろうとしない。逆に腕にしがみつき、胸をくっつける。そのまま上目遣いをしてくる。
「……このままじゃ、ダメ?」
そんなに目をうるうるさせてこないで断わりにくくなるから止めてほしい。だが、ここはグッと堪えて美羽姉を無理やり離す。
「そんな事言っても駄目……。さっき約束しただろ? 美羽姉は弟との約束を蔑ろにするつもりなの? 美羽姉に限ってそんな事は無いよね? だって美羽姉だもんね? そうでしょ?」
「ううぅ……」
「美羽姉?」
「……わかったよ、少しだけ……だよ」
美羽姉からようやく解放される僕の腕。胸の圧迫感もあって、血が行き渡ってない。そのせいで痺れているがじきに戻るだろう。一歩二歩と美羽姉から離れる。少し離れるだけなのに死にそうな声を出す我が姉。
「それじゃ、授業に行くから。お昼まで我慢出来たら一緒にご飯食べてあげるから」
美羽姉の好きそうな事を言って授業に向かう。こうすれば美羽姉だろうと邪魔はしてこないはず。安心して授業を受けられる。だが、そう思っていたのは僕だけだった。
*****
化学室に着くと、決まった席に着席し、化学実験を各班で行う。いつも通りに教科書を見つつ、丁寧に実験を進めていく。だが、僕の今の頭の中には編入してくる幼馴染の事を考えていた。
「……(どんな感じになってるのかな? 写真で姿は見たから、性格かな? 三年以上経っているからな。性格とか変わってるかも……)」
その事を考えすぎて、実験の事はあまり記憶に無い。ついには実験の終わりまでぼーっとしていたみたいだ。それにいつの間にか実験器具などが片付けられている。班の人達に片付けの事を謝り、教室から出るが、いつもながらよくもまあ、ここまでやれるなと感心してしまう。そう、目の前に美羽姉が廊下に豪華な椅子と机でお茶をしているからだ。僕の存在に気が付くと、いつもの笑顔を向けてくる。
「カズ君。授業はもう終わったの?」
お茶を飲みつつ、聞いてくる美羽姉だが、いつからそこにいたのだろう?
「美羽姉、いつからお茶なんてしてたの?」
気になる疑問を今すぐに解決したくなり、美羽姉の言葉を無視して聞く。
「いつからも何も……授業開始からずーっと、だよ♪」
「……そう、か。僕はお昼まで我慢してくれたらご飯一緒に食べようと言ったと思ったんだけどなー」
「ん? お昼? 一緒? ……あ」
両手を頭に当てて必死に考えた結果、ようやく理解してくれたようだ。つまり、一緒にお昼ご飯を食べる条件としては、授業が終わるまで近づかない。それと授業が終わったらという事。美羽姉はこれをクリアしていない。何故か?
まず前提として、僕の授業は終わってないのだ。ただ単に実験が終わったため自分達のクラスに戻るところだという事。実際はチャイムも鳴っていないのだ。美羽姉はこれに気が付かず、僕にお昼ではないのに近づいた。要するに失格。
それに気づいた美羽姉は誰からもわかるくらい肩を下げる。まあ、僕としてはたまには美羽姉とじゃなくて、信三とかクラスの連中とお昼食べたいしな。それに毎度のことのようだが、美羽姉と一緒のお昼は何かと危ない。
親衛隊の人達が僕と美羽姉の周囲を囲むから、落ち着いて食事も出来ない。だから、ちょうどいい。美羽姉は天峰副会長とお昼を一緒にしてもらおう。
「残念でした美羽姉。今日は副会長と食べてね」
「えー! やだよー」
「……へぇー。私と食べるのが嫌なのか、生徒会長」
「えっ!?」
美羽姉の後ろには天峰副会長が立っていた。
「何で杏ちゃんがいるの?」
「ん? 何でいるかって? それは連絡もらったからよ……和馬君から」
「裏切り者~!!」
美羽姉に首を捕まれ、絞められそうになるが、天峰副会長が引き離してくれた。
「はぁーはぁー、た、助かった。ありがとうございます天峰副会長」
「もうそんな堅苦しい呼び方はやめて、好きなように呼んでください」
「あ、はい。それなら……そうですね、……天峰さんでいいですか?」
「出来れば、杏と呼び捨てで呼んで頂ければ嬉しいのですが……」
そんなに照れながら、嬉しそうに言わないでください。断ったときの天峰副会長の残念顔が思い浮かんじゃうから、断りにくくなる。
「……あの、その、では、妥協案で……杏さんで許してください」
「うーん。和馬君がそう言うなら仕方ないですね、それで許しましょう」
何とか妥協案で許してくれた。僕でも目上の人でその上女性。そんな女性に呼び捨てなんて……。知り合ってから日も経っていないのに。
「それでは、早速呼んでみてもらえますか?」
男として女性の下の名前を口に出して呼ぶのは少し恥ずかしいんだけどな。仕方ない、天峰副会長には色々お世話になってるし、するか。
「……で、では、恥ずかしいですけど、お言葉に甘えて……あ、あんzーー」
「呼ばせないわよ! カズ君の口から他の女の名前なんて! それも親友の名前なんて! お姉ちゃん、聞きたくありません!」
突然のことでわからなかったが、美羽姉が僕の口を手で塞いだようだ。美羽姉も急に塞ぐもんだから、鼻まで塞いで、現在僕は呼吸が出来ない状態に。
「うー!! うっ! う~!」
「喋らせないよ、カズ君。カズ君が止めてくれるまで手は離さない!」
「うー! ……うっ、……」
あぁ、意識が遠退く。目の前にいる杏さんが止めようとするが、全く手は離れない。貧血みたいに頭がクラクラしてきた。毎度毎度よく気絶するな僕。諦めかけたその時。横から美羽姉の手を振り払い、僕を抱き締め、助けてくれた女の子。
「何やってんのよ! あたしの大好きな和馬が死んじゃうじゃない!」
薄れゆく意識。そんな中聴こえた声。僕は知らない声なのにどこか懐かしい気がした。
今回も読んでいただきありがとうございます。最後に幼馴染みの登場でしたね。次回から本格的に登場させようと思います。さてさて、新メンバーも登場でこれからどうなるのか、楽しみですね。それではまた一週間後くらいにお会いしましょう。さようなら~。
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