第十二話 編入生その一
あらすじ
今日の晩御飯を作っている美羽姉。そんな最中に学園での事を思い出す。
美羽姉や和馬の護衛である原野先生が今夜の護衛を休みたいと言ってきた。それを許可する美羽姉。だが、和馬とイチャイチャしたい美羽姉にとって護衛は万が一に暴走した時に止めてくれる役割でもある為内心残念に思っていた。そのまま先生と世間話をしながら、今後の事を少し話し帰ることに。結局今夜は和馬の部屋を監視カメラで見ながら、日記をつけることになった。
それから一週間経ちだいぶ学園にも慣れてきたが、一向に美羽姉が離れてくれる気配がしない。それどころか周りを警戒しすぎというか、威嚇してるというか何だかキョロキョロするのが多くなった。理由を聞いても「カズ君には関係ないから気にしないで」と言われるだけで教えてもらえない。多分、あの日からなんだろうなと感じた僕はあの時の事を思い出していた。
*****
一週間前、つまり入学してから二日後の放課後、前日に天峰副会長が謝罪がしたいので生徒会室に来るように言われていたので僕は向かうことにした。そして、この時もいつも通り腕に引っ付いて離れない美羽姉。しょうがないからこのまま生徒会室に入ることにした。ノックをして入室する。
「……失礼します。一年五組の岩永和馬です。天峰副会長はいますか?」
辺りを見渡し、居るかどうかを確認するが、居ないのか返事がない。一歩踏み出してもう一度呼んでみた。
「すみまーー!!」
言いかけた時、生徒会室の奥の方で大きな物音が僕の鼓膜を震わせる。何かあったのではないかと慌てて美羽姉と一緒に様子を見に行くことに。奥の部屋の扉を押して入り、中を覗く。部屋には書類や書籍類が多く本棚に収納されており、電気がついていない為はっきりと見えている訳ではないが、さらに奥の方に顔を向けると、大量の本が本棚から落下していた。一応、声をかけてみる。
「あのー、誰かいませんかー?」
返事は横から返ってきた。それも聞き覚えのある声。
「はーーい、カズ君のお姉ちゃんはここにいますよ~♪」
「いや、美羽姉の事呼んでないから、それといつまで腕にくっついているの? 流石に重い……」
「重い!? 重い、……そう、重いんだ……私」
腕から手を放す美羽姉。それを見て言い過ぎたと考えたが、そんな事もなかった。
「……そうでしょ? そうでしょ? カズ君ならわかってくれると思ってたよ。最近胸……おっぱいが大きくなったんだよね~ほらほら♪」
胸をいい直したみたいだが男子はそんな言葉で揺らがないーー視線は向けるが。美羽姉は自らの手で胸を鷲掴みし、こちらに押し付けてくる。ムニュムニュと柔らかく形も丁度良い。視線がずっと向いてしまいそうになるが、今は無視。
「あー、ソウダネスゴイネ。これでいい?」
「扱い酷いよ~! カズ君の鬼畜、色魔、ドS、ごにょごにょ……」
その後も何かを口ずさんでいるが、無視無視。話が終わったタイミングで声が聞こえた。
「……だ…れか、いません…か」
小さかったが確かに聞こえた。ブツブツ言ってる美羽姉をほっといて、部屋の奥に行く。
「天峰副会長! 大丈夫ですか?」
本の山の中から手だけが見えていたので引っ張り出して、汚れてしまった頭を軽く払ってあげる。身長差があるものの今は天峰副会長が床に腰を下ろしている為か視線が高くなったみたいだ。何だか新鮮だな。ひとまず部屋から出して、僕が寝たことのあるソファーの上に座らせる。天峰副会長も疲れたようでため息を吐いた。
「副会長、何があったんですか? 本の下敷きになるなんて」
聞いてみるが、何だか様子が可笑しい。怒っているようにも見えるが……。
「それより、生徒会長は?」
いつもと違う声音で天峰副会長は美羽姉の事を僕に聞く。怖い怖い、天峰副会長怖すぎですよ。そんな僕の思いも伝わらず、もう一度僕に質問する。
「ど・こ?」
「あ、あっちでさっきからブツブツ言ってるのがそうですよ」
音もたてずにソファーから立ち上がる天峰副会長。まるで亡霊のように足音が無いから余計に怖い。そのまま美羽姉の背後までスーッと歩いて行くが、未だにブツブツ言ってる美羽姉は全く気づかない。
「……カズ君がそんなんだとお姉ちゃん困っちゃうよ~♪ もうお姉ちゃん、言葉責めのおかげで新しい世界に目覚めちゃそう♪ ……はっ! 実はお姉ちゃんドMだったのかも……。まさに愛称バッチリじゃん! はぁ~、カズ君。もっと罵ってくれないかな~♪」
「……生徒会長」
「ひっ! ……って何だ杏ちゃんじゃない。どしたの?」
美羽姉、あの反応は完璧に見ていないな。天峰副会長は手を美羽姉の額の前にやると、ペチンと音が響いた。どうやら凸ピンをしたようだ。
「イタッ!」
赤くなった額を押さえながら、一歩後ずさる美羽姉。
「全く、あなたのせいであんな酷い目に遭ったのに」
「えっ!? どういう事ですか? 天峰副会長?」
「それはね、生徒会長が本棚の前に書類やら書籍やら適当に積むから整理しようと一冊本を抜いたら、全ての書籍が落ちてきてね……あのざまよ、全く……ね!」
美羽姉に言ってるのに当の本人は自覚がないのか、頭にクエッションマークを浮かべている。相当頭にきているようで、話を続ける。
「そういえば、生徒会長が居ない時に編入生の連絡が来てましたが、生徒会長兼理事長のあなたが許可しないと編入出来ないから、また後日にしました。……けど、気が変わりました。今からその子の編入を許可します。……いいですね?」
僕はいまいち内容を理解できなかった。編入許可がでなければ編入出来ないのに天峰副会長は無理矢理学園に編入させて美羽姉を困らせようとしている気がする。編入生は美羽姉と何か関係あるのかな? 僕は気になり、そのまま美羽姉達の話を聞いておくことに。
「ん? まあ書類見るの面倒だし……。杏ちゃんの判断でいいよ~♪ 後の事はお願いね」
手を軽く上げ、生徒会長専用の椅子に座って、机の上に突っ伏して寝るふりをする。やっぱり生徒会長変えたほうがいいと思う。
「……本当に書類見なくてもいいの? 取り消しは認めないからね、いいですか?」
やたら念を押して言う天峰副会長。一体どうして何だろう?
「わかったわかった。カズ君と二人きりになりたいから早く出て行ってよ~」
邪魔者を排除するかのように手で天峰副会長をシッシッと追い払う美羽姉。流石に可哀そうでしょ。天峰副会長は怒りが頂点に達して眉間にしわをよっているが、顔は普通にしていて逆に恐ろしい。そのまま後ろを向いて歩き出す。
「……書類、ここに置いておきますね。これを見ても駄目とは言わないでくださいね。それでは……」
そう言い残し、生徒会室を出て行く。妙に協調してくるな。書類は生徒会長の机上に置かれているが、僕が見ても問題ないだろうか? 一応断りを入れてから見てみよう。書類を手に取り、美羽姉に聞いてみる。
「美羽姉。この書類見てもいいかな?」
「うん、いいよ。もしかしたらカズ君のクラスメイトになるかもだしね♪」
「そうだね。さてと……」
書類といっても綺麗に封筒の中に入っていて、開かないと見ることはできない。机上にあった鋏を使い開封する。取り出した写真を見ると、女の子の写真が入っていた。編入生は女の子らしい。とても可愛らしい顔をしている。多分、美羽姉の次の次くらいに可愛いだろう。
だが、眺めていると、どこかで見覚えがある気がしてきた。どこかで会っただろうか? その様子を見ていた美羽姉は僕から書類を奪い、写真を見てから名前を確認する。写真を見た時からだろうか顔がいつもとは違う怖い顔をしていた。
「美羽姉? どうしたの? もしかして知ってる人なの?」
「……うんうん、知らない人だよ。カズ君仲良くできたらいいね」
「あー、うん。そうだね。仲良くできたらいいね」
「その子と仲良くするの!? 仲良くなって何するつもりなの!? 彼女にする気なの!? お姉ちゃん認めませんからね!」
「そんな事一ミリたりとも思ってないからね!?」
ひとまず、話はこれくらいにして天峰副会長の件は終わったから帰ろうかな。美羽姉が書類をじっくりと眺めている間に退散をしよう。出入り口の扉に手をかけて、帰ろうとするが、服の裾を引っ張られた。
「……何? 美羽姉。僕、帰りたいんだけど……」
「行かせないよ。あの女のところには……」
あの女? 書類の女の人かな。僕には関係ないと思うんだけど……。僕は結局帰るのを遅らせることになった。
一週間ぶりです! 読者の皆さんお久しぶりです。のんびり執筆していたところ結構遅くなってしまい申し訳ありません。ですが、何とか投稿できました。
そして何と! この小説にアクセスしてくれた読者様がもうすぐで一万人に達します。やったーー!! と声に出そうなほど嬉しいです。登録者もまた一人と増え、嬉しい限りです。このまま頑張りましょう。という事で次回から幼馴染が出てくるかも……しれません。お楽しみに。
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