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MARCHING!!~15人組アイドル!不揃いな僕たちが頂点を目指すまで~  作者: 宇野くら


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第1話 不揃いな足音④



手の中で握りつぶされかけたルーズリーフ。

そこに書かれたナカの泥臭いリリックと、エイタの「傷つくのが怖い」という悲鳴が、頭の中で何度も何度もリフレインしていた。



(何が『安全運転』だ。何が『引き立て役』だ……!)


俺は握りしめた紙を胸に抱え、廊下を強く蹴った。

向かうのは、誰もいなくなったはずの地下レッスン室。


重いドアを勢いよく開けると、鏡張りの部屋の隅に、19歳組の4人がまだ残っていた。


ホワイトボードを切なそうな表情で見つめるナカ、壁に背を預けるエイタ、気まずそうにスマホを弄るアサヒとニャン。彼らは突然戻ってきた俺の気迫に押され、息をのんだ。



「……何? また説教?」


ナカが身構えるように低く呟く。

俺は黙って歩み寄ると、ぐしゃぐしゃになったルーズリーフをナカの胸元に叩きつけた。


「これ、落としたぞ」


「っ……! 見たのかよ! 勝手に人ンもの──」


「めちゃくちゃいいじゃんか」


俺の言葉に、ナカの口が固まった。


「誰にも見られない場所で、こんな熱い言葉書いといて……『本気出すだけ無駄』だ? 笑わせるなよ」


俺はそのまま、エイタ、アサヒ、ニャンの正面に仁王立ちした。


「エイタ! お前のボイトレの努力を、歌唱力を一番知ってんのは誰だ? 俺だよ! 毎日吐きそうになりながらレッスンしてたの見てたんだよ!」


「っ……メイくん……」


「アサヒ! 振り付け完璧に頭叩き込んで、みんなの遅れカバーしてんの知ってるぞ! ニャン! お前が夜中に一人でステップの動画撮り直して泣いてたのもな!」



4人の顔色が、みるみるうちに変わっていく。隠していた「本気」を白日の下に晒され、狼狽と動揺が部屋に満ちる。


「みんな言ってたろ。『俺たちは不揃いだからダメだ』って。違う……不揃いだからこそ、揃った時に最強になれるんだろ!?」


「な……なに熱くなってンだよ!」


ナカが必死に反論しようと声を荒らげる。


「言ったろ! 俺たちがどンだけ本気出しても、トップの3人には勝てないンだよ! パートだって数秒なんだよ! 期待して傷つくのはもう嫌なんだよ!」



「じゃあ俺が傷ついてやるよ!!」


俺の叫びが、レッスン室の鏡を震わせた。


「上から怒られるのも、お前らにうざいって言われるのも、全部俺が受け止めてやるよ!

もしダメでも全部俺のせいにしろ!!


お前らが本気出して、それでも壁にぶつかって傷つくなら、その傷は俺が全部背負ってやる!!」


「……っ」


「だから頼むから……自分の才能を、自分で殺すな!!」


俺の目から、溢れ出た涙がポロポロと床にこぼれ落ちた。

ダサくてもいい。先輩の面影なんてなくていい。


これが、俺──中間世代リーダー・メイの、泥臭い本音だった。


静まり返るレッスン室。

荒い息を吐く俺の前で、エイタがゆっくりと顔を上げた。その目には、冷めた諦めではなく、小さな、けれど確かな情熱の火が宿っていた。


「……ダサすぎでしょ、メイくん」


エイタが掠れた声で笑う。


「23歳にもなって……泣いて後輩にすがるなよ」


「……うるさい」


「ナカ、そのリリック……次の自主練で俺に歌わせろよ。お前がラップして、俺がハモリ入れる。……マネージャーに見せつけてやる」



ナカは胸元の紙をギュッと握りしめ、溢れそうになる涙を誤魔化すように乱暴に顔を拭った。


「……当たり前だろ。俺のリリック、最高なんだからな」


アサヒが小さく息を吐き出し、スマホをポケットに舞い戻す。


「はーあ。明日から筋肉痛確定じゃん。ニャン、ダンスレッスンつきあえよ」

「にゃ!?お、おれも頑張るか……!」


「ほら、メイくん。泣きやめって」


4人に背中を撫でられる。

この4人の才能を、潰されないよう、俺はどんなことだってする。だからお願いだ、神様。

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