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敗戦国の姫として敵国に売られたわっち、皇太子様を虜にして国を掌握させていただきます  作者: 蜜りんご


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5/12

第5話 歓迎?

 わっちに与えられた部屋は一応側室だから、と言わんばかりの部屋だった。おそらく掃除はされたんだろうが、窓枠の端にほこりが被っているのが見てとれる。


「お部屋もいただけるのですね!」


 わざとその場で一回転して、部屋の中をぐるりと見渡す。


「第三夫人に部屋も与えないなんて王家であるグリトリビア家の名が廃れますわ! あんたみたいな性根の腐った女にこんな豪華な部屋が与えられるなんて……!!」


「でも掃除が適当ではなくて? まぁ敵国の伯爵家の娘の扱いなんてこんなものなのでしょうね」


 窓枠に指を添えながら、伏し目がちかつ憂いた表情をつくる。かわいそうなんてこと微塵も思っていないだろうメイドたちの心情を、少しでもこちらに持ってくるための作戦だ。少しでも、自分の兵力は欲しい。それに、いずれはわっちの味方になってもらわなくては困るのだ。


「っ! 我がグリトリビア家は細部までこだわっているのよ! 汚れているわけないじゃない!!」


「じゃあこのほこりは何ですの?」


 指で窓枠をさらって、空気中にふぅっとほこりを撒く。


「しつれい! いたしました!」


「……シュレイナサマは、こちらに」


 嫌味ったらしくそう言って案内されたのは、応接間だった。応接間にも、いろいろな調度品が飾ってあった。机から椅子、絵画に花など細部までこのグリトリビアという国家を示していた。花は応接間の机の上にドン、と置かれていた。花瓶は西洋のものだから、日本が誇る職人の作品なんかに比べたら劣るんじゃないかと思ってしまった。


 応接間にいると、一応側室としてのポジションだからなのかお菓子とお茶が運ばれてきた。お茶はお抹茶の方が好きだ。紅茶が嫌いなわけではないけど、ときどきあの濃さが恋しくなる。だけどまぁ、お茶菓子もレベルが低かった。


(なんだこの体たらく)


 持ったティーカップは冷え切っていて、とてもではないがもてなすために淹れたものでないことはすぐにわかった。お茶菓子だってそう。なんかぐちゃぐちゃと型崩れしているし、切れ端のような物だって混ざっていた。残飯のようなものを詰め込んだじゃないか、と言わんばかりの汚さだった。


「うふふっ、さすが敗戦国ね。優雅なティールールも知らないようよ」


「そうね。残飯だされても気づかないんだもの」


 このメイドたちはドア付近に立っていたから5 mは離れていたけど、わっちの耳はしっかりと聞き取った。


「そうね。この国のティールールとやらがジェリア公国よりも低いことはわかったわ。だって、普通カップは温めるものでしょう? 違って?」


 そう言いながら、ガチャン、とソーサーにカップを叩きつける。ちょっとヒビが入ってしまったかもしれない。まぁいいか。メイドたちは、さっきわっちの側仕えをしていたメイドたちとは違う2人だったからメイド内でわっちの悪評はすぐに広まるだろう。


「ふふ、そのくらいの教養はあるようで安心いたしましたわ。替えのものいります?」


「必要ないわ。残飯と一緒に出されたお茶なんて飲むバカじゃないし、グリトリビアの家のレベルが知れてよかったわ」


 ふふふと笑いながら言う。メイドなんてわっちより社会経験なんて少ないだろうし、転がすことなんて容易いだろう。問題は甘やかされて育ったツェヴァルトと正妻と側室の1人の攻略だ。この3人は、周りのガードも硬いからちょっとずつ端からくずしていかなきゃいけない。


 ツェヴァルトはあった感じ、ただの俺様じゃなかった。まぁ水商売上がりってことがバレたくらいじゃわっちは、どうもならねーよって話だけど。


「調度品は綺麗なのに、グリトリビア家の人間は心が汚れていてお労しいですわ」


「何を根拠に……!」


「あら、第三夫人に残飯出す時点でそうではなくて?」


 メイド2人にそう言うと、ぐうの音も出なかったのがすごすごと下がっていった。わっちだってこんなこと言ってるが、心が綺麗だと思ってない。汚れてる女にじわじわと、内部侵略される気持ちってどんなんなんだろ。さて……メイドの1人や2人でも落としますか。


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