第4話 ツェヴァルト皇子
メイドたちにツェヴァルト皇子がいるであろう、部屋へと案内される。城内はわっちが住んでたランゲーリント家の趣とは異なり、派手で豪華絢爛な様子だった。廊下に灯される燭台の1つ1つにまで、細かい装飾が施された金の素材でできていた。
わっちも綺麗なものは好きだけど、ここまで金持ちアピされるのはちょっと好かない。至る所に敷かれている絨毯だって、仕立てのいいものだとすぐにわかった。やたら、踏み心地がいいのだ。だけどツルツルと滑るわけでもない。
「あんたが第二夫人だから私たちは仕事してるだけで、ツェヴァルト様はあんたなんかけちょんけちょんにしちゃうんだからね!」
「やめなさい! もうツェヴァルト様のお部屋なのよ。静かになさい!」
前を歩くメイドに舌をべーと出して、子供のように言われた。わっちは、こっそりとため息を吐いた。なぜここのメイドたちは、こんなに品が無いんだろうか。裸で歩けだなんて貴族が言うのも納得だ。
ツェヴァルト皇子の部屋とやらは、一段と派手だった。ドアが壁画になっており、天使が描かれていた。私室は違うのだろうけど、よく使う部屋のドアの装飾を天使にするだなんて頭がおかしいんじゃなかろうか。メイドの1人がノックをして、ツェヴァルト皇子に声をかける。
「ツェヴァルト様、シュレイナ様をお連れいたしました」
「おーう、入れ」
メイドに対しての粗雑な物言いに、眉を顰めてしまった。ただ、声を聞く限り顔が整ってそうな声だった。ファーストインプレッションは大事だ。わっちの表情で一番盛れてる表情をつくる。
「ハッ、売女が来たぜ。よくもまぁ、そんなグレーのドレスで堂々としてんな。俺なら、死にたくなるぜ」
わっちが目にしたツェヴァルト皇子は確かに綺麗な見た目をしていた。まぁ発言がクズだったが。ツェヴァルト皇子は金髪のウルフカットに、緑の目をしていて、まぁまぁ長い足を膝の上に乗せて、足を組んでいた。
見て一瞬ですぐ思った。こいつなら落とせるかもしれない。難易度は高いかもしれないけど、確実に落とせる。落とせなかったとしても、わっちの全プライドにかける。このタイプは強気なSタイプかと思いきや、強気な女に踏まれるのが好きなのだ。
「まぁ……ツェヴァルト様が私の美しさに屈服して、私を求めたのかと思ってましたわ」
灰色のドレスに付属でくっついてきた扇子で、目だけで射るように相手を見つめる。
「あぁ? 今なんつった?」
相手が自分に関心を向けたら、もうこっちのペースに乗せられたも同然だ。
「負け犬の遠吠えかしら、と言いましたわ」
扇子をパタンと閉じて、腰に手を当てて相手を挑発する。椅子にどかっと座っていた皇子は立ち上がって、調度のいい革靴をカツカツと鳴らしてこちらに向かってくる。ガッと顎を掴まれて、グイと上向かせられる。
「暴力でしか、物をうったえられないなんて幼稚なのでは?」
「っ……はぁ。お前よりかは大人だわ。少なくともな」
拳を握ってわなわなとしていたが、さすがに皇太子だけあって女を殴る教育はされてないのだろう。拳はすぐに戻っていた。
「俺様にひれ伏すまで、俺は諦めないからな……クソ女」
「私の名前はシュレイナですわ、ツェヴァルト様。人の名前も覚えられないのですか?」
「知ってるわ。だけどな……こんなクソ女に名前なんかいらねぇよ……ていうか売女に変わりねぇだろ。娼館でよく見た目してるぞ」
わっちはふふふと笑いながら、ツェヴァルトの手を顎から外す。
「あら? そう見える?」
思ったより厄介だ。わっちの本性を一瞬で見抜くだなんて。だけど、本性をバラすつもりもないし、わっちはこいつ含めた国の掌握が目的だ。ピキピキとこめかみをならすツェヴァルトを見つめながら、わっちはどう攻略していくかを考えるのだった。




