第2話 城門前での出来事
わっち、シュレイナは花魁であり、キャバ嬢だった。花魁時には、傾国の美とも言われていた。キャバ嬢時代もテレビに呼ばれるくらいの売れっ子だった。だけど、どちらの人生も壮絶な終わり方をした。
花魁のときは、花魁として生きていこうと思っていたのに客に恋をしてしまった。そしてその客との妊娠が発覚。しかも堕胎したから、花魁としての吉原での地位は凄まじい勢いで下がった。
見世では客を取らされまくった結果、梅毒にかかって死んだ。傾国の美とも言われたのに、最後は醜い状態で死んだのがこの時の人生の汚点だ。
キャバ嬢のときは、自分の店を開こうと思って29歳で勤めていた店を辞めた。その時に、いた客に刺された。苦しみながら何度も客の男に刺されて、血まみれになりながら死んだ。客にくそがって思いながら死んだから、性格はひん曲がってるかもしれない。
どっちも悲惨な死に方をしたのは、見た目が綺麗すぎたからだと思う。今だってそう。さらさらとした銀髪に紫のぱっちりとした目をしている。天然パーマだったおかげで少しウェーブしているからあんま意味は無いのかもしれないけど、髪の毛は流行りに乗って巻いている。
ジェリア公国では、わっちが美の基準となるくらいの美しさと言われていた。記憶を取り戻す前は私なんて……なんて謙遜してたけど、今はそんなことする気がない。わっちが綺麗だなんて当たり前すぎる。
顔だって小さいし、ウエストだって細い。コルセットをキュッとしめなくても細いウエストだから、メイドたちには羨ましいとよく言われたもんだった。化粧をしなくても真っ白い肌に、キメも細かい。今の時代の男を虜にするなら、この顔面なら全く問題ないだろうと思う。ツェヴァルト皇子だか、なんだろうが私は落とせる。自信がある。
だけど、現実はそんな生優しくなかった。
わっちはランゲーリント家を馬車で出発して、ツーヴェル帝国に入って王家の城前に着いた時だった。馬車が止められて、馬車のドアがバンッと強引に開けられた。
「おい、そこの馬面おん……な、いやすみませんでした。い、いや違う!ここに出て服を脱げ!!」
馬面女と言われかけたので、全力で微笑んであげた。わっちが馬面ですって? んなバカな。そんな目がついてるなら抉り取ってあげる。そう思って微笑んだのが効いたのか、即答で謝られた。まぁ許しはしないけど。
相手はわっちと同じ貴族然の格好をしていたが、教養の差を感じたので、下級貴族かなんかなんだろう。だがしかし、それよりもだ。
「服を脱げですって?」
わっちは、優雅に扇子を顔の前に掲げながら目の前の男に問う。
「そうだ。ジェリア公国からの持ち物はこのツーヴェル帝国に持ち込むことは許さない!」
「へぇ……」
わっちは、御者に差し伸べてもらった手を借りながら、重たいドレスを引きずって馬車から降りる。気合いを入れるために、わっちに一番似合う紫のドレスを着たのにこれでは意味がないじゃないか。
両親が少しでも生活が豊かになるように、とアクセサリーなどの調度品を持たせてくれたのが無駄になってしまった。どうせ回収されるし、自分の持ち物にならないのなら地面に捨ててしまおう。
自分の写りの良い横顔の逆側に、髪の毛を流す。イヤリングを片方ずつ外し、ネックレスを外す。目の前の男に流し目を送りながら、コルセットを外していく。締め付けがだんだんなくなっていて、呼吸がしやすくなる。
体型も完璧だ。胸もでかいし、手足だって長いし、細いしすらっとしている自信はある。もちろん周りの聴衆へアイコンタクトをすることも忘れない。
「……ふふっ、脱ぎ終わりましたわ」
目の前の男は声も出せずに、顔を真っ赤にさせてぷるぷるしていた。男性は太っていることが美徳とされている今、あまりよくわからなかったが勃起している様に見えた。そりゃあそうだろう。きっと恥ずかしがって顔を真っ赤にするのを想像していたんだろう。花魁として体を売ったことだってあるのだ。今更人前で裸になるくらい、なんてことない。
「それで? 私は何をしたらよいのです?」
周りを見渡しても、顔を赤くして呆然とする者、顔を逸らす者、顔を覆う者、いろんな反応をしている者がいる。
「こんな下賤な女が皇太子様の側室になるだなんて……あり得ないな。貴様には馬車も不要だろ! 城まで歩いていけ!!」
城は目の前に見えている。靴は脱がなくてもいいらしいので、モデルさながら歩いていく。観衆の視線を集めながら城に向かう。ハイヒールは履き慣れてる。むしろ今履いてるのなんか5 cmしかないからローヒールじゃないかって思ってしまう。
まずは、城門前にいる門番に名乗るとこからだ。私の中で、ツーヴェル帝国での戦いのゴングの音が鳴った。




