とある男と幼馴染の話
彼女をはっきりと意識したのは、高校生の頃だった。
確か、将来の夢について発表するという、ありきたりな授業だったと思う。
誰も手を挙げたがらない中、一人の女子生徒が迷いなく手を挙げた。
「私は、この世の中の真実を伝えるリポーターになりたいです」
教室が少しざわつく。
自信満々に語る彼女を見て、何人かの生徒がクスクスと笑っていた。
でも当時、やりたいことなんて何一つなかった俺には――
その姿が妙にカッコよく見えた。
放課後。
「なあ」
俺は、教室を出ようとしていた彼女に声をかけた。
中学から一緒だったはずなのに、まともに話すのはほとんど初めてだった。
「なんで、リポーターになりたいんだ?」
彼女は少し驚いた顔をしたあと、すぐに笑った。
「小学校三年生の頃ね、公園で怪人に襲われたことがあったの」
「怪人に?」
「うん。その時、絶対ヒーローが助けに来てくれるって思ってた。でも――実際に私を助けてくれたのは、ヴィランだった」
少し間を置く彼女。
「ヴァイパーって知ってる?」
「名前くらいは」
すると彼女の目が一気に輝いた。
「悪役十二支の巳を率いてる有名なヴィランよ!彼は――」
「ちょ、ちょっと待て」
思わず話を止める。
「お前、めちゃくちゃ詳しいな」
「まあね!」
なぜか得意げだ。
「ヴァイパーに助けてもらってから、ヴィランのことをいろいろ調べるようになったの。新聞の記事とか雑誌とか、テレビのニュースを録画したりして」
「……それ、もう悪役マニアじゃん」
「そうとも言う!」
彼女は楽しそうに笑ったあと、少しだけ真剣な顔になる。
「でもね、調べれば調べるほど分からなくなったの」
「何が?」
「テレビや新聞では、ヴィランは悪い奴だって報じられてる。でも私を助けてくれたヴァイパーは、そんな人じゃなかった」
彼女がまっすぐ俺を見る。
「世の中には、まだ報じられていない真実がたくさんあるんじゃないかって思ったの。私は、それを自分の目で見つけて、自分の言葉で伝えたい」
あの時、教室で夢を語っていた時と同じ目だった。
正直なところ――
単にヴァイパーに惚れてるだけなんじゃねぇかとも思った。
でも。
ここまで真っ直ぐに夢を語る彼女を見ていたら、俺まで少し興味が湧いてきた。
「……面白そうじゃん」
「え?」
「俺も、その真実ってやつを知りたくなった」
一瞬きょとんとしたあと――
彼女は嬉しそうに笑った。
その時の笑顔は、今でも目に焼き付いている。
「オッケー!今日もキレキレだったな」
ビクトリーとバジリスクの中継を終え、俺はカメラを下ろす。
「ありがと!」
あいこが満足そうに笑う。
次の現場へ向かう準備を始める。
「さぁ、明日も頑張るわよ!」
「ああ」
あの日語っていた夢は――今も変わっていない。
このエピソードはpixivで挿絵付き版も公開しています。
キャラクターデザインが見たい方はこちら!
pixiv:【https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=28988722】




