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悪の門 The Villains Gate  作者: ばく
第二章 開かれた門
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健司 対 般若 一

「八郎、大丈夫か?」

次の相手が待つ場所へ向かう途中、クボケンの声で八郎が我に返る。

「ごめん。なんだか嫌な予感がして……みんな無事でいてくれたら良いけど……」

「菜々子はともかく、大吾も睦子もだいぶ成長したみたいだ。心配だが、今は任せるしかない」

クボケンが前を見据える。

「それに正直、俺も自分のことで手一杯かもしれん。大吾の予想通り、次の相手は……」

その先に、青白い人魂がゆらゆらと浮かんでいる。

その光が一人の男を照らし出す。

顔を覆う――般若の面。

「よぉ、久しぶりだな。あの時はまんまと逃げられたが、今回はそうはいかないぜ」

「拙者もお主と一戦交えたいと思っていたぞ、マクベス」

袖に隠れていた腕を出し、腰の刀へそっと手を添える。

その瞬間、冷たく鋭い殺気がクボケンへ向けられる。

クボケンが一歩前へ出る。

「行け、八郎」

八郎が静かに頷く。

言葉を交わすことなくクボケンへその場を託し、童子の待つ清水の舞台を目指して走り出す。

八郎の姿が遠ざかっていく。

残された剣士が二人。般若が夜空を見上げる。

「今宵は良い月が出ておる。我が愛刀、氷月も久々の出番に喜んでおるわ」

ゆっくりと鞘から刀を抜く。

そして刀を逆手に持ち、クボケンへ向けて構える。

(すげぇな……前回会った時より陰が増してやがる。こりゃ相手も本気で俺を殺す気だ)

クボケンの全身を陰が包む。

その姿が――マクベスへと変わる。

マクベスも剣を構え、般若と向かい合う。

二人の間を、冷たい夜風が吹き抜ける。

どちらが先に動いたのか分からない。

次の瞬間、夜の静寂を切り裂くように剣と剣がぶつかる音が無数に響く。

お互い太刀筋が見えないほどの速さで攻撃を繰り出し、一歩も譲らない。

やがて剣の音が止む。

「ほーう、思うていたよりも速い。それに剣さばきもまずまず……ならば手加減は無用だな」

月明かりを受け、般若の刀が鈍く光る。

般若がその刃を自らの腕へ当て、ゆっくりと引く。

刃に血が伝い、ポタポタと地面へ落ちていく。

「これは妖刀の一つでな。主人の血を欲し、その代償として力を発揮する」

般若が血に濡れた刀を見つめる。

「一度手にした者の血を、死ぬまで絞りとる恐ろしい刀よ。拙者もこの刀の呪縛から逃れられず、挙げ句の果てに魅了された者の一人じゃ」

般若が再び刀を構える。

「さて、準備は整った。参る!」

今度は般若から一気に間合いを詰め、刀を振り下ろす。

マクベスが剣で受け止める。

しかし――剣と刀が触れた場所から、氷が一気に広がり始める。

「これは!?」

氷が剣を伝い、そのままマクベスの右腕へと這い上がっていく。

マクベスがすぐさま般若を振り払い、距離を取る。

右腕はすでに凍りついていた。

「切りつけたものを瞬時に凍らす。その名の通り、氷のように冷酷な刀。それがこの氷月」

般若が静かに刀を向ける。

「さて、お主はこの刀とどう戦う?」

凍りついた右腕。

だが、まだ剣を振るうことはできる。

(問題は、あの刀に触れられないことだな……こうなりゃ一か八か……)

マクベスが剣を構え直す。

その構えは、酉のボルティナと対峙した時と同じ。

自らの鎧に宿る陽を最大限に使い、身体能力の限界を引き出す大技――雷鳴。

「悪いが、こっちは戦いを楽しむ余裕はないんでな。早々に白黒つけさせてもらう」

マクベスの全身を陽が包む。

次の瞬間。

辺りが雷光に包まれ、一瞬にして視界が真っ白になる。

遅れて、凄まじい雷鳴が響き渡る。

光が消え、夜の暗闇が戻る。

そこには、般若の背後で剣を振り抜いたマクベスが立っていた。

直後、般若の体から血飛沫が舞う。

「ぐっ……!」

口から血を吐き、般若が膝をつく。

「……良い一撃であった」

般若がゆっくりと顔を上げる。

「しかし、拙者を倒すにはまだ足りん」

般若が言葉を言い終えた、その時。

マクベスの体に異変が起こる。

先ほどの攻撃ですれ違った瞬間、般若の氷月はマクベスの胴へ触れていた。

そこから氷が広がり、鎧ごとマクベスの全身を覆っていく。

そしてついに、マクベスは完全に氷の中へ閉じ込められてしまった。

般若がゆっくりと立ち上がる。

「期待しておったが……所詮それほどであったか」

そう言い残し、その場を去ろうとする。

だが――般若が足を止める。

背後から、これまで感じたことのない禍々しい陰を感じる。

「……まだ……終わってないぜ?」

般若が振り返る。

その瞬間、マクベスを覆っていた氷が音を立てて崩れ落ちる。

般若の視線の先。

そこには、半身をステロの陰に覆われたマクベスが立っていた。

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