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悪の門 The Villains Gate  作者: ばく
第二章 開かれた門
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睦子 対 瓜子 一

一方、法師の案内で開山堂へと差しかかる巳一行。

そこで待ち構えていたのは、五歳ほどに見える小さな女の子だった。

先ほどの呉葉と同じく、その顔には面をつけている。

「私の名は瓜子。で、相手は誰なんだい?」

ぶっきらぼうに話す瓜子。

「私が相手するわ!」

睦子が真っ先に名乗り出る。

瓜子が睦子をじっと見つめる。

「なんだい、まだガキじゃないか。つまらないねぇ」

「いやいや!あんたの方が子供じゃん!」

「こう見えても私は何百年と生きている鬼の一人さ。あんたなんか赤子同然だよ」

瓜子の小さな体から、見た目には似つかわしくないほどの濃い陰が放たれる。

その圧に睦子が一瞬だけ息を呑む。だが、すぐに表情を引き締める。

「大丈夫。散々修行したんだもん。またみんなで学校に行きたいから」

睦子が八郎たちへ振り返る。

「八郎!必ず勝ってすぐ追いつくからね!」

睦子を残し、先を急ぐ巳一行。

去り際、八郎と大吾が振り返る。

「睦子!待ってるから!」

「お前がいないと学校楽しくないんだからな!」

二人の言葉を聞き、睦子が無言で親指を立てる。

八郎たちの姿が遠ざかると、瓜子が楽しそうに睦子へ話しかける。

「さぁて、何して遊んでやろうか……そうだ」

瓜子の不穏な様子を察し、睦子がすぐさまメアリーへと変身する。

両腕には、これまで通りの巨大な腕がついている。

瓜子が面の奥で不気味に笑う。

「鬼ごっこはどうだい!?私が鬼だから、あんたは殺されないように逃げるんだ!」

瓜子が勢いよく飛びかかる。

その手には、大きなナタが握られていた。

「うわっ!あぶなっ!」

間一髪で攻撃をかわすメアリー。

「子供がそんなん持っちゃいけないのよ!」

「だから子供じゃないって言ってるだろ!」

ナタを振り回しながら追いかけてくる瓜子。

メアリーが建物の間を走り回り、その攻撃をかわしていく。

「ってゆーか……」

逃げながら、メアリーがふと気づく。

「よく考えてみれば、律儀に鬼ごっこなんてしなくたって返り討ちにすればいいじゃない!」

急に立ち止まり、瓜子へ向かって構える。

「くらえー!」

巨大な拳が瓜子の顔面へ直撃。

小さな体が吹き飛び、そのまま壁へと叩きつけられる。

瓜子の動きが止まる。

「よっしゃ!」

思わず拳を上げるメアリー。

だが、すぐに表情を曇らせる。

「……子供相手にやりすぎたかな?」

瓜子を心配し、恐る恐る近づいていく。

メアリーの拳を受けた面は割れ、その下の顔が露わになっていた。

「……え?」

ひび割れた顔。そして、ボロボロと崩れ落ちていく肌。

その正体は――日本人形。

(!?……人形?)

異変に気づいた瞬間。

背後からナタが振り下ろされる。

「うわっ!」

メアリーが反射的に飛び退き、間一髪で攻撃をかわす。

「惜しいねぇ。もう少しで殺れたのに」

声の方へ振り返る。

暗がりから、一人。また一人。

瓜子とまったく同じ姿をした者たちが、次々と現れる。

全員が同じ服装。同じ面。

先ほどメアリーが殴り飛ばした人形までゆっくりと起き上がり、メアリーを囲んでいく。

「やっぱり、そんな簡単には勝てそうにないわね……」

周囲を取り囲む瓜子たちを見回すメアリー。

「次はかごめかごめで遊んであげる。どれが本物か当ててみな!」

瓜子の姿をした人形たちが、メアリーの周りをぐるぐると回り始める。

「こんなんわかるわけないじゃん!」

「なら、とっとと死にな!」

次の瞬間、複数の人形が一斉に襲いかかる。

次々と繰り出される攻撃を、メアリーが紙一重でかわしていく。

(マグレじゃない。相手の攻撃が見える!兄様と修行しててよかった!)

だが、どれが本物の瓜子なのか分からず、狙いを定めることができない。

攻撃をかわしながら、メアリーがクリスとの修行を思い出す。

(お兄様が言ってた……敵の位置が分からない時はこちらから誘い出せって。人形は十中八九、瓜子が操ってるみたい。こうなったらあれを使う時!)

メアリーが巨大な両腕を前へ突き出し、人形のうち二体に狙いを定める。

「いくわよ!新技!ロケットパーンチ!!」

掛け声と同時に、二つの拳が勢いよく飛び出す。

それぞれの拳が人形を掴み、そのまま壁へ激突。拳が壁へめり込み、人形の動きを封じる。

しかし、捕らえた二体はどちらも瓜子ではなく人形。

だが、メアリーの狙いはそこではなかった。

これだけの人形を遠くから操れるはずがない。必ず瓜子は近くにいるはず。

そして――捕らえた人形とは別の一体が、拳の方へ引っ張られるように動く。

「見つけたわ!瓜子ちゃん!」

「くそっ!バレちまった!でも、それで勝ったつもりかい!?腕がなくなったんだから、あんたに攻撃手段はないね!!」

本体を見破られた瓜子が、人形を操る糸を引く。

メアリーの背後にいた人形がナタを振り上げ、その背中目掛けて振り下ろす。

「大事なのはここからじゃーい!」

壁にめり込んだ二つの拳から、ギュイーーンと激しい機械音が鳴り響く。

拳と腕を繋ぐチェーンが勢いよく巻き取られ、壁に固定された拳へ向かってメアリーの体そのものが引っ張られる。

その先にいるのは――瓜子。

「さぁ瓜子ちゃん!覚悟しなさい!」

「ちょ、ちょっと待て!何をするつもりだ!?」

瓜子が慌てて人形の糸を切ろうとする。

しかし、もう間に合わない。

「悪い子にはお仕置きじゃあああ!!!」

ゴーーーーン……。

除夜の鐘を思わせる鈍い音が響き渡る。

メアリーの頭突きが瓜子の頭へ炸裂。

その衝撃で瓜子の面が外れ、白目をむいて気絶する少女の素顔が露わになる。

「いったーい!!」

メアリーが自分の頭を押さえる。

「……けど、兄様のチョップよりはマシね。この拳にはちょっと改造が施されていてね。私の腕と拳はチェーンで繋がれているのよ。拳の中のモーターでチェーンを巻き取ることによって、私は拳を放った先に瞬時に移動できるってわけ」

気絶している瓜子を見る。

「……って、聞いてないか」

しばらくして、この戦いを草陰から見守っていた立会人の光希が姿を現す。

「メアリーさん、素晴らしい戦いでした!では、この勝負はメアリーさんの勝――」

その時。

ゴゴゴゴゴ……。

突然、地面が大きく揺れ始める。

「ななな、なんすか!?地震!?」

「わわわ、私も分かんないよ!」

二人が慌てて辺りを見回す。

「……まだ遊びは終わっていないよ」

どこからともなく瓜子の声が響く。

メアリーが驚き、声のする方を探す。

「陰武召喚!」

地響きがさらに激しくなる。

「丑式巨大傀儡人形――いちま様!」

ゴゴゴゴゴ……!

大きな地響きとともに、闇の中から巨大な影が姿を現す。

高さ、およそ二十メートル。それは巨大な市松人形だった。

「な、なによあれ……」

あまりの大きさにメアリーが見上げる。

市松人形の中から、瓜子の声が響く。

「若様のために勝たなくちゃいけない。私はどうなっても構わない。可愛い若様のために、この勝負、なんとしても勝つんだ!」

いちま様から放たれる膨大な陰が、その場を覆っていく。

どうやら長い時間をかけ、この人形へ陰を蓄えていたようだ。

「これじゃあ話しても無駄そうね」

巨大ないちま様を見上げ、メアリーが身構える。

「ひえぇ!メアリーさん!あとは頼むっす!」

光希がそそくさとその場から逃げていく。

そんな光希を横目に、メアリーがいちま様へ向かって走り出す。

「もう一度行くわよ!ロケットパーンチ!」

両腕を突き出し、二つの拳を勢いよく発射する。みごとその巨体へと拳が直撃する。

しかし――メアリーの攻撃にびくともしない。

「このおもちゃは没収だ!」

いちま様の巨大な手が、メアリーの拳へと伸びる。

そして、ブチッ!

拳と腕を繋いでいたチェーンが力任せに引きちぎられる。

「うそっ!?」

二つの拳を奪われ、メアリーが思わず後ずさる。

攻撃手段を失ったメアリー。

目の前には、自分を簡単に踏み潰せるほど巨大な人形が立ちはだかっている。

だが――メアリーには、まだ奥の手が残されていた。

このエピソードはpixivで挿絵付き版も公開しています。

キャラクターデザインが見たい方はこちら!

pixiv:【https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29490850】

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