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悪の門 The Villains Gate  作者: ばく
第二章 開かれた門
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フローラ 対 呉葉 一

巳の仲間たちが去り、随求堂には菜々子と呉葉だけが残る。

「あらまぁ……なんとお美しい絆やこと。眩しゅうて、目が腐ってしまいそう。けれど、上様に近づかはる者には容赦いたしません。特に女は」

「あら?ずいぶん童子にお熱なのね。それにお面で顔隠しちゃって、あんたの方がおばさんなんじゃない?」

互いに一歩も引かない二人。

少し離れたところで、立会人の加藤がその様子を覗いている。

(女ってこえぇなぁ……)

呉葉が軽く息を吐き、続ける。

「口だけでは埒が明きまへんなぁ。力で白黒つけましょうか。散々大口叩かはったんやし、すぐに死なはるなんてことのないように」

「その言葉、そのまま返してやるわ!私を敵に回したことを後悔させてやる!いくわよー!」

菜々子の全身を陰が包む。

次の瞬間、その姿が薔薇の魔女――フローラへと変わる。

さらに修行で会得した植物の使い魔を召喚する。

呉葉の表情がわずかに変わる。

「まぁ、酉の使い魔とは。少々ややこしいお相手ですね。こうなりましたら、わたくしも本気でお相手いたします」

呉葉がフローラの力量を即座に察し、ゆっくりと顔の能面に手をかける。

仮面を外し初めて露わになる、呉葉の素顔。

「それでは」

その言葉を残し、暗闇の中へ姿を消す。

「待ちなさい!逃げる気!?」

フローラがすぐさま後を追う。

闇の奥から呉葉の声だけが響いてくる。

「逃げようやなんて思うておりまへん。丑の者どもはみな仮面をつけております。それは代々、鬼であるわたくしらが人に溶け込み、身を隠すために身につけた知恵」

フローラが周囲を警戒しながら、呉葉を探す。

「その仮面を外して素顔をさらすいうことは、すなわち素顔を見た者を生かして帰さぬという意思表示。残念ですが、貴女には死んでもらいますえ」

その時。

フローラの足元に違和感が走る。

「……なに?」

足がゆっくりと地面へ沈んでいく。

(沼!?しかも、ただの沼じゃない!これは……!)

「気ぃつかはりましたか。それはわたくしの体液からできた毒の沼。貴女はもう、わたくしの罠にかかっております」

フローラが顔を上げる。

頭上には無数に張り巡らされた蜘蛛の巣。

そしてその中心には、下半身を巨大な蜘蛛へと変え、不気味に微笑む呉葉の姿がある。

フローラがすぐさま沼から抜け出そうとする。しかし、口から吐き出した呉葉の糸が、その体へ絡みつく。

「くっ!」

身動きが取れない。

もがけばもがくほど、体が毒沼へと沈んでいく。

(まずい!このままじゃ……!)

必死に糸を引き剥がそうとするが、びくともしない。

腰、胸、肩。ついには、顔だけ辛うじて沼の上という状態になる。

フローラが近くを飛ぶ使い魔へ目を向ける。

「……ごめんね。あとは頼んだわよ……」

心配そうにフローラを見つめる使い魔。

その目の前で、フローラの姿が完全に毒沼の中へ消える。

「あとは使い魔さえ片づけてしまえば、わたくしの勝ち。なんとまぁ、あっけないこと……」

呉葉が不気味に笑う。

このエピソードはpixivで挿絵付き版も公開しています。

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pixiv:【https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29483581】

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