各々の修行
亥に別れを告げ、無事に帰ってきた八郎たち。
気づけば、一月も終わりに近づいていた。
鹿児島空港での別れ際、イブキは大粒の涙を流していた。
「八郎ー!もう行くのか!?妾を置いていくのかー?うわーん!」
「そんな泣かんでも、会いたい時は連れて行ってやるわい」
カマイーが豪快に笑う。
「八郎、次に会える時を楽しみにしとるで。達者でな」
大きな腕を振り、笑顔で見送るカマイーの姿が今も鮮明に残っている。
カマイーの言葉を聞いても、父への疑念がすべて消えたわけではない。
それでも――もう一度、父を信じてみたいと思えた。
そして八郎は、丑との干支合戦を決意する。
蛇ノ目家に集まった仲間たちを前に、八郎が口を開く。
「いよいよ丑の干支合戦だね。丑の一族はみな鬼の血が流れていると聞いた。ヴィラン協会の本部も丑の城にあるし、おそらく今までの相手とはまるで別格だと思う」
皆が静かに八郎の言葉を聞く。
「それでも僕は何としても勝ちたい」
一度、息を吐く。
「勝って、童子ともう一度ちゃんと話したい。父さんと童子の父の間に何があったのか、僕自身で確かめたいんだ」
八郎が皆の顔を見る。
「僕個人の思いが強くなってしまったけど……僕と一緒に戦ってほしい」
「あったりめーだろー!」
真っ先に大吾が声を上げる。
「俺の夢は八郎をヴィランのトップにすることだからな!」
「そんなの聞くまでもないじゃん。私は巳の仲間なんだもん」
睦子も笑顔で拳を握る。
「八郎がいてくれたおかげで、今の私たちがあるからね」
菜々子が優しく微笑む。
「本当に立派になったわ」
「俺のこと忘れてもらっちゃ困りますよ!」
半三も勢いよく身を乗り出す。
「丑のやつら、ギャフンと言わせてやりましょう!」
「みんな気持ちは一緒みたいだな」
クボケンが皆を見回す。
巳の気持ちが一つになる。
だが――クボケンがすぐに表情を引き締める。
「しかし、今のままじゃダメだ」
一同がクボケンを見る。
「童子と側近に会っただろ?正直、俺でさえ太刀打ちできないほどの陰の量だった」
あの時に感じた圧倒的な力。誰もが、その恐ろしさを覚えている。
「今のままじゃ負ける。だからこそ、丑との干支合戦まで修行がしたい」
クボケンの提案に八郎が頷く。
「クボケンの言った通り、このままじゃ勝つどころか死人が出るかもしれない」
八郎も全員を見渡す。
「ここでの修行も考えたけど、みんな本当に強くなってる。ここでできる修行にも、限界があると思う」
そして――
「だから今回は、各自で修行をしてもらおうと思ってる」
八郎が日付を告げる。
「二月二十日に、丑に干支合戦を申し込む。それまでに各々で修行して、干支合戦の前日にここへ集合しよう」
誰からも異論はなかった。
丑との干支合戦に勝つため。
そして、八郎の想いを叶えるため。
それぞれが、今よりさらに強くなることを決意する。
こうして一同は、それぞれの修行へ向かうため蛇ノ目家を後にした。
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