神への捧げ物に妥協無し
ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。
「それでは、場所をお借りします」
「うむ」
依頼を終え、普段なら教会へと帰るのですが、今日は踊りの練習をするべく夜まで冒険者ギルドに残ります。
アーノルドには既に伝えていますので、心配をかける事もありません。
「お?今日は練習の日か」
「練習?何のだよ」
「神様に捧げる踊りを最近練習してるんだってよ」
「へ〜」
冒険者ギルド内酒場の一角を借り、机や椅子を踊りやすいように移動させます。
「ギルド長からお金のやり取りは禁止されていますので、置かないでくださいね」
「わかった」
「金貰ったら別の店になっちまうからか」
位置につき、息を整え......顔を上げると同時に踊ります。
足をリズム良く踏み鳴らし、手拍子を交えながら体をひるがえします。
「ほ〜」
「これ無料なのかよ」
「飯食ってる場合じゃねぇわ」
「〜〜〜♪」
腕を大きく広げ、払うような動きと共に歌い始めます。
広く、深く、響かせるように声を伸ばし、歌と足音を合わせ、全てを担う楽器となります。
「良いぞー!」
「綺麗」
ただひたすらに音を、歌を、踊りを、神へ神へ神へ。
賛美をここに、感謝をここに、畏怖をここに。
神に捧ぐ全てを踊りと歌でもって表現します。
「な、なんか怖いぞ......」
「ずっと踊ってるな」
「大丈夫なのか?」
全ては神への信仰ゆえに......。
「はい!」
最後に背筋を伸ばして、高らかに足を鳴らして終わりです。
御静聴、ありがとうございました。
「お、終わった、のか?」
「そうみたいだな」
「ふぅ......はぁ......はい、終わりました」
知らない内に沢山汗をかいてしまいましたね。
「大丈夫か?」
「何がですか?」
「何も目に入ってないぐらい必死に踊ってたからよ、何かあったんじゃねぇかと」
「神へ捧げるのですから、全力で踊るのは当然です」
「そ、そうか」
「それで、神様からはどうなんだ?」
神?如何でしたか?優雅さが足りない?......はい、精進します。
「優雅さが足りないそうです」
「うへぇ、厳しいな」
「やっぱ信徒って大変だわ」
「そうでしょうか?」
「コレだもんな。数が少ないのも納得だぜ」
納得いきませんが、信徒は大変なようです。
「では、そろそろ帰りますね。お邪魔しました」
「おう、ガキが待ってんだろ?机は戻しといてやるから、さっさと帰りな」
「良いのですか?」
「おう」
名前は知りませんが、親切は素直に受け取るとしましょう。
神は素直である事がお好みですから。
「ありがとうございます」
「良いってことよ」
すっかり夜になってしまいましたね。
寄り道はせず帰るとしましょう。




