日常こそ鍛錬
ハルフォンソからこんにちは。ティファレトです。
アメリアと別れ、ハルフォンソに戻ってきての翌日です。
いつも通りに起き、いつも通りに鍛錬をし、いつも通りにアーノルドを起こしに。
「......」
いえ、今日は起こすのは止めておきましょう。
疲れていた様子ですし、朝食を作り置きしてお仕事に向かうとしましょう。
恐らくは起きて朝食を食べたら、王都で買った本を見ながら刺繍を夕方までするでしょうから、買い物に行く事も無いでしょからね。
「こんにちは、ティファレトさん。依頼の確認ですか?」
「こんにちは、ロールさん。そうです」
冒険者ギルドは相変わらず騒々しいですね。
そういえば、王都のギルドはどうなのでしょうか?ここと変わらないのでしょうか?
「最近、ティファレトさんは工事現場の依頼が多いですよね?それなら良いのがありますよ」
「ふむ」
石材や木材の持ち運びですか。
結構な稼ぎですし、これにしましょう。
「これでお願いします」
工事現場は受注をしたらすぐに現場へ向かうのが基本。
待たせないように現地へ向かいましょう。
「いや〜、姉ちゃんが来てくれるたぁな、助かるぜ!」
現場入りしてお仕事開始です。
現場の長は始めて会う方ですが、どうやら私は工事関係者に知られているようです。
「これはどちらに置きますか?」
「あの資材の右に置いてくれ!」
「はい」
切り出した一抱えほどの岩を肩に乗せ、両手で支えながら歩きます。
本来は体の前で抱えるのが良いのでしょうが、私の身体構造上それは叶わないので必ず肩に乗せます。
姿勢は真っ直ぐに、足元に気をつけながら歩き、下ろす時はゆっくりと、上半身だけでなく下半身の筋肉も使います。
武器を振るったり、走るのとはまた違う筋肉を使うので大変良い鍛錬になります。
やはり、体はまんべんなく鍛えないと動きのバランスが悪くなりますからね。
こうした利点から、新人冒険者からおすすめの依頼の相談を受けた時は工事現場を勧めているのですが、あまり良い顔をされません。
稼げて鍛えられる。中々に良い仕事だと思うのですが......。
「今日は人手が必要だったからな、若いの数人でもと思って依頼したんだが、姉ちゃんが来てくれたんなら解決だ!」
「前はゴッツイ兄ちゃんが来てくれたんだが、どうにも忙しいみたいだしな」
バッシュさんでしょうか?
本来、銅階級は数日に及ぶ依頼もこなす階級なので、私のようにハルフォンソから出る事が少ない銅階級のほうが珍しいのです。
「俺らの仕事は嫌がられる事も多くてな。若くて力があってもやる気がなきゃあ事故にも繋がる。だが、姉ちゃんはやる気もあるし力持ち!ありがてぇぜ!」
「新人におすすめはしているのですが......」
「汚れる力仕事なんてのは、誰だって嫌なもんなのさ」
「そうですか」
「あ、そうだ、聞いたぜ姉ちゃん!さっき休憩中に食ってたが水ブドウが好きなんだって?」
「はい」
「俺の親戚が水ブドウ農家をしていてよ、差し入れに貰うんだが余りがちでな、良かったら仕事終わりに持っていかねぇか?」
「まぁ!ありがとうございます。いただきます」
鍛えてお金も貰って水ブドウも貰えるとは、今日は素晴らしい贅沢な1日です。




