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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第九七九話 帰ってきたチームミコバト

 真っ暗だった。暗視スキルがなければ、自分の手すら見えないような真っ暗闇。

 そんな黒一色の視界に、これでもかと自らの居場所を主張するのは、視界の隅で今もチカチカしている超必殺技ゲージと、それからもう一つ。

 おろしたての消しゴムが如く真っ白な、モノリスの存在である。


 それに、視界は利かねど声はする。気配もする。周囲では仲間たちが早速ざわついているのだ。

 あと、寒い。鼻の奥がツンとするような冷たい空気を感じる。そういえば迷宮の外は冬真っ盛りだったっけね。そりゃ寒いわけだ。

 一先ず、今の私たちに必要なのは灯りだろう。だが、せっかくなのでその前に。


『あー、テステス。ただ今念話のテスト中。みんな聞こえるかなー? 今灯りをつけるねー』

『グラグラー』

『念話スキル復活キター!! ああ久方ぶりのこの感じ、ゾクゾクします……!! そうだ、ステータスウィンドウもチェックチェック』

『ソフィアさんは念話でもうるさいのです』

『念話が復活したということは、つまり迷宮の外に出られたという認識で良いのかな?』

『白いモノリスが見えるってことは、そういうことぱわな』

『シャバの空気です~』


 どうやら念話はきちんと機能しているみたい。それに心眼が作用しているのも感じる。

 この分なら他のヘンテコスキルも機能を取り戻したと見て良いだろう。取り敢えずは一安心だ。

 であるならば、早速照明魔法をそこら中にばら撒いて、この真っ暗な空間に光を灯していく。

 ゼノワもおもちゃの光線銃を乱射し、機嫌良く手伝いを買って出てくれた。


 快調に光を撒き散らし、然程の時間も要することなく、暗闇を蹂躙し尽くした私とゼノワ。

 皆も互いの姿が確認でき、ようやっと人心地ついたような顔をしていた。心眼を通してもそれは伝わってくる。

 ソフィアさんじゃないけど、しばらくぶりの感覚にちょっと感慨を覚えちゃうね。

 ならば彼女に倣って、私もステータスウィンドウやマップウィンドウを展開してみよう。……うん。異常なく使用できることを確認。

 改めて、迷宮を脱出できたのだという実感を噛み締めることが出来た。


「やぁ……それにしても結構かかったね。迷宮攻略」

「そうだな。よもや十日以上も要するとは思わなかった」

「まぁでも、その甲斐はあった。でしょ?」


 クオさんの言に、皆して肯定の頷きを返す。特に私にとっては、ウェブデさんに遭遇するっていうとんでもイベントを経験したんだ。紛れもない大きな収穫だったと言えるだろう。

 皆も従来のそれとは一線を画すような、強力なスキルを得たみたいだしね。

 白のモノリス調査もこれにて一段落。正直ちょっと、気が抜けてしまいそうだ。

 しかし、そんな私へレッカが言う。


「それで、どうするのさ? エンドコンテンツのアクティベート……しちゃう? それとも一旦帰る?」


 そうだった。それが一番大事な話。皆も表情を引き締め直し、ふむと思案を始める。

 ウェブデさんの話によると、資格無き者にとって『虚ろなる塔』っていうエンドコンテンツは、毒にも薬にもならないらしい。つまり無害であると。

 その話を信じるのであれば、別に今すぐアクティベートしてしまっても問題は無いのだろう。

 ただ、本当に鵜呑みにしてしまって良いのか、というのは……ちょっとなんとも言えない所ではあるのだけど。


「確かこの白のモノリスと対になるキーオブジェクトは、『資格者の証』でしたよね?」

「そういえば、結局それって何処にあるのよ? 私たちが手に入れたのは、『篩の迷宮踏破証明書』……資格者の証ではないわね」

「似たようなものだし、それがキーオブジェクトってことで大丈夫なんじゃないぱわー?」

「また投げやりな……」

「ガウラ」

「でも、他に心当たりが無いのも事実」

「実際モノリスに捧げてみれば分かることですよ~」

「その場合、否応なくエンドコンテンツが開放される可能性があるな」

「何にせよ、少し心の準備をしたい所ではありますね……」


 意見交換の結果、皆の考えはおよそ一つにまとまったようだ。私もそれに異論はない。

 即ち、今日のところは一旦帰ることとし、エンドコンテンツの開放についてはまた日を改めて、と。


「まぁ、思いがけず長く家を空けてしまったからな……フゥちゃんも心配しているだろうし」

「私も、これ以上帰らないでいると、多分師匠たちが動き出す」

「そ、それは一大事ですね。ミコトさんこそ早く帰るべきです」

「ガウガウ!」

「話は決まったみたいね。ならバカ仮面、さっさと転移よ転移!」

「おっけー。みんなもそれで大丈夫?」


 異論は無く。各々より肯定の声が返ってきたことで、方針は確定した。

 ならば、帰る前に念話で一報入れておいたほうが良いだろう。相手はフゥちゃんで大丈夫かな?


『もしもしフゥちゃん? 聞こえるかな?』

『ふぁっ?! し、師匠!? ご無事だったのだ!?』

『うん、無事無事。今からみんなで帰るから』

『え、あ、ちょ』

『それじゃ、詳しい話はまた後で』


 至極簡潔に用件を伝えたなら、善は急げ。レッツ転移である。これまた久々となるワープのスキルを発動。

 皆を伴い、イクシス邸転移室へと飛ぶのだった。



 ★



 パッと背景素材でも差し替えたかの如く、瞬く間に視界の切り替わる独特の感覚。

 ワープポータルに触れたわけでもなく生じるその現象と、目に映る久方ぶりの光景。

 イクシス邸転移室。居心地よく整えられた、我らのたまり場。転移成功である。


 およそ十日ほども使われずにいた一室が、されどバッチリ暖房まで効いた状態で保たれている。

 ともすれば、今の今まで私たち以外に誰かこの部屋を使っていたんじゃないか、と勘ぐりたくもなるけれど。

 しかし特にそんな様子はなく。強いて言うなら、それこそフゥちゃんが使っているくらいのものだろうか。あとは使用人さんたちがお掃除してくれたり、照明や暖房の管理をしてくれたりとか。

 きっと私たちが何時戻ってきても良いように、って配慮してくれたんだろう。有難いことだ。


「はぁ~、帰ってきましたね~。流石に今回は疲れました~」

「この部屋を見ると、無性に安心しちゃうよね」

「娘とともに、長い外出から帰宅する喜び……うぅ、感慨深いな」

「ま、また母上はそういうことを言う……」

「あらあら、ふふ。今お茶を準備しますね」

「手伝う」

「実家のような安心感ぱわな!」


 早速思い思いにくつろぎ始める面々。いつもの光景に、何とも言えない安堵と暖かさを覚える私。

 すると、まったりし始めた私たちとは対象的に、何とも慌ただしい足音が遠くからドタバタと近づいてくるじゃないか。

 皆の視線が自然と扉の方へ吸い寄せられる。

 それから直ぐのこと。勢いよく開け放たれたそこから、真っ先に飛び込んできたのはやはりフゥちゃんで。


「おわぁぁぁ! ホントに帰ってきたのだぁぁ!! おかえりなさいなのだああああ!!」


 テンション高くそう叫んだ彼女は、ペットのワンちゃんよろしく元気に駆け寄ってきたのである。

 流石はチームミコバトのマスコット枠。素晴らしいムーブだ。

 と、そんなフゥちゃんにやや遅れて、執事さんや使用人さんたちがパタパタと駆けつけてきた。

 なんだか急に賑やかになったものだ。


「おお、おお……! よくぞご無事で……!!」


 皆して心底安堵したかのような顔をするものだから、大袈裟だと苦笑するイクシスさん。

 しかしながら、どうやら念話をはじめとしたへんてこスキルの共有が遮断されたことで、もしや私たちの身に何かあったのではないかと、大層心配したようだ。

 迷宮内では一部のスキルが制限を受けていたため、外部との繋がりも当然成立せず。

 結果として先日の、槍の骸戦の時のように、音信不通による安否不明状態に陥っていたってことだろう。

 同じ轍を踏んでしまったことに対しては、正直情けない限りなのだけど。

 かと言って、私たちにしても想定外の事態だったからね。何とも申開きに困るところではある。出来ることと言えば、平謝りくらいのものだろうか。


「ごめんねフゥちゃん。皆さんも。思いがけず連絡が取れない状態になっちゃって、ご心配をお掛けしました」


 スキルを提供している立場としては、頭を下げておくべきだろう。イクシスさんたちをおかしな場所に連れて行ったのも、他ならない私であるわけだしね。

 同様に工房組やクマちゃんにも一報入れて、謝罪と話せる範囲で事情の説明をしておかなくちゃ。

 ただ工房組はともかく、ギルドのグランドマスターであるクマちゃんに対しては、何を何処まで知らせて良いものか。それはイクシスさん辺りと要相談ってところだろうか。


 ヘコっと頭を下げる私と、ザワっとする執事さんたち。フゥちゃんもどう応えて良いか分からず、一人あわあわしている。

 すると、フォローするように口を開いたのはイクシスさんで。

「そうだな、すまない。皆には心配を掛けてしまった。想像以上に特殊なダンジョンへ潜っていたものでな……それで、そちらはどうだ。変わりはなかったか?」

 その様に留守の間のことを尋ねてみたなら、これと言って大きな事件は起こっていないとのこと。

 細々とした報告を挙げたならキリがないのだろうけれど、幸いにしてイクシスさんが家を空けていたせいでドエライことになってしまった! この落とし前どうつける気じゃい!! みたいな物騒な話に転がるようなこともなく。


「そも、遠く離れた皆様と連絡がついてしまう、という状態が異常なのです。無事にお戻りになられたのであれば、それに越したことはありません。ミコト様もお変わり無いようで何よりでした」


 という、有り難いコメントまでいただいてしまい、ほっと一安心である。

 イクシスさんはそのまま、執事さんたちとともに転移室をあとにし、残ったメンバーも各々ここからは自由時間である。

 早速あれこれと話を聞きたそうにしているフゥちゃん。彼女に付き合ってあげたい気持ちはあるのだけど、残念ながら私にも用事があるため、代理にレッカを差し出しておく。頑張れコミュ強。


 んで私はというと、工房やクマちゃんへの連絡……より、師匠たちへの顔見せを優先である。

 なにせ師匠兼、実質的な私の保護者様方だからね。

 ひょっとすると既に、何かしら行動を起こしている恐れすらある。一刻もはやく帰って、無事な姿を見せておきたいのだ。


「ってわけで、それじゃみんな、おつおつ!」

「ガウガウ!」

『あれ、もしかして念話復活してる!? ミコト!? ミコトは無事なの!?』

「あ、気づいたか……」


 転移直前になって、モチャコからの念話。どうやら彼女たちも共有しているスキルが復活したことに気づいたようだ。

 今から帰るとだけ伝え、私はゼノワを伴い転移を発動するのだった。

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