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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第九四三話 VSヴァルキリーナイト三

 たまに見かけるんだ。切り離されたはずの腕が、遠隔操作を受けて不意打ちを成功させる場面。フィクションでの話ではあるけど。

 いよいよ敵を追い詰めたー! って場面で、背後から心臓を一突き! バ、バカな!! ……みたいなやつ。私はそれが恐い。

 が故に、視界に捉えるは先程断ち切った、ヴァルキリーナイトの右腕。未だ落下を続けており、間もなく地面にぶつかろうという頃。


 それを私は、魔砲で焼いた。塵も残さず、ジュッと。こんがりどころの話ではなく、真っ黒焦げにとどまる状態でもない。跡形も無く、というやつだ。

 何気に喜ばしいのは、この高機動型最強装備なら、空中に於いても魔砲を高い出力でぶっ放せるという点。

 従来ならば地上で、副腕による支えを必要とするくらいの反動が掛かるところを、ブースターによる反動の打ち消しが成り、姿勢を崩すこと無く発射できるというわけだ。

 出来栄えに満足し、虚空より視線を切ったなら、直ぐ様彼女の本体を追いかける。今しがた蹴りつけ、アグネムちゃんたちの待つ闘技場の舞台へと叩き落としたヴァルキリーナイトのもとへ、私は急行した。


 地上に於いては、なんだか酷いことになっていた。

 闘技場の真ん中、仰向けに倒れるのは純白の騎士。右腕を失い、背中の翼はボロボロ。自慢の鎧だって既に原型を留めていない。

 そんな彼女へ馬乗りになって、凄まじい勢いで拳を振るうのは、金ピカの衣を纏うアグネムちゃんだ。

 少し離れた位置では、ご機嫌にスイレンさんが【英雄の調べ】をワンマンカルテットにて熱唱している。

 既に勝ち確BGM状態。ヴァルキリーナイトの、想像以上の頑丈さとタフさに決着までは至っていないものの、勝負は決したものと見ていいだろう。

 勿論、こういう「勝ったなガハハ!」って状態が、メタ読みで言うと一番危ういんだけどね。良くて取り逃がすパターン。悪くて誰かが犠牲になったり。最悪状況がひっくり返っての全滅ってこともあり得る。

 だから、こういう時にこそ注意を怠っちゃダメなんだ。……と、日頃から口を酸っぱくして言っているせいで、アグネムちゃんは手を緩める様子がない。仕留めきるつもりのようだ。


 すると、ほら見たことか。案の定アグネムちゃんの背後に魔力反応。光の剣が生成され。

 私はそれを、白枝でかき消した。サポートのお仕事である。消し飛ばした右腕が再生して襲ってくる、なんて事態にも備えているし、第三者の介入パターンにだってしっかり警戒している。

 その上での話、なのだけど。

 私はヴァルキリーナイトの傍らに降り立ち、彼女の息の根が止まる前にと、今一度声を掛けてみることにした。


「最後にもうい……」

 ドガン! バギン! グシャ!!

「…………」


 うん……アグネムちゃんが殴りつける音がデカすぎて、ちっとも声なんて届きやしない。しかも【ラピッドラッシュ】と【インファイト】のコンボが働いてるものだから、なんかもう……色々終わってるっていうか、手遅れっていうか……。

 そのように、一人なんとも居た堪れない気分を味わっていると、流石はアグネムちゃん。ヒャッハーして拳をぶん回していたにも拘らず、私の顔色に気づいたのかピタリと動きを止め。

「そういえばミコト様、さっきこいつに何か言ってましたよね。もしや止めを刺すのは待ったほうが良いですか!?」

 と、気を利かせてくれたのである。有り難い。有り難いけど、同時にそれはリスキーな選択でもあるため、一層注意を払いつつ。

 努めて慎重に頷きで肯定を示したなら、改めて虫の息であるヴァルキリーナイトへと問い掛けたのである。


「最後にもう一度だけ訊くけど。ヴァルキリーナイト、貴方は本当にモンスターなの? モンスターだとして、ただのボスモンスターだなんてことはないように思えるんだけど……もし言葉が分かるのなら、この迷宮について、エンドコンテンツについて、貴方という存在について……何かしら情報を残して逝ってくれないかな?」

「あ。そこは『命が惜しければー!』とかじゃないんですね。流石ですミコト様!」


 謎にヨイショするマウントポジションのアグネムちゃん。依然として歌い続けているスイレンさん。虫の息のヴァルキリーナイト。

 ……なんかえげつないシチュエーションだな。

 して、気になるヴァルキリーナイトからの返答はと言うと。

 彼女は力なく顔をこちらへ向け。されど、何か声らしい声を発することもなく。暫しの沈黙。

 痺れを切らしたのは、果たして。ゴッと、ヴァルキリーナイトの鳩尾に拳をねじ込んだ、アグネムちゃんであった。


「ミコト様が質問しているでしょう。何か答えなよ! 黙ってちゃわかんないってば!!」


 ひっ。なんか、彼女に新たな属性を見た気がする。ヴァイオレンスチックな……うん。敢えて触れないでおこう。

 頼もしさに過ぎるアグネムちゃんの拳が効いたからかは不明なれど、これにより確かに進展はあった。

 なんとヴァルキリーナイトの顔の前に、ポンとメッセージウィンドウが表示されたのである。

 すわまたも光による攻撃か! と一瞬警戒するも、どうやら無害であると判断。

 ああいや、それと判断するまで、数度ウィンドウを白枝で消しちゃったけども。脊髄反射的に。っていうか、ウィンドウって消せたのか。はたまた、このウィンドウが特殊だっただけか。


 何にせよ、どうやらヴァルキリーナイトは声を発することはしない、或いは出来ないらしい。

 その代わりに、メッセージウィンドウには文字が並んでおり、それは確かに意味のある言葉を形成していたのだ。


──────

お見事です。戦闘技術はもとより、スキルの練度、使用方法、装備の扱いから味方との連携に至るまで、全て合格基準を満たしていると判断。

おめでとう御座います。あなた達は『技の試練』をクリアしました。

この後出現するワープポータルより、次の試練へお進み下さい。

──────


 驚きに目を見開く私たち。やはりかと。やはりこいつが、メッセージウィンドウを用意していた張本人だったのか。

 はたまた、今この場の様子を見ていた迷宮の管理者が、ヴァルキリーナイトを庇うべく、ないしは話を前に進めるべく、とっさにメッセージウィンドウを出現させた可能性だって、否定は出来ないか。

 興味深い事象。是非もっと話を聞いてみたいところだ。ゴクリと生唾を飲んだ、その時である。

 アグネムちゃんの下敷きになっていたヴァルキリーナイトが、唐突に黒い塵へと還り、姿を消してしまったのだ。


 これもまた、驚くべき事態だ。まだ止めを刺してもいないモンスターが、自ずと黒い塵へ還ってしまう。そんな事態が、かつてあっただろうか。

 自死、というのであれば、絶対に無いとは言い切れない。でも、今のはそんな感じですらなかった。

 役目を終えて、退場した。印象としてはその様に感じられ、私たちは困惑に首を傾げそうになる。

 が、敵が姿を消したからと言って、油断しないのも私たち。もしやどこぞから奇襲を仕掛けてくるのではないかと、注意深く周囲に視線を巡らせたのである。


 けれど、数秒。生じた変化と言ったら、闘技場が自己修復により元の姿を取り戻したことと、予告通りワープポータルが出現した、という。それだけ。

 アグネムちゃんの馬乗りラッシュで、なかなかえげつない被害が出ていたからね。地面はガッツリ陥没していたし、石畳なんて見る影もなし。観客席にも少なくない被害が行くくらいには、えらいことになっていた。

 何なら割と近くで演奏を続けていたスイレンさんにこそ、ダメージが行ってそうなものだけども。しかしそこは熟練の後衛。巻き込まれにくい距離感や、自身のステータスだってきっちり把握しているため、怪我らしい怪我はしていない様子。


 急速に元の形を取り戻す闘技場。その修復作用に巻き込まれぬよう、慌てて立ち位置を変えながら注意を張り巡らせていると、舞台の中央部にぽつんと現れたのがワープポータルである。

 なんとも肩透かしを受けたような、拍子抜けに近い感想を懐きつつも、ともあれボス戦は本当に終わったらしいと、ようやっと認めるに至る私たち。

 ヴァルキリーナイト、確かに強敵ではあったのだけれど。しかし真の実力を封じ込めたままのフルボッコだったからね。激戦! ってほどの内容にはならなかった。

 本来であれば、攻撃の届きにくい上空で変身を終え、絶大な力を手にした彼女と激しい戦闘を繰り広げる流れだったのだろうけれど。

 あ、それで言えばあの謎のタフさ。もしかしたら本当は、変身後じゃないと倒せない系のモンスターだった可能性も……。

 まぁしかし、比較的安全に勝てたというのであれば、それに越したことはないだろう。

 ちょっとばかりアドリブもあったけど、概ね作戦通りに事を運べもした。素晴らしいことだ。


 ただ、思いつきによる私の行動は、二人に迷惑と危険を及ぼしてしまった。

 その点についてはしっかりと謝罪しておく。

 ワープポータルを眺めるアグネムちゃんとスイレンさんへ、頭を下げる私。

 結果として、最後にメッセージウィンドウが現れたり、ヴァルキリーナイトが勝手に塵に還ったりと、不可解なことは実際起こったわけだけど。それはそれ、結果論ってやつだ。

 有難いことに、彼女たちはあっさりと私の謝罪を受け入れてくれたけれど、同じ過ちは繰り返したくないものである。

 これが普段なら、念話で相談を持ちかけた上で行動していたのだけど。難儀なものだ。


 それにしても、不自然に発生したメッセージウィンドウを鑑みるに、やはりこの迷宮、ただのダンジョンではないらしい。

 リアルタイムに観察されているような、そんな不気味さが感じられた。

 ヴァルキリーナイトの正体についても、いまいち判然としなかったけど。結局どういった存在だったのか……それについてはまぁ、どれだけ考えても推測の域は出ないか。


 ともあれ、次なる道が示されたというのならば、進む他に選択肢はないのだろう。

 或いは、まだこのフィールドに隠されているチケットをコンプリートして、満足した上で次に進む! という択も無いわけではないけど。

 でも、それに二人を付き合わせるっていうのはどうなんだろう。流石にそれはプレイヤーのエゴってやつか。勝手な行動は慎むべし。

 何にせよ、先ずは二人と言葉と意見を交わすのが先決だろう。

 謝罪の件から幾らか重たくなった空気を、コホンと咳払いにて誤魔化しつつ、徐に口を開く私。


「……さて、どうしようか。とりあえず戦勝の打ち上げでもする?」

「いいですね~! 歌っちゃいますよー私~!」

「スイレンさんは今の今まで歌ってたじゃん。ちょっとは喉を休めたほうがいいんじゃない?」

「は! 歌い手の喉を労るだなんて~、アグネムちゃんいい所あるじゃないですか~!」

「……おぉぅ」


 ちょっとした軽口のつもりが、思いがけず打ち上げに乗り気なムード。まぁいいけどさ。

 とは言え、そこでちょっと困ったことに気づく。決戦仕様のスキルチョイスを行ったせいで、今はPTストレージが使えない状態なのだ。

 ボスを倒したのだから、全スキル解放されていたって良さそうなものを、残念ながらそうは問屋が卸さないらしい。

 つまり、打ち上げをするにも、マジックバッグに入っている物だけで行う必要があるわけだ。

 しかしまぁ、まだお腹が空くような時間でもないし。軽く祝杯を上げる程度なら問題はないのかな。流石にお酒なんて飲まないけどさ。私女児だし。冒険中だし。


 何にせよ、である。取り敢えずは、戦闘の邪魔になるからと置いてきた、マジックバッグやリュックなんかの荷物を取ってこなくちゃ話にもならない。

 三人して一度大扉を潜り、荷物の回収を行ったなら、再度ワープポータルの脇までやって来る。


「結局さっきの戦闘、身具一体の出番はなかったね。こんなことならPTストレージを残しておくべきだったかな……」

「まぁまぁミコトさん。勝てたんだからいいじゃないですか~。奴がパワーアップした場合への備えって考えれば、無意味なんてこともありませんでしたよー。それにPTストレージを外す前に、必要なものはマジックバッグに移しましたし~」

「そりゃそうだけどさ。余力を残しての勝利って、連戦フラグが立ちそうで嫌なんだよね……ヴァルキリーナイト、ホントに消えた? こっそり隠れてたりしない? 他の敵が突然襲いかかってくるとか……」

「流石ミコト様、これぞ『常在戦場の心得』というやつですね! 私も見習わなくちゃ!」

「そんなの疲れるだけですよ~。大丈夫大丈夫、もう敵なんて居ませんって~」

「変なフラグを立てようとするその口を閉じなさい!」

「お任せを!」

「ぎゃ~なにをすむぐぅ~!」


 ……結構騒いだけど、結局ボスのおかわりは発生しなかった。

 ワープポータルを横目にしながら、私たちは魔道具で生成したただの飲用水で乾杯し、労をねぎらい合うのだった。

 何せ次の試練へ移るということは、また離れ離れにされる可能性が否めないからね。

 この技の試練での振り返りを行ったり、次の試練への不安をぼやいてみたり。

 そんなこんなで気まぐれに始めた打ち上げは、思いがけず盛り上がりを見せたのである。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 ミコトが前話から突然対話しようとするから「ヴァルキリーさんまさかの仲間フラグ!?」とか一瞬思ったけど、全然そんなことはなかったぜ! まぁ腕一本ふっ飛んだ時点でそれはな…
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