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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第九四一話 VSヴァルキリーナイト

 ヴァルキリーナイトの主力スキルと思しきそれは、光の剣を生成し射出する、間合いを選ばない攻撃であることが判明した。

 厄介なのは生成位置に制限がないこと。そりゃ、指定した空間に別の物体が存在している場合などは、その限りではないかもだけど。

 ……いや、どうだろう。そうとも言い切れないところが恐いな。地面の中から飛び出してくる、なんて可能性も考えておいたほうが良いだろうか。

 内包する破壊力も絶大で、飛翔する速度も速く。非常に厄介であることは間違いない。

 謂わばリリの【万象ノ剣】みたいなものだ。属性を取り払い、威力と射出速度をもりもりに増加させた、みたいな。

 もし光の剣の生成サイズを自由に変更できるっていうんなら、視認も難しいような『小さな剣』には殊更に注意が必要なのではなかろうか。

 死角から心臓や脳をブスッとやられたら、それだけであっさりと死んでしまうもの。シャレにならない。


 ただ、幸いなことに。このヴァルキリーナイト、ビックリするほど生真面目というか、清廉潔白というか。

 如何にも曲がったことを嫌いそうな、そういう気質をひしひしと感じるのだ。だから、不意打ちのような真似は頼まれたって働かないんじゃないか、と。そんな気がしている。

 尤も、だからと言って警戒を怠って良い理由にはならないのだけど。所詮私が勝手に懐いている印象でしかないのだから。


 殊更注意したいのは、大扉の向こうで演奏しているスイレンさんと、飛び出すタイミングを窺っているアグネムちゃんだ。

 目には目を歯には歯を。コソコソしてるやつにはコソコソした攻撃をしてもいいじゃない!

 なんて理屈をぶつけられるとしたら、彼女らへ光の剣が襲い掛かっても何ら不思議ではない。

 アグネムちゃんが居れば、スイレンさんを護ってくれるとは思うのだけど。しかし今回の戦闘、本当なら前衛を彼女に任せ、私は補助に回る予定なのだ。

 つまりは、どうにかタイミングを作ってスイッチする必要があるわけで。

 けれどスキルの厄介さも然ることながら、剣の技量もべらぼうに高いヴァルキリーナイト。隙を作るって言ったって、簡単な話ではなさそうだ。


 などと、思案している間にも彼女による攻勢は続いており。無尽蔵かと疑いたくなるほどに、おびただしい数の光の剣がそこかしこに生成されては、切っ先をこちらへ向けて恐ろしい速度で突っ込んでくる。

 が、恐ろしい速度っていうんなら私だって負けやしない。そのための高機動型最強装備だもの。

 ブースターを巧みに操作し、縦横無尽かつ、不自然極まりない軌道にて光の剣の尽くを避けていく。

 さながら避けゲーである。回避って成功すると気持ちいいから好きなんだよね。


 避ければ避けるほど気分が上がり、集中力が増すのを感じる。余計な考え事が抜け落ちていって、思考が最適化されていくような。

 それに伴い、ブースターの扱いに対する理解も少しだけ深まっただろうか。思えばこの高機動型、しっかりと扱うための訓練時間ってほぼ取れないままここまで来ちゃったからね。

 それを思えば、これは願ってもない鍛錬チャンスなのでは……? ああ、ヤバい。スイッチ入っちゃう。スイッチはスイッチでも、今求められているのはアグネムちゃんと前衛を交代するためのスイッチだっていうのに。ああ、もう……辛抱堪らん!


 私を取り囲むよう、前後左右と言わず、上下に至るまで。光る剣が生成されては突っ込んでくる。それも、ひっきりなしに。

 常に体を動かし、ブースターを操作し、飛んできたものを避ける以前にエイムをずらす工夫も怠らない。

 されど、埒が明かないとはこのことか。避けても避けても光る剣は無くなるどころか、寧ろ数を増やして包囲網を分厚くしていくじゃないか。

 魔砲をぶっ放せば多分、突破口を開くことくらい簡単だとは思う。でも、そんな安直な選択で良いのか。他にこの状況を打破する手があるとするなら、それって一体どんな手だろう?

 相手も簡単に予想できるような手段で突破を図っても、先読みされている可能性は高いからね。出来るだけ意外な方法を取りたい。


 回避を繰り返しながら考え、そしてふと思った。

(そういえば以前ソフィアさんに、『魔法のコントロールを奪うスキル』なんてのも覚えさせられたんだっけ。今は使えないけど……あれって、スキルに頼らず自力で何とか出来ないかな?)

 基本的な話なのだけど。例えばヴァルキリーナイトが好きな座標に光の剣を生成するように、術者から離れた位置に魔法やスキルを展開するのって、普通の人にとっては至難の業なのだとか。

 それだけ、自身から遠ざかった位置での魔力の制御っていうのは困難で、術の制御も難しくなるようだ。


 ならこの光の剣、私が直接掴んで魔力を流し込んだら、私の制御下に置くことが可能になるのでは?

 それにもし思惑通りに行ったなら、多分術の分析も捗る。魔力のカタチも読み取れる。つまり……。

 迷宮を無事に脱したなら、このスキルをモノに出来るかもしれないってことだ。ソフィアさんもにっこり。

 まぁソフィアさんのことはどうでもいいけども。メリットが大きいっていうんなら、試さない手はないよね。


 私は今新たに生成された光の剣へ、即座に飛び掛かってはその柄を掴み取った。

 当然、こちらに無害だなんてことはなく。触れた端から消し炭にしてやろうという、破壊力をひしひしと感じてはいる。

 それを見越して、手のひらには予め柔軟な障壁を張って、接触面をガード。その上で、自身の魔力による剣の乗っ取りを試みる。


 先ずは光の剣全体に自身の魔力を浸透させて、術の分析から。

 反発は強く、剣全体をこちらの魔力で包んでみても、その形状を破綻させぬよう一旦留めておくのがやっとだった。

 私の良からぬ思惑を察したのだろう、ヴァルキリーナイトはこの剣を消し去りたいらしい。

 その消去命令を跳ね除け、かろうじて現状を維持する。なかなかどうして難易度は高く、どうしても意識が引っ張られる。とても大変。

 それでも、諦めない。


 光の剣を握った状態で回避を続けつつ、焦らずじっくり私の魔力を剣に染み込ませていく。

 魔力のカタチを調整し、相性のいい魔力を探り……見つけた。そこからは話が早い。浸透も速い。

 魔道具を扱っている経験が活きたためか、はたまたこれまでとてつもない数のスキルに触れてきたからか、術の構造に対する理解は思いの外スムーズに済み。

 故に、結論する。相性の良い魔力のカタチを記憶した今、乗っ取りは存外容易いと。さながらハッキングだ。

 名付けて『スキルハック』とでもしようか。他の術に対しても応用が利くかも知れない。帰ったらみんなに自慢してやろう。でも、ソフィアさんに知られたらうるさそうだし、やっぱり黙っておくべきか……まぁいいや。


 傍から見たら、きっと何てことはない。発生した光の剣を私が掴み、それを振るって飛来してきた剣を迎撃した。それだけの光景に過ぎないのだろう。

 もしかすると魔法やスキルに明るくない人からすると、「あ、その剣って掴めたんだ」程度のあっさりした感想で終わっちゃうかも知れない。

 見る人が見たら、なかなか高度かつ斬新なことをやっていると気づくはずだけど。果たしてアグネムちゃんたちは分かってくれるだろうか。


 思ったとおり、魔力のカタチを覚えたため、二度目以降の乗っ取り作業はスムーズになった。

 私は回避、乗っ取り、迎撃を繰り返し、気づけば両手に光の剣を握っては使い捨て、空中にて踊るように戯れ続けていた。

 そうしている中で、自然と気づいたことがある。どうやらヴァルキリーナイトより、私のほうが断然マルチタスクに於いては長けてるってことだ。

 だってもし私がヴァルキリーナイトの立場なら、一度に全ての光の剣を操って、一気に敵を押し潰しているところだもの。

 何なら隠れて演奏を続けているスイレンさんにも同時に攻撃を仕掛けてる。

 だというのに、ヴァルキリーナイトの操る剣は、精々が一度に十本前後。しかも直進しかしてこないし。

 それに、彼女の顔。じっと私の方を見たまま、その場に棒立ちっていう。多分他のことに気が回らなくなってるんだ。

 光の剣を大量に維持したまま、減った側から補充したり、逃げ道を塞ぐために障害物として配置したり、その中の数本を使って攻撃を行ったり。

 ヴァルキリーナイトにとっては、それがやっとってことなんだろう。それで手一杯。難儀なことじゃないか。


 まして、私がスキルハックを披露したことにより、ますます彼女の目はこちらに釘付け。好都合だった。

 するとこれみよがしに、大扉の奥から飛び出した小さな影が一つ。そう、言わずもがなのアグネムちゃんである。

 時流の調べの効果により、僅かに反応の遅れるヴァルキリーナイト。その間に一気に距離を詰め、拳を叩き込まんとするアグネムちゃん。

 だが、そこは流石と評するべきか。私を囲っていた光の剣は一斉に消え去り、残ったのは私が両手に握っている物のみ。

 意識を迫るアグネムちゃんへと切り替え、迎え撃たんと得物を振るった。ご丁寧なことに、剣には白い輝きが灯っており、あたかもリリの魔法剣みたいじゃないか。或いは魔法剣そのものなのかも知れないが。


 対するアグネムちゃん。まともに受けてはマズいと直感した彼女は、ヴァルキリーナイトの袈裟斬りを紙一重で躱し。

 お返しにと負荷魔法【ローディング】の乗った拳を叩きつけんとした。が、相手の体捌きもまた尋常ならざるもの。

 拳の軌道を読み切り、半身になって避けたのだ。間髪入れず次の拳が繰り出されるも、バックステップでアグネムちゃんの間合いを抜け出すヴァルキリーナイト。

 同時、アグネムちゃんを囲むように生成された五本の光の剣。直撃すれば大怪我は疎か、HPが根こそぎ削られても不思議ではない。

 だが、それをさせないことこそが、この戦闘に於ける私の本来の役割だ。


 彼女らの攻防が交わされる間に距離を詰め、アグネムちゃんを襲おうとした光の剣のうち二本は手持ちの分で相殺。

 残り三本は新しくハックして回収した。そのうち一本をヴァルキリーナイトへ向けて射出。おまけに白枝を伸ばす。

 するとどうだ。彼女と私たちを遮るよう、突如生じたのは光の盾。どうやら生成できるのは剣だけではなかったらしい。

 光の剣は盾に弾かれたが、白枝は深く食い込んだ。しかし、そこで勢いの止まった白枝。


 半ば消滅しかけた光の盾。それを斬り裂くよう、巨大な光の刃が盾の向こうから振り下ろされる。

 防御しつつこちらの視界を遮ってからの大技。なかなかテクニカルじゃないか。

 予測できる軌道上には私とアグネムちゃん。呆けていたら、真っ二つにされかねない。そうはさせじと、私はアグネムちゃんを抱えてその場を退いた。

 すると光の刃は勢いよく地面に激突するなり、凄まじい衝撃波を周囲に撒き散らし。

 きっと生半可な回避では巻き込まれていたに違いない。抱えているアグネムちゃん共々、つい表情が引き攣ってしまう。


 そんな私たちの視線の先。たった一撃で闘技場の床をメチャクチャにしたヴァルキリーナイトは、既に次なる一手を打っており。

 鋭く射出したのは、数本からなる光の剣。向かう先は、大扉の向こう。つまりはスイレンさんを狙ってのものだ。

 卑怯だなどとは言うまい。彼女も演奏スキルでこの戦闘に加担しているのだ。狙われたとて何もおかしなことはない。


 反射的にアグネムちゃんを解放した私は、ブーストとステップを駆使して射線上へと割り込み、魔砲を発射。

 あわよくば光の剣を放ってきた彼女も、諸共に焼いてやろうという魂胆だったが。しかし。

 魔砲により消し飛ばしたのは、残念ながら光の剣のみ。彼女の姿は既に射線の上には無く。

 その時には既に、アグネムちゃんへ向けて得物を繰り出していたのである。


 ヴァルキリーナイトとアグネムちゃんによる、激しい攻防が繰り広げられる。

 アグネムちゃんの拳に何かを感じ取ったのだろう。触れるべきではないとして、絶妙な間合いから剣を振るうヴァルキリーナイト。

 一方でアグネムちゃん。あわよくば得物にさえローディングを掛けてやろうと狙っている様子。器用に攻撃を捌きながら、間隙を縫うようにして拳を繰り出している。

 が、しかし。なかなかどうして互いに有効打が出ない。見ていてハラハラするような、命懸けの攻防である。

 喩えるならそれは、ナイフを構えた軍人さん同士が、至近距離でやりあっているような、そんな洋画のワンシーンを想起させ。正直、見ていておっかないやら焦れったいやら。


 するとここで、いよいよ大扉を潜り姿を見せたスイレンさん。

 彼女もアグネムちゃんの奮闘にソワソワして、居ても立ってもいられない様子。

 結果として私たちは、どちらからともなく移動を始め。


 大回りするようコソコソと立ち位置を変えて。

 攻撃を仕掛けるでもなく、やってきたのはヴァルキリーナイトの背後。距離は三〇メートルほどもあるけれど。

 それをじわりじわりと詰めていき、徐々に圧をかけていく。

 アグネムちゃんとの攻防に忙しく、振り向く余裕のないヴァルキリーナイト。かと言って、背後の敵を放置するわけにもいかないだろう。

 どのタイミングで排除するのか。どうやってこの状況を破るのか。選択を迫ることで、彼女に窮屈を強いる。

 ヴァルキリーナイトとの戦いは続く。

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