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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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1808/1813

第一八〇八話 VS ライバル 一二

『それではミコトさん、お願いします!』

『了解。オルカとの融合を解除、そして……【2P操作】再発動!』


 ソフィアのライバル個体を仕留めるための作戦。その始動に伴い、彼女たちが最初に行ったのはオルカとの2P操作を解除し、融合対象をソフィアへと変更した上での再使用だった。

 これにより、オルカはミコトと分離。無事に自らの肉体を取り戻す。

 2P操作の反動により、大きな疲労こそ感じるものの、とは言え短時間の融合だったことに加え、スキルレベルが上昇していることもあり、手足を動かすのも億劫になるほど大きな疲れではなく。なればこそオルカはすぐに戦線へ加わったし、ミコトは転移でソフィアの元へと向かった。

 そして行使されたのが、再びの2P操作だ。


 ソフィアの身体はたちまち粒子状に変じ、ミコトへと溶けるように吸い込まれていく。そうして彼女から肉体の操作権限を一時的に貸与されたなら、スキルは正常に稼働したと判じて良いだろう。

 身体へソフィアを宿したことにより、ミコトの纏う雰囲気と髪色がまたも変化。ヘルメットの下に収まる頭髪はプラチナブロンドへ変じ、更におまけとばかり、その耳はエルフさながらに長く尖ってみせる。

 そして当然、感じ取ったのは最強装備を身にまとうがゆえの違和感だ。


『……重心を後ろに持っていかれそうです。よくこんな装備で戦えるものですね』

『慣れだよ。あとは相性かな……てか、私専用に開発されたものだしね。使いやすいのは当然。ってそんなことより、魔術編めそう?』

『ええ、ご安心を。すぐに取り掛かります。ミコトさんにもお手伝いしてもらいますから、そのつもりで』

『あ、はい……そう言えば以前もあったっけね、融合して魔術を使用する場面ってのが』

『そうでしたね。初めてでないのですから、しっかり頼らせていただきますよ。そのためのプランも既に組んであります』

『お、お手柔らかに……』


 二人の融合が成ったのを見て取って、作戦は本格始動と相成った。

 まずは妨害班によるホールドを成功させること。これが無くては始まらないわけだけれど。

 とは言え、巨山の繰り出してくる雨あられが如き魔法の数々。そのうちのどれか一つを雑に阻止したところで効果は薄い。

 阻止すべきは、不発によりライバルの動揺を誘えるくらい、強力な一発。それを待ち受ける必要があった。

 ゆえに前衛及び中衛組は、これまで同様に猛威の嵐を掻い潜りながら、点々と攻撃を繰り出し奴の鳩尾を狙う、という立ち回りを続けることになる。

 だがこれまでと違っているのは、ソフィアがいよいよ「魔術」の準備に取り掛かった点にあり。


 ここまでは後方からの火力支援として、魔法を繰り出し攻撃に加わっていた彼女。

 それがミコトと融合し、最後の一撃として十分な威力の一発を準備し始めたとあって、巨山はその阻止にも意識を割く必要が出てきた。

 しかし、ライバルがソフィアへ意識を向けたなら、その隙に元気よく襲いかかってくるのがその他の戦力であり。結果鳩尾に痛みを覚える事となる。

 また、ミコトに宿ったソフィアは依然としてクラウの庇護下にあり、魔術を失敗させんと繰り出されるあらゆる妨害は、クラウの盾が見事に打ち払っていった。


『邪魔はさせん……絶対に!』


 核を隠した鳩尾を、執拗に狙う小さき者たち。それらに煩わされ、思うようにソフィアを攻撃できないでいる。

 だが、ライバルの意識は確実にソフィアを警戒しており。このことに、ミコトはきらり心の目を光らせた。


『仮に2P操作状態での攻撃はトドメになり得ないっていうんなら、あんなに融合状態の私たちを警戒したりはしない気がする。つまり……』

『我々の一撃は、奴の命に届き得る、というわけですね。素晴らしい、ますます気合が入ります』


 二人のやり取りは念話を介し、皆にも届いており。チームミコバトの士気はさらに一段階引き上がった。うっかり闘気が漏れないよう抑え込むのに苦労するほどだ。

 そのように彼女たちが勢いづけば、不思議と劣勢へ追いやられているような気分になるのが巨山側だ。

 依然として変わらず、変わりようもなく聳える、体格差、スケール差、質量差という絶対的なアドバンテージ。その身に巡る魔力の量とて絶大で、気圧される必要などどこにもない。そのはずなのだ。

 ゆえにこそ、不思議。彼女たちの気迫は、ライバルに確かな焦りをもたらしていた。


 だからだろう。大技を選んだのは。

 まるで弱気な己を否定するかのように、力技を選んだのは。

 嵐のごとく巻き起こっていた魔法の数々が、突如鳴りを潜める。

 代わり、怖気立つほどの魔力が練り上げられ、一つの術を構成せんと始動した。

 それは先ほど見せた、天災が如き荒々しいものではなく。今度こそ綿密に練り上げられた、美しい術。

 ミコトの皮を被ったソフィアも、これには堪らず口角が上がる。


『そうです! それが見たかった!!』

『ああ、そうだな。それが見たかった!!』


 乗じたのはイクシス。されども言葉に込められた意味はまるで異なっており。

 孕んだ意味合いは「合図」。そう、妨害班がアクションを起こすための号令だ。

 瞬間、繰り出されたるはチームワーク。息を揃えたように自らをPTストレージへしまい込む妨害班の面々。

 彼女らは直ぐ様、巨山の懐へと取り出され疑似転移。直の接触を果たすことになった。

 何のために? 決まっている。ライバルの魔力に「ホールドパーツ」を噛ませるためだ。


 巨大なるライバルの体内に大河が如く流れる魔力の一筋。紡がれんとしている大魔法の、支柱をなすうちの一本。それを素早く見出して、妨害班の五人は息を合わせて魔力のカタチを阻害しに掛かる。

 カタチそのものを大きく歪める、という方法も確かにある。が、今回のそれはもっと簡単な手法。「ホールド」の効果を持つ魔力のカタチ、すなわちパーツは特殊であり。他のパーツへと触れさせることにより、対象魔力をホールド状態として一時的に停止させる効果を有している。

 この特性を利用し、妨害班は外部からホールドパーツを巨山内部へ無理やり打ち込み、大魔法を構成する一部の要素に不具合を生じさせようという算段を実行しているわけだ。

 だが、いかんせんライバル個体の魔力は膨大であり、その中のほんの一部を停止させることすら簡単ではない。まして相手は他でもない、ソフィアのライバルだ。魔力制御や魔法抵抗力には非常に長けており、ホールドを成功させることは生半可な力では能わない。

 なればこそ、リリエラ、レッカ、クオ、ゼノワ、そしてオルカの五名は士気高く息を合わせ、力を束ねた。

 何もホールドしたまま何時間も耐えろというわけではない。術を失敗させるだけなら、ほんの数秒もホールドしていれば十分。そのためにこそ、全力を振り絞った。


『『うぉぉおおおおおおおおおおおお!!』』


 バキンッ!!

 幻聴か、はたまた本当に音を伴ったのか。少なくともホールドを試みた彼女たちには、確かな手応えとなってそれはしっかりと感じられた。ホールドパーツの干渉により、魔力の一部が突然凍りついたかの如く動きを停止したのである。

 これには思わずギョッとした様子を見せるライバル。そのリアクションすら、圧倒的な質力がゆえか緩慢であり。きっと脳みそから体の末端へ命令が駆け抜け、そのとおりに身体が稼働するのに大きなラグが生じているからなのだろう。

 だが、巨山が術の不成立を悟り、驚き戸惑ったというのならば成功だ。この機を逃してなるものかと、力を溜めた彼女たちが、一斉に動き出す。

 そう、アタック班である。


『今だ! 叩き込めぇぇええええ!!』

『『だぁぁあああああああ!!』』


 狙いは一点。今も確かな輝きを放って見える、巨山が鳩尾の奥深く。ライバルの核。

 そこへの道を阻む肉の壁を、排除しトドメを誘うために。

 アタック班の面々は、一人ひとりが最大最適の技を持ち寄り、繰り出し、大いなる破壊を打ち付けた。

 無論、支援班によるバフはここに来て、最大の追い風を吹かせており。

 巨山を揺るがす程の衝撃が、幾重にも轟いた。

 彼女らに続けと、妨害班もそこへ加わって火力を次々に放り込んでいく。


 例えばこれが普通の巨山であったなら。チームミコバトの火力を総動員することで、容易く吹き飛ばすことが出来ただろう。何せ質量の化け物とは言えども、所詮は岩と土の塊でしかないのだ。手に負えない理由がない。

 が、相手はモンスターであり、その身には底なしと言えるだけの魔力を宿している。

 なればこそ、これだけの攻撃を受けて尚、核を僅かに露出させる程度がやっとであり。

 だが、作戦がうまく嵌まればこそ、ここまでのことを成せたとも言える。

 だから。


『お待たせしました、皆さん』


 お膳立ては、この上を望むべくもなく。

 得意技にして秘奥。魔の術理を複雑怪奇に編んで、織って。

 組み上げたるは終わりを告げるための魔術。


『あとは我々にお任せを』


 ミコトの身体を駆るソフィアが、幕を下ろしにとうとう舞台へ上がった。

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