表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1805/1811

第一八〇五話 VS ライバル 九

 譬えばそれは、霞を爆弾で吹き飛ばしたように。

 一面に蔓延った炎の泉を、ほんの刹那のうちに消し飛ばしてしまった。

 それを成したのはクラウの盾スキル。その様たるや、さながらカタルシスの体現者、とでも言おうか。

 盾に伸し掛かった途方もない重圧を受けきり、何倍もの力で跳ね返してしまうという極めて単純にして、恐ろしく強力なスキル。

 ソフィアのライバルが、敢えて形の曖昧な魔力そのものを束ね、大瀑布が如く叩きつけようとしたのも、言ってしまえばシンプルなものを大きな力で動かそうとした、という大胆な試みであり。

 それで言うのなら、クラウのカウンターはある意味において意趣返したり得たのかも知れない。


 これにより、確定したのは彼女たち五人の、延いてはチームミコバトの生存である。

 感慨に浸る暇すら惜しみ、取り出したるはPTストレージに避難していた他のメンバーたち。

 そうして戦場へと帰還を果たした九名は、一人の例外もなく絶句を強いられた。


 当然である。何せ、一四人を中心としたこの場だけが孤島のように無事を保ち。その周囲は見渡す限りが煮えたぎる床へと変質を果たしていたのだから。

 それほどまでの天変地異。どこまでの凄まじさだったのか、時間の干渉すら受けないストレージという絶対のセーフティエリアにてやり過ごした彼女たちには、及びもつかないことだろう。

 だが、今はそこに驚嘆、戦慄、或いは賞賛を送っている暇すらも惜しく。

 言い換えるのなら、窮地を脱したこの好機。これを無駄にすることなく、最大限に活かすことこそが何よりの褒美になり得るのだと。そのように誰もが理解していればこそ、行動は早かった。


『行くぞ。反撃だ!!』

『『応!!』』


 流石に消耗を見せる愛娘を心底誇らしく感じながら、勇ましく号令するイクシス。

 生存組の踏ん張りを察し、大きく指揮を向上させた復帰組は、力強く返事を発し。

 そうして見上ぐるは打倒すべき大敵。

 が、そこで瞠目する。


『って、想像以上にダメージ受けてるわね!』

『ガウラ!』

『何があったパワ!?』

『術の暴発が、予想以上に効いたみたい……!』


 先ず驚いたのは、ライバルの位置だ。文字通り山のような巨体が元いた場所から大きく動いていれば、ついさっきまでそこにあったはずの山が、少し目を離した隙に移動していた、というような激しく奇妙な感覚を覚えるもので。これには彼女たちも面食らってしまう。

 だがそれより何より、見て分かるほどライバルが損傷している様子に目を白黒させた。

 と同時、アレがそこまでのダメージを負いながら、あんなにも遠くへ吹き飛ばされた、その衝撃たるや如何程だったのかと。そしてクラウたちは、よくもそんなものから生き延びたものだと、改めて戦慄する面々。

 もっと言うのであれば、周囲の地面も未だ余韻を強く残しているのだ。

 全長数千メートル級の、バカげた巨体。それが吹き飛ばされ、地面に衝突した。それだけでも、甚大な被害が出ることは想像に難くなく。実際この空間に等間隔に配置された巨大な柱は、その尽くが見事にへし折れており。間接的に余波の凄まじさを伝えていた。が、それより何より未だ波打つ地面である。

 あまりの熱に融解した床は、ライバルの倒れ込んだ衝撃の煽りを受け、津波が如くクラウたち五人へと襲い掛かった。無論、足元は冗談のように激しく揺れ、その場に留まるのにすら必死だったわけだが。

 そんな壮絶な環境の中を、今に至るまで生き長らえてみせたというのである。


『あんたたち、よく生きてたわね……』


 思わずと言った調子で、リリエラがつぶやきを念話に乗せる。これには復帰組の全員が深く同感した。

 だが、それで時間を無駄にするわけにも行かない。


『で、どうやってとどめを刺しましょうか』


 話を戻したのは、ソフィアだった。当然である。何せこれまでの法則に鑑みれば、あのライバル個体にとどめを刺すことが出来るのは他でもない、ソフィアだけということになるのだから。

 ソフィアと言えば、鏡花水月のフィニッシャー担当。溜め時間は長いけれど、その分絶大な威力の魔術を繰り出すことが出来る、というのが彼女の強みであり。

 あの巨体へとどめを刺すという役目を担うのならば、きっとソフィア以上の適任はいないだろう。そういう意味でも、最後にソフィアのライバル個体を残した、という選択は正解だったのかも知れない。


 が、では具体的にどういった段取りで決着へ持っていこうか、という話し合いについては、実のところ不十分であり。

 いかんせん、唐突に魔力災害級の暴挙に出たのが彼女のライバルなのだ。そこから如何に生き延びるか、という会議と実践だけでやっと。その先の反撃内容については、随分と曖昧なままここまで来てしまっていた。あとは野となれ山となれ、というやつだ。

 しかしながら、闇雲に突っ込んだところで決定打を生み出すことが難しい、というのは分かりきっていること。

 奴が立て直す前に次の手を打たなければならない、という焦りこそあれども、冷静な意見交換を怠っては却って勝機が遠退いてしまう、という確信もあり。皆の表情は直ぐに驚きから持ち直し、真剣なものへと転じたのだった。


『狙うべきなのは、やっぱり核だと思う』

『それはそう』

『あの巨体にチクチクダメージを与えて体力を削り切る、というのは確かに現実的ではないな……』

『となると、核の場所を特定する必要があるわけですが』


 モンスターの核が、身体の何処に収まっているか。

 改めてライバルの巨体を遠くに見上げ、皆の表情に苦みが走った。

 通常のモンスターですら、それの在り処は悟られないよう隠したり、或いは悟られたところで破壊できないよう守りを固めていたりするもので。

 それならあの巨山が如きモンスターは、一体どのくらいの大きさの核を、身体の何処に、どのように隠し守っているものかと。それは如何にも、考えるだに頭の痛くなるような問題であった。


『核の特定と言えばオルカよね。どうなの、視えないの?』

『……ごめん、身体が大きいせいか、抵抗力や隠蔽力が高いのか、自己強化なしだと見つけ切れない』

『かと言って、自己強化を行えば向こうがどう対抗してくるか分からない、か』

『グルゥ……』


 チームミコバトに於いて、オルカの担う役割というのは主に三つある。

 一つは斥候。罠を見抜き、排除し、安全なルートを確保する他、素早く敵を見つけ出し仲間に情報を共有することで、常に先制攻撃の権利を握ることが出来るというもの。

 一つは撹乱。戦闘に於いてはその神出鬼没ぶりから、敵の注意を乱すことで味方の攻撃チャンスを巧みに作り出し、戦況を優位に運ばせるテクニカルな立ち回りが彼女の持ち味と言えた。

 そしてもう一つが、「弱点看破」だ。モンスターの核が何処に隠されているかを見抜き、味方に情報を与え、効率的に致命傷を演出することが出来る。

 チーム内では「対人戦無敵」だなんて称号で知られる彼女ではあるけれど、対モンスター戦においてもある意味死神が如き働きを担っていたりする……のだが。

 しかし今回に限っては、その働きが十分に出来ていないようだ。自己強化を制限されている、というのもあるだろう。そして相手が強大すぎるというのも大きな理由だ。或いは巨大すぎるせいかも知れない。

 今のオルカに、ライバルの核は捉えられないでいた。


『じゃあどうするパワ? 奴をもっと弱らせれば視えてくるパワ?』

『可能性はあるかも知れないが、厳しいところだな……』

『いっそ当てずっぽうで、一点集中攻撃、とかですかね~?』

『それも選択肢の一つではある、かな』


 ソフィアのライバルが体勢を立て直すまで、あとどれ程の猶予があるとも知れず。自ずと焦りは募っていく。

 さりとて闇雲に攻撃をしたとて、然程の効果があるわけでもない。

 こうなったらやはり、地道に攻め続ける他にないのかと。皆が腹を括ろうとした、その時である。


『私に、いい考えがある』

『『!?』』


 先程も聞いたようなことを言い出す声が一つ。

 今回それを発したのは、他でもない……オルカだった。

 皆が何事かと念話に耳を傾ける中、彼女は静かにこう続けたのである。


『ミコト、私に……身体を貸して』

『ふぇ!?』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ