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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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1803/1811

第一八〇三話 VS ライバル 七

 結局のところ、魔力とは一体何なのか。

 諸説はあれども、誰も確たる事は分からずに。それでもこの世界に根付き、便利に使われている不思議な力。

 で、あるならば。そんな魔力でどこまでのことが出来るのか。途方も無いほどの、膨大な魔力を集めたとして。それを用いればどこまでの奇跡を起こし得るのだろうか。

 チームミコバトの見上げる先、そこで展開されているのは、そうした疑問に対する一つのアンサーであると言えるのかも知れない。


『これが……っ、ここまでのことが……破綻をきたすことなく、形になっている……ああ、何と素晴らしい……!!』

『ちょ、言ってる場合じゃないのです! ソフィアさん!』

『とにかく阻止だ阻止! 絶対に撃たせるな!!』


 魔力災害、というものがある。

 この世界の大気中にも魔力は含まれており。であるならば当然、魔力濃度という概念も存在していた。

 大気や大地、水などに含まれる魔力の濃度には差があり、それが濃ければ濃いほどに、予期しない形で魔法に類する現象が発生する場合がある。大規模なものになれば、それこそ災いめいており。そうした現象を指して、「魔力災害」と呼ぶ。

 ソフィアのライバルが引き起こしているそれは、そんな魔力災害すらも比にならない、誰かが世界をリセットするためのスイッチでも押してしまったかのような、そうした規模の絶対的な現象のように思えてならなかった。


 魔力災害の種類は多岐にわたる。

 例えば一般的な、嵐や地震、火山の噴火や津波など、いわゆる自然災害と結びつくこともあれば、もっと奇妙な、悪夢の中にでも迷い込んだような現象が生じたり、或いはモンスターに影響を及ぼすなどの間接的な形で表れたりもする。

 なら、ソフィアのライバルが起こそうとしているその魔力災害とは如何なるものか、と言えば。

 それは元来、直接的な被害を及ぼしにくい、純粋な魔力濃度そのものによる暴力。モンスターの姿形、凶暴性を変質させたり、時には人の体調に影響を及ぼす。ある意味厄介で恐ろしく、けれど言ってしまえば「その程度」でしかない。そんな、直接的被害が殆ど発生しない災害だった。


 が、ソフィアのライバルが操るそれは、規格が違う。

 譬えるなら、霧。或いは湿度。空気中に含まれる水分がいくら高かろうとも、それで人が溺れることなど無いように。本来であれば稀に体調を崩す者がいる程度でしかない、些細な災害。けれど空気中に含まれる水分量が上限を突き破ることで、水と化すように。

 ライバルの手により意図的に圧縮され、濃縮されたそれは、もはや霧や湿度の次元を超越。水に等しい、もしくはそれ以上の濃度を帯び、チームミコバトへ降り注がんとしていた。


 これほどの術を破綻なく、とソフィアは評価したけれど。裏を返すならばきっと、これがやっとだったのだろう。

 魔力そのものを直接ぶつけるような攻撃は、確かに存在する。いわゆる「無属性魔法」も、それに類すると言えばそのとおりだが。しかし今回のコレはもっと純粋だ。

 全くとまでは言わずとも、ほぼほぼ魔力が特定の現象へ変換されていない状態。それを保った上での術理である。

 もしもこれだけの魔力量に、何らかの現象を形取らせてしまえば、それこそコントロールは不可能も同然。然しものライバルとて制御を手放す他になかっただろう。

 ミコトたちが言うところの、「カタチ」を持たない魔力。敢えてそれを維持したまま扱うことにより、制御しやすくしているというのが実情であった。


 ……と、いうようなことを念話上で解説するソフィア。

 これを聞き、すかさず当然の思いつきが飛ぶ。


『だったら、あの魔力に干渉して何らかのカタチを与えてやれば良いんじゃないかしら!』 

『たしかに。そうすればコントロールが乱れ、術は失敗に終わるのでは?』

『ええ、術を失敗させる、というだけならばそれで良いかも知れませんね。ですが……』

『ひょっとして大爆発……とかしちゃうパワ?』

『しちゃうだろうな……』

『グルゥ……』

『あれだけの莫大な魔力が制御を失った場合、何が起こるか』

『か、考えたくもありません~!』


 既に山のような巨体へ元気いっぱい殴りかかり、そしてその徒労感を嫌と言うほど味わい終えた面々。

 ならばこの窮地をどのように脱したものか、と論じているわけだけれど。

 下手に刺激を加えて術を失敗させてしまえば、却って予期しない大事故にも発展しかねないと。そんな事実に直面し、途方に暮れかけていた。

 が、かと言って真正面から受けて立つというわけにも行くまい。

 なにせここまで度が過ぎた魔力の塊である。まともに触れては、どんな悪影響が出るか、誰にも予測が出来ないような状況であり。

 さながら進むも地獄、戻るも地獄といった有り様。


『ミコトの転移で遠くに一旦避難するってのはダメなのぜぇ?』

『距離を取れば、それこそ向こうの得意な距離だと思う』

『それならミコト様の「トッツォくん」は?』

『ダメージは確かに期待できるけど、術の暴発は免れないかな』

『つまり、八方塞がりってやつなのです……?』


 流石に一撃で殺されるつもりこそ無いけれど、それでも状況の悪さに、誰もが表情を曇らせる。

 そんな曇天渦巻く戦場に、ふと一石を投げ込む者があった。


『ふむ。それなら、私に良い考えがある!』


 クラウだった。

 良い考えがある! と自信ありげに主張が成され、本当に良い考えが出てくるかどうかは怪しいところ。ゆえに若干の不安を覚える面々なれど。とは言え他に良策がないというのも事実であり。聞くだけは聞くべきだ、というのが総意となった。

 これを受け、早速クラウは語りだす。


『確かにアレをぶつけられては堪らないが、暴走の余波であれば、私の盾で耐え切ることが出来る気がするんだ。ゆえに、奴が集めている魔力に干渉し、敢えて術を暴発させる。その後皆はPTストレージへ避難し、私が余波を受け切る。そうしてアレをやり過ごした後、一気に反撃へ打って出る、というのはどうだ! 予期せぬ暴発であるならば、奴自身にも相応のダメージが入るだろう!』

『ダメだ、危険すぎる!!』

『そ、即答……!』


 クラウの考えに対し、真っ先に反発を示したのは他でもない、彼女の母親であるイクシスだ。

 彼女は過去、盾役を務めていた最愛の人を、目の前で喪うという辛い経験を踏んでいる。万が一愛娘までもが盾を構えたまま命を落とすようなことになっては、きっと今度こそ耐えられないだろう。ゆえにこその反発。拒絶反応と言い換えてもいい。

 そしてそんなイクシスのバックボーンを、仲間たちは知っていた。ことさら、サラステラはイクシス共々守護され、命を拾った立場にある。なればこそ、イクシスを嗜めるようなことも出来るわけがなく。

 クラウの「良い考え」は、あえなく没案として流されようとした。が。


『危険でない攻撃などあるものか! だからこそ私が、盾を構えようというんだ』

『!』

『母上の懸念も分かる。だがこの戦い、ただ逃げ回るだけでも、守るだけでも勝てはしない。だから要を分けようと言うんだ。私がここを耐え、そして勝利するための「反撃」を、母上に……皆に託したい』

『クラウ……!』

『だから守りは、私に任せろ!! それが我々、チームの戦い方だ! そうだろう!?』


 他でもないクラウによる、強烈な主張。頑とした食い下がり。

 これはあくまで、勝利を得るための防御であるのだと。命と引換えに皆を守護しようだとか、そういう類のトレードではない。この先を見据えた、確かな戦術の一環であると。

 チームだからこそ出来る立ち回り。攻撃を託せる仲間が居ればこそ可能な、完全ガードスタイル。

 叩きつけるかの如き、率直でストレートな信頼だ。

 それでいて挑戦状のようでもある。

 私ならば生き延びてみせるという大いなる自信。お前たちはどうだと。奴を仕留めるだけの力を持っていないのかと。

 これに応じずして、何が仲間だろうか。

 ジリリ、堪らず皆の心に熱が湧く。


『……言うように、なったじゃないか……!』

『先輩。やるパワ!』

『ああ。娘にここまで言わせたんだ、腹を括るさ……っ!!』


 葛藤は刹那。躊躇も二の足も迷いすら、勝機を貶める愚行と知っていればこそ、イクシスは即座に考えを改めた。

 そして仲間たち。クラウの宣言に、やる気を漲らせぬものなど居ようはずもなく。


『魔力への干渉なら私の十八番かな!』

『私も負けませんよ。むしろ手本を見せてあげましょう』


 際立って張り切ったのは、魔力操作に秀でたミコト、そしてソフィアの二人だった。彼女たちはクラウと同じ、鏡花水月のPTメンバーということもあり、やる気の程もひとしお。

 さながら大地を飲み込む巨大な竜巻にでも挑みかかるかの如く、うねる莫大な魔力へと猛烈な勢いで干渉を開始した。

 そして、これに負けじと仲間たちもまた動き出す。


 実際にやることはと言えば、技の試練にて嫌と言うほどに練習を重ねた、魔力のカタチを操作するというアプローチだ。

 皆で示し合わせ、特定のカタチを目指す。

 いくらライバルの肉体が巨山ほどもあったところで、それに比例しないのが「魔力制御」という項目だ。

 巨大な出力を操るだけの、器は確かに持ち合わせているのだろう。だが、それをコントロールするための中枢には、どうやら体格など関係がないらしい。


 チームミコバトの思惑は、意外なほどに魔力のうねりを素早く侵食し、あれよあれよという内に暴走のトリガーを引かんとしていた。

 これに慌てたのがソフィアのライバルだ。必死に制御を取り戻さんと試みるも、残念ながら思うように行かず。

 そうしてとうとう、暴走は成ったのである。

 天地を飲み込まんほどの、バカげた規模の魔力災害。ライバルの意図したものでこそなくなってしまったが、文明を軽く消し飛ばすほどの脅威であることは間違いなく。

 それが今、あまりに広大すぎるこの空間を、総なめにしようとしていた。


『さぁ、来い……見事生き延びて見せてやる!!』

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