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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第一七九〇話 万能の資源

 円卓、というのはロマンである。

 理由は当然、みんな大好きアーサー王伝説に由来し、円卓と言えば円卓の騎士ってイメージから、なんかカッコイイ! という、まぁ安直といえば安直な思考からくる趣向なわけだけど。

 とは言え、それを食卓に採用するというのはちょっと解釈違いかな。ということで、我らがチームハウスの食卓として設けられたのは、全員分の席を確保しても幾分か余るような、貴族のお宅にありがちな長いテーブルだった。

 ちなみに幾つかのテーブルへ分割することも可能な、融通の利く逸品となっており。様々なシーンに対応できるような細かい工夫も仕込まれていたりする。


 ってなわけで。


 チームハウスには立派な食堂が設けられた他、キッチンやお風呂、寝室に会議室、リビングなどなど、概ね必要と思しきお部屋は確保し、外観に関してもちまちまとアップデートしていく予定。

 チームハウスの再編集に取り組み始めてから、はや数時間。突貫作業ながら、なかなかの出来であると自負したいところではある。尤も、皆の協力があればこそなのだけどね。

 それに、なんやかんやハウスマスターのドロップアイテムである「クリスタルハート」に関しても並行して調査を進め、一応一通り調べるべきことは調べ終えたと言えるところまでは持っていくことが出来た。

 その間、あまり休憩らしい休憩も取らぬまま動きっぱなしだったので、正直ようやっと食卓を囲めている現状には、かなりホッとしていたりする。


「しかし『マテリアルポイント』か」

「何でも変換できて、何にでも加工できる、万能の資源」

「驚くべき理のもと、この空間は成り立っているようですね」


 皿の料理を咀嚼する合間に、そんな言葉を交わす面々。

 そう、このチームハウス……というより【マイハウス】の管理下にある空間においては、『マテリアルポイント』なるものが絶対的な基礎として定義されていた。

 それ自体に決まった形や容貌はなく、強いて言うならばウィンドウ上で確認できる数値こそが、唯一目に見える形で捉えられる姿、と言ったところだろうか。

 このマテリアルポイントと引き換えることで、チームハウス内ではあらゆる物を生み出すことが出来た。

 例えば最初皆が好き放題にチームハウスを弄り倒せたのも、このマテリアルポイントを使用すればこそ可能だったことであり。何なら不足分を、手持ちの資材で賄ったメンバーも多い。


 そう、マテリアルポイントは存外容易く得ることが可能なのだ。

 方法は至って単純であり、簡単。ウィンドウを介し、アイテムでもオブジェクトでも、変換可能とされる品をポイントに換えてやる。それだけである。

 そしてこの仕組みにおける最大の強みは、何と言っても『ロスが発生しない』という点にあり。

 例えば手持ちの片手剣を、100マテリアルポイントに変換したとしよう。

 けれどやっぱり惜しくなり、マテリアルポイントで元の片手剣を作り直したとする。実際復元や複製機能は存在するので、実例を伴っての説明も可能ではあるのだけど、今はまぁ不要だろう。


 して。例えばこれが商売だったり、或いは何らかのエネルギーを運用するお話ともなれば、必ず何かしらのロスが発生するはずである。

 物の売買であるならば、売ったものを買い戻す際には、売ったときより高いお金を要求されたりだとか。

 エネルギーに関しても、劣化や消耗、力の通り道に対する負荷など。どこかしらに、何らかの消費が生じ、完全な姿を保ったまま行き来することは出来ない。それが普通であり、世の理というものなのだけど。


 ところがこのチームハウス、というか【マイハウス】においては、話がまったく違っているようで。

 100ポイントに変換した片手剣なら、同じ100ポイントで復元することが出来るし、何なら同じ値で複製まで可能だと言うからとんでもない話である。


 こうした法則は、私たちの確認した限り、全ての「物質」に対して適用されるようで。

 ゆえに、その気になれば私たちが口にしているような食材だろうとも、マテリアルポイントを駆使すれば生み出すことが出来るらしい。

 ただ、生き物に関しては……やはりと言うべきか、ポイントへの変換も、ポイントからの生成も不可能とのこと。

 これには正直、私も皆もホッとしたところである。

 だってもしそんな事が可能だとしたら……きっと心穏やかでなんて居られないからね。間違いなく碌な事にならないもの。


「とは言え、流石にマテリアルポイントで作った食材を調理してみよう、というのには踏ん切りがつきませんね……」

「私は試しに食してみたく思いますが」

「私もぱわ!」


 渋い顔をするのは聖女さん、それにオルカ。料理が得意な二人である。

 一方、好奇心を見せるのはソフィアさんとサラステラさん。まぁ、気持ちは分からないでもないけれどさ。

 とは言え、料理担当は食の安全ってものに対し、どうしても責任を感じるものだろうからね。慎重になるのも尤もだ。

 けど実験は、一応しておいたほうが良いようにも思う。何故なら……


「もしもポイントで生み出した食材が問題なく食べられるんなら、そこら辺の石ころだろうがなんだろうが、食べられるものに換えられるってわけでしょ?」

「それがホントなら熱いのぜ! 手持ちの食べ物が枯渇したって安心なんだぜぇ!」

「う。まぁ、それはそうですが……」


 リリとレッカがちょうど指摘してくれた。そうさ、もしもポイント産の食材が問題なく食用に足るものならば、チームハウス内外問わず、あらゆる物質が食べ物に変換できるってことになる。

 ああけど、何故だか魔法で生み出したような物質に関しては、どうにもポイントへの返還率が極端に低いため、魔力を食料に直接変換できる! とは考えないほうが良さそうだった。

 それから……あんまり考えたくないことではあるのだけど。

 私たちの身体から出た、いわゆる排泄物もまた物質であることに変わりはないため、ポイントへの変換は可能。

 なので、本当にポイントから作った食材がきちんと役目を果たしてくれるのなら、実質的に私たちが食べ物に困るようなことはほぼほぼなくなる、と考えることも出来るわけで。

 ……ちなみに今のところはまだ、流石に排泄物をポイントに換えたりはしてないよ? 場合によっては、そういう施策も取られるかも知れないけどさ。


「個人的には、質の良いアイテム類が変換や複製に対応していない、という点が気になってはいる。それが可能なら、強力な装備を簡単に揃えられそうなものだが」

「何とも容易く悪用できそうな話だな……危険だ」

「だから禁止されてる、みたいな事なんですかね~?」

「ガウー」


 あらゆるものがマテリアルポイントに変換できる、【マイハウス】。

 けれどその中にも、例外というものは存在しており。先に挙げたような「生き物」が変換できないのと同じように、私たちが普段遣いしているような、世に出しちゃマズいレベルの武具や素材はもとより、一般人の価値基準で「ちょっと良い品」というレベルの物もそうだ。

 そういった物品は、どういうわけかマテリアルポイントからの復元や複製が出来ないようになっていた。なんならポイントへの返還すら拒まれる。

 その理由としてはやはり、それを許してしまうと様々な面でバランス崩壊を起こしてしまうから、とか。そういった悪用への対策として設けられた仕様なんだろうか。

 実際問題、例えば強力無比な爆弾を、安いポイントで大量生産できる! みたいな話になれば大問題だしね。でもって、そういうのもやっぱり禁じられてるっぽいし。


「とは言え、ルールの抜け穴も何処かに潜んでそうだし……自制心は大事にしていかないとね」

「バカ仮面からそんな言葉が出るとはね……ちょっと意外だわ」

「ミコト様は、公平性を重んじるからね!」

「ゲームはルールの上でこそ楽しめるもの、なのです!」

「リリエラも見習ってください」

「大丈夫。リリエラはこう見えて、バカみたいに真面目だから」

「う、うう、うっさいわね!」


 日頃は何にでも噛みつく、狂犬系クレーマーのリリ。がしかし、本質は真面目な優等生であり。ちゃんとしてない人や物が許せないというのが根っこにあるらしい。

 それにルールを知らねば、意図せず無自覚の内に違反を犯してしまうかも知れない。だから何にでも噛みつくように問いただす。いつしかそれがリリのスタイルとして染み付いてしまったみたいだ。魔法も剣も巧みなのに、そういうとこだけ不器用な娘である。

 そんな彼女のことをよく分かっている周囲は、微笑ましく彼女らのやり取りを眺めていた。


 まぁでも、便利すぎるがゆえに自制心は重要だ。この考えには皆もきちんと同意を示し、際どい使い方をする際には周囲の意見を聞くことが義務付けられる運びとなった。

 大抵のことが思いのままで出来てしまうが、しかしそれ故にこそ使い方には気をつけなくちゃならない。

 改めて【マイハウス】の凄まじさに、背筋の伸びる思いを感じた私たちである。

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