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未定  作者: 苺タルト
6/7

第6話


ある収録の日。

控え室に戻ると、ゆかりが入ってきた。

 

「啓輔、きららちゃんが差し入れ持ってきてくれたわよ。」

 

ゆかりが嬉しそうに、社長の一人娘“きらら”を向かいいれた。

 

「こんにちわぁ!」

 

くるんと巻いた髪に大きな瞳のきららが手に大きな箱をもって入ってきた。

 

「うちの啓輔です。どうぞよろしくね。」

「きららです。啓輔さんにお会いできて嬉しいです。」

 

ペコリと頭を下げた。

啓輔も軽く会釈をした。

 

「お口に合うかわからないんですけど、ケーキ焼いてきたんです。よかったら食べてください。」

「ありがとう。後で頂くよ。」

「はい!パパが今度食事でもと言っておりました。」

「まぁ、是非にとお伝えくださいね!」

 

ゆかりがきららを出口まで送りに行った。

その後、きららが頻繁に訪れるようになった。

必ずそばにはゆかりがいて、食事に誘われれば断ることができなかった。

ちっとも楽しくなかった。

 

 

「啓輔さん。」

「何?」

「この後、少し散歩でも行きませんか?夜景がとても綺麗と聞いています。」

「啓輔、お付き合いしてあげなさいよ。」

「はぁ。」

 

ゆかりに言われるがまま、啓輔はきららと外にでた。

言うこと聞いてるおかげで、最近明日香と会うためにでかけても、うるさく言わなくなった。

明日香は今何してるんだろ?

 

「啓輔さんは、趣味とかあるんですか?」

「趣味・・・バイクでツーリングしたり、写真撮ったり。」

「素敵!今度連れてってください!」

 

啓輔は応えなかった。

後ろには明日香が乗るから。

 

「啓輔さん?」

「あっ、ごめん行こうか。」

「はい・・・」

 

啓輔ときららは夜景の綺麗な広場に出た。

 

「啓輔さん、綺麗ですね!」

「あぁ。」

「あたしと、結婚してください。」

「え?」

「あたし、啓輔さんが好きです。あたしは啓輔さんを幸せにできます。」

「いや・・・」

 

きららは啓輔に抱きつくと、

 

「あたしが忘れさせてあげます。好きな人のこと。啓輔さんに尽くしますから。」

「きららちゃん・・・?」

 

なんで知ってんだ?

かあさんか・・・。

 

抱きつくきららを離そうと肩を掴んだとき、かすかに「啓輔」と聞こえた。

辺りを見回すと、明日香が立っていた。

 

「明日香・・・」

 

明日香は笑顔で手を振ってその場を立ち去った。

明日香の目に涙が浮かんでいるようにもみえた。

 

「明日香っ!」

 

追いかけようとすると、きららが押さえつけた。

 

「駄目!行かないで!」

「離して。」

「いや。離さない。」

 

もう、明日香の姿は見えなくなっていた。

 

 

 

明日香は今日友達と広場の近くで飲んでいた。

友達と別れて、広場を通って帰るところだった。

あの場面は痛かった。

嫉妬・・・・これでいいんだと思う気持ち・・・複雑だった。

言い聞かせる自分・・・啓輔が愛おしいと思う気持ち・・・・

気が狂いそうになる。

 

明日香は自然に大地の家の前に立っていた。

 

「明日香・・・」

 

明日香を部屋に入れた。

明日香の様子ですぐわかった。

啓輔となんかあったなと。

 

「ほれ、ビール」

「ありがと。」

 

明日香はビールを受け取ると、ベタッとジュータンに座った。

 

「どした?」

 

大地は缶ビールを開けながら、明日香の隣に座った。

 

「うん・・・何が一番いいのかわからなくなって。」

「啓輔くんを諦めるか諦めないかってことか?」

「これでいいって思う自分と、嫉妬する自分。言い聞かせようとする自分に疲れた。」

「そっか。たいしたこと言えないけどさ、自分に正直でいいんじゃないか?」

 

明日香がヒックヒック言いながら泣き出した。

 

「おおぃ、明日香大丈夫かよ?」

 

大地はティッシュを明日香に渡した。

 

「大地・・・ゴメン。」

「気にすんな。」

「胸貸してくれる?」


明日香は大地の胸にオデコを乗っけた。

 

「もう、どうしたらいいかわかんなくて。自分がどうしたいのかも・・・わかんない。」

 

大地は、明日香を強く抱きしめた。

 

「おれんとこ来いよ。俺はお前の従兄弟じゃないし、芸能人でもない。小6の時、明日香に一目惚れして、今も明日香しか見えてない俺にさ。」

「ハハ・・」

 

冗談でも、そうしてしまおうかと思った。

大地だったらどんなに楽なんだろうって。

一緒にいても、話してても、飲んでても、ホッとする居場所。

 

「本気だよ?俺は明日香と結婚まで考えてたんだ。」

「知ってる。」

 

大地はそのまま明日香を押し倒した。

 

「結婚しよ?」

「だ・・・」

 

大地は無理やり明日香の唇をふさいで、服を脱がし始めた。

 

「もう、俺から離れてくなよ・・・愛してるんだ。」

 

嬉しかった。

もっと早く知ってたら・・・。

こんなに苦しい思いしなくて済んだかもしれない。

楽になりたかった・・・

誰かに寄りかかりたかった。

大地に身を委ねてしまってもいい。

もともと好きな人だったんだから・・・

きっとまた好きになれるかもしれない。

 

大地のほてった大きな体。

気持ちが伝わるほど優しく抱いてくれる。

この人、ホントに好きなんだって。

あたしの体が素直にこたえる。

気持ちいいが涙に変わる。

 

 

ふと、目が覚めた。

隣に大地がいる。

啓輔とは違う、腕の感触と温もり。

啓輔にない、安心感。

 

でも・・・・・・・・

 

サイテーだ・・・。

あたし・・・ぽっかり開いた穴埋めたくて大地と寝た。

これじゃ、啓輔も大地も傷つけてしまう。

あたし・・・・なんてことを・・・。

多分、誰でもよかったんだと思う。

誰とでも寝れた気がする・・・・最悪だ。

 

明日香は起き上がった。

 

「明日香?」

「あたし・・・・」

「どした?」

「なんてことを・・・」

「後悔してるの?」

 

大地も起き上がって、明日香の肩を抱いた。

 

「ごめん。明日香の気持ちに付け込んで抱いて。でも、俺は幸せだったよ。これからもお前のこと大好きだし、ずっと友達でいたい。」

「大地・・・ごめん。思わせぶりなことして・・・」

「大丈夫。啓輔くんより明日香を知ってるつもり。俺でよかったんじゃないか?あの雰囲気じゃ相手が俺じゃなくても寝たな。」

 

大地にっと笑ってみせた。

これが大地である。

 

「ごめん・・・」

「図星かよぉ!しょうがねぇな。」

 

大地は明日香の頭をグシャグシャっとした。

 

「ホントに好きだった。」

「うん。ありがと。」

 

 

 

昨日のあの晩から、何度かけてもメールしても明日香に連絡がつかない。

啓輔は、今日の仕事が何時になっても終わったら明日香の家に行くつもりでいた。

 

早く終わんないかな。

 

イライラした気持ちが出ているのか、取り直しが続く。

結局、終わったのは明け方2時。

それでも啓輔はバイクを走らせ明日香の家に向かった。

到着すると、明日香のケータイを鳴らした。

出るまで・・・・切られてもしつこく・・・

意外にも、すんなり明日香は電話にでた。

 

「もしもし。」

『啓輔?どしたの?こんな夜中に。』

「昨日のこと謝りたくて。家の前にきてんだ。」

『先に言いなよ。今開ける。』

 

明日香がパジャマにカーディガン姿で玄関を開けた。

部屋に入ると、明日香は暖房を入れた。

 

「寒かったでしょ。コーヒー入れるね。」

 

明日香はコーヒーをセットして、スイッチを入れた。

コーヒー豆の香りが部屋を覆う。

 

啓輔は、後ろから明日香に抱きついた。

 

「昨日、泣いてた?」

「ちょっと・・・」

「ごめん・・・あのコと食事行くと、かあさん、あんまりうるさく言わいんだ。でも、頭ん中は明日香もことばっかで、次明日香に会うためにもかあさんについて行くしかなかった。」

「それでいいんだよ。あのコと順調にいけば将来が約束される。」

「まだそんなこと言ってんのかよ?それでいいのかよ?」

「いいなんて思ってない!おばちゃんがしてることが絶対啓輔のためになってるとは思わない。でも、おばちゃんの苦労は知ってる。ここまで啓輔を押し上げてきたのはおばちゃんなのよ。啓輔こそが夢なの。それにはあたしがいちゃ駄目なの。啓輔があたしを好きでいちゃいけないの。」

「どうしたらいいんだよ・・・俺は明日香を忘れたらいいの?忘れられるわけないだろ?」

「戻るだけだよ・・・従兄弟の啓輔と明日姉に。」

「嫌だ・・・好きなんだよ!明日香が・・・・。」

 

子供のように泣く啓輔の涙は素直で綺麗な涙。

あたしの涙は・・・

嘘と、汚れで覆い隠された灰色の涙。

 

 

泣き疲れた啓輔はソファで寝てしまった。

啓輔の寝顔は、子供の頃のまんま。

喧嘩しても、必ず一緒にお昼寝をした。


明日香はある決心をした。

このままじゃいけない。


啓輔も、あたしも・・・

 

 

 

数週間後・・・

 

「お疲れ様です。」

 

啓輔は控え室に戻ってケータイをみた。

明日香からメールも着信もない。

あの夜以来、自分からしてもなかなか捕まらなかった。

 

どうしちまったんだよ・・・。


ケータイが鳴った。

知らない番号だった。


「もしもし?」

「啓輔くんか?」 

「大地さん!」

「どうしたんですか?明日香から聞いたんですか?よくわかりましたね?」

「明日香のお袋さんにに言って調べたよ・・・大変だった。そんなことより、空港へ行け。」

「空港?」

 

 

 なんで・・・

 どこ行くんだよ。

 

啓輔はバイクで空港に向かっていた。

 

 行くな・・・

 行かないでくれ・・・

 

 

 

「空港?」

「明日香、ボランティア活動しに世界各国周るんだって。」

「え?」

「もう、帰ってこないつもりかも・・・早く行って止めてこいよ。」

 

 

明日香が下した決断。

自分から啓輔と離れることだった。

むしろ、逃げたのかもしれない。

このままじゃ、啓輔は明日香ときららとゆかりの狭間で悩み、明日香は寂しさを大地や他の誰かで埋める。

大地もツラかっただろう。

大地の優しさに甘える自分にもさよならしたかった。

それで全て解決したわけじゃない。

でも、何か変えたかった。

啓輔も諦めるかもしれない。

明日香も、異国でいろんなことに触れ、文化の違いや言葉の違いで、考える余裕がないかもしれない。

これでよかったかどうかはわからない・・・

 

「ほんとに行くのか?」

「うん。啓輔には言わないで。」

「なんで?」

「絶対、引止めにくるから。」

 

明日香は笑った。

 

 何がおかしいんだよ・・・

 当たり前だろ?

 

「啓輔くんはきっと待ってると思うぞ。」

「そうかもね・・・」

 

大地はその言葉で、もう帰ってこないかもしれない・・・と思った。

啓輔の連絡先を突き止め、啓輔に伝えた。

伝えなきゃいけないと思った。

啓輔が行けば、思い止めるかもしれないと思ったからだ。

このままじゃ、二人は一緒になれない。

好きあってるのに、なんで引き離されなきゃなんないんだ。


 

啓輔は出発ロビーに到着していた。

あたりを見渡したが、明日香を見つけ出すことは困難だった。

 

「明日香ぁー!」

 

叫んだって仕方ないのはわかっていた。

でも、諦めたくなかった。

空港内走り回って、結局みつからなかった。

啓輔は座り込んでしまった。

 

「明日香・・・・行かないでよ・・・・なんで行っちゃうんだよ・・・」

 




 

こうして、俺の前から“明日香”はいなくなってしまった。

 

 

何がいけなかったのか・・・

3年経った今、わかったような気がする。

自分に勇気がなかった。

芸能界を捨ててでも、明日香を取る勇気が俺にはなかった・・・・。

どんなに明日香を愛していても、俳優を捨てられなかった。

両方ほしかった。

ただのガキだったんだ。

そして全部失った・・・。

 

 


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