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勇者と魔王の国  作者: ふたーなる


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第6話 少女VSギャング

はあ、


俺はどうも落ち着かないので、倉庫の中をぐるぐると歩き回った。


マジで、きつい。


ギャングに追われている。あの、バルトだ。




あいつが人を殺す場面に遭遇したことはないけれども、ああいうのが怒ると怖いということくらいはわかっている。


ああ、落ち着かない。何度トイレに行ったって、すぐに尿意が込み上げてくる。




ナギはといえば、そんな落ち着かない俺のことを眺めているだけだ。


ムカついてくる。


はあ、


俺は精一杯、彼女の服の下がどうなっているのか考えた。


さっき水浴びをしているときに、もう少しちゃんと見ておくんだった。




「あの、大丈夫ですか」




彼女が俺に話しかけてきたが、俺はとりあえず彼女のことを一度見たあと、無視した。


おいおいおい、


ていうか、俺一人で逃げるというか、最初から彼女のことなんて無視して俺はギャングに弁解に行くべきだったんだ。


ていうか、まだなんでナギが狙われているかわからないし。




すると、何やら足音が聞こえてきた。


ドシドシ、という音が少しずつズレて何重にも重なって聞こえてくる。


そして、ドンッという音が鳴って倉庫の扉が開いた。




「いたぞ!!」




やばい、ギャングだ。


寒風が一気に入り込んでくる。


そして、手下たちの後ろには、親玉であるバルトがいた。




俺は、さっきまではムカついていたクセに彼女の手を握ってまた逃げようとしていた。彼女の手はほのかに温かくて、なんだか俺を安心させてくれた。


しかし、彼女は俺の手を優しく持って自分の手から引き剥がすと、「大丈夫です」と俺の方を見て笑った。




そして、ギャングの男たちがジリジリとこちらに近寄ってきている。手には、剣が握られている。




「助けてもらいましたから、ここで恩は返しますよ」




そういって、彼女はどこからともなく剣を取り出した。


俺のあげた服だよね?どこにそんなものをしまっていたの。


そして、彼女が俺に「下がってください」と言った。




俺は「逃げようよ」と言ったが、彼女はそんな俺の心配を気にもとめずにギャングに突っ込んでいった。


が、そこからの展開は実に予想外のもの。




彼女は剣を構えていたけれども、剣は基本防御のときにしか使わずに、屈強な(のもいる)ギャングの男たちのことを思い切り殴った。


彼女は思い切り男たちのみぞおちに拳を入れて男たちの意識を果てまで飛ばしている。


これは、やはり手を出さなくてよかったかもな。


水浴びのときに、乳首は見えていたわけだし、


そうだったじゃないか。


満足しておけばよかったのだ。


乳首なんて、滅多に見られるものではないじゃないか!!




俺がそんなことを思っている内にも、彼女は男たちの攻撃を躱してどんどんと沈めていく。


すると、奥の方で状況を見守っていたバルトが動き出した。


そして、バルトが動き出した頃には彼の手下たちは皆倒れこんでピクピクとしていた。


表情にも、声にも、目立った変化はない。ただ、ナギの姿を確かめるように、視線を頭から足元まで動かした。


ナギもまた、何も言わずに剣を構えていた。




俺は二人の間に流れる空気に、思わず息を詰めた。


先ほどまでの手下たちとの戦いとは、何かが違う。


バルトが一歩踏み出した。


ナギも動いた。




剣と剣がぶつかる。乾いた金属音が、倉庫の中に響いた。二人が一度下がって距離を取り直した。そしてすぐに、ナギが踏み込む。剣が二度、三度と交差した。バルトは攻撃を受け止めるのではなく、刃をわずかにずらして軌道を変えているようだった。ナギの剣は何度も目標を外れ、そのたびにバルトの剣がナギの隙を狙った。




ナギは後退しながら、それをかわしていく。




俺には、二人が何を考えて動いているのか、まるでわからなかった。


ただ、どちらも無駄な動きをしていないことだけはわかった。ナギが剣を振るう。バルトが受け流す。バルトが踏み込む。ナギが身を引く。


それが何度も繰り返された。




やがて、ナギが剣を横に構えた。


バルトの剣が、その刃に触れる。


次の瞬間、バルトの剣から光が走った。俺は目を見開いた。光は刃を伝うように広がり、二人の剣がぶつかった場所で弾けた。ナギが後ろへ跳ぶ。ナギは受け身を取ってすぐさま体勢を整えた。




「……魔法?」




俺は呟いた。


バルトは剣を構えたまま、ナギを見ている。


その剣には、まだ淡い光が残っていた。




ナギもまた、剣を持つ手を変えた。


すると、彼の指先に青白い光が集まった。


バチッ、と小さな音がする。


次の瞬間、ナギの周囲に細い光が走った。




俺は思わず一歩下がった。


これが魔法なのか。


勇者以外の人間が使うところなど、見たことがなかった。


ナギがさっき使った魔法も、あまりはっきりとは見えなかったのだ。




それに、そもそも勇者が魔法を使うところだって、俺は直接見たことがない。


なんで、


バルトも魔法が使えるのか?俺達住民はずっと魔法とは勇者にしか使えないものだと思い込んでいた。


俺がそんなことを考えている間にも、二人は何度も火花を散らしていた。




俺には、どちらが優勢なのかも判断できなかった。


二人の動きは次第に速くなっていく。


ナギが剣を振り下ろす。バルトが受け止める。その刃を押し返しながら、バルトがもう片方の手をナギへ向けた。




そこから光が放たれた。


ナギは剣を引き、身をひねって避ける。


だが、バルトはすでに次の動きに入っていた。


踏み込みと同時に、剣が振るわれる。




ナギは刃を合わせた。


衝撃で、二人の足元から砂が舞い上がった。


そのまま、二人は互いに剣を押し合った。


バルトの剣が光を帯びる。


ナギの指先にも、青白い光が集まっていく。




俺は、二人の間に何が起きるのかを見守ることしかできなかった。


次の瞬間、光が弾けた。


二人は同時に距離を取った。


ナギが剣を構え直す。




バルトもまた、剣先をナギへ向けた。


しばらく、二人は動かなかった。


そして、再び二人が動いた。


今度はナギが先だった。




地面を蹴り、一直線にバルトへ向かう。剣を振り上げたナギに対し、バルトは正面から剣を合わせた。


金属音が響く。


その瞬間、ナギの指先から雷光が走った。




バルトの剣が光を放つ。


二つの魔法がぶつかり合い、辺りが一瞬、白く染まった。


俺は腕で目を覆った。


光が消えたとき、二人はまだ剣を交えていた。




だが、次の瞬間。




ナギが剣をわずかに傾けた。


バルトの刃が滑り、その軌道が外れる。


ナギは踏み込んだ。




剣がバルトの手元を打ち、キン、という音を鳴らして地面に落ちた。




バルトはすぐに体勢を立て直そうとした。


しかし、ナギの剣先はすでにバルトへ向けられていた。


同時に、ナギの指先から雷光が走る。


バルトが動くより早く、その光が相手の体を包んだ。


バルトの動きが止まった。


そして、彼はそのまま他の手下と同じように倒れ込んだ。


そして、ナギは涼しい顔でこちらに振り向くと「終わりましたよ」と何事もなかったかのように俺に言ってきた。

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