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勇者の秘密  作者: ふたーなる


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第5話 ギャングからの逃走

俺達がそんな話に花を咲かせていると、突然俺の家の扉をドンッドンッと強く叩く音が聞こえてきた。


俺もナギも、一瞬肩をビクッと震わせる。




「はあ、びっくりさせんなよ」




しかし、誰だ?今日は仕事のある日ではなかったはずだ。


俺は扉を開けた。


すると、そこに立っていたのはギャングの一員だった。


それも、一人だ。




「おい、ミロ。お前、今一人か?」




「いや、まあ、違うけど、」




もちろん、思い当たることと言われればナギのことだ。


やっぱり外から来たというのは嘘だったんだな。彼女が逃げ出した男か家族なのかわからないが、彼女を逃すまいとする何らかの人が困っているわけだ。




それなら、ギャングにちゃんと説明すればわかってもらえるはずだ。


「おい、入るぞ!!」そういって、ギャングの男は俺のことを押しのけて俺の家にズカズカと踏み込んでいった。




「お、おい、待ってくれよ。彼女にもきっと事情があるんだ」




俺は男のあとを追った。


すると、男はナギのことを見るなり彼女に襲いかかろうとした。




「あ、ナギ!!逃げろ!!」




彼女はキョトンとした顔でこちらを見ていた。


俺はギャングの男をなんとか掴んで、彼女を逃がそうとした。


もしかすると、こいつはギャングという権力を振りかざして彼女のことを支配しようとしているのかもしれないな。




「お前は邪魔だ!!」




そういって、男は振り返ってから俺のことを殴った。


俺は殴られたのでその場に倒れ込む。




「おい、お前逃げるなよ!!」




「逃げろ!!ナギ、逃げろ!!」




俺は倒れ込んだまま必死に叫んだ。


すると突然、男が目の前でプルプルと震えだした。


そして、倒れたのだ。




「大丈夫ですか?」




男は倒れたまま動かなくなった。


なんだ、


何が起きたんだ。




「あ、この人って誰ですか?なんか、喧嘩しているみたいでしたけど、」




「え、・・・大丈夫か?」




「ああ、私騎士の娘って言ったじゃないですか。大丈夫ですよ、こんなの。でも、すいません。急に襲われそうになったもので、つい使ってしまって」




俺は倒れている男の顔を覗き込んだ。


男は、意識を失っていそうだったが、目を見開いたまま倒れていた。




「え、・・・これってナギがやったのか?」




「ああ、すいません。ちょっと魔法を使って」




「魔法?」




「ああ、見慣れないものでしたかね。まあ、あんまり使える人はいないですもんね」そういって、彼女も俺の隣にしゃがみ込んできた。




「魔法ですよ。バチバチって」




「魔法って、・・・勇者が使うものだろ?」




「あ、勇者様も使えるんですね」




じゃあ、やっぱり彼女はよそ者というわけか。


しかし、魔法なのか?こうやって、音も出さずに男一人を倒すことができるのか。




「でも、これってやばいぞ」




そうだ。


ギャングに手を出してしまったのだ。


ギャングって、全員でどれくらいいるか知らないけど、もちろん俺にはそんなつもりはないけれども、ギャングに歯向かったって誰も味方にはなってくれない。


ああ、まずい。


確実に殺される。




「・・・どうしたんですか?」




「逃げるぞ!!」




「逃げるって、」




「とりあえず、ついて来い!!」




俺は必死に頭を働かせた。


これは、無理だ。おそらく、どう言い訳をしても俺が殺されるだろう。


こいつがそういう目的で俺の家に入ってきたのか、わからない。


ナギが目的なんだろうけど、なんで彼女が狙われているかまったくわからない。




そういえば、この街は外から人を入れたことがないな。


もしかすると、彼女が魔王軍ってことはないのか?


魔法が使えるって、魔物にしかできない、とか。


ありえなくはない。




しかし、せっかくこんな美女を家に上げることができたんだし、最後までいかなくても「ミロさんのお陰で助かりました!!」みたいな展開になれば、合意の上で、


って、そんなことより今は俺の命が危ないんだ。


バルトは、規則を破るものを許さない。


俺も、今までのバカどもと同じように殺されてしまうかもしれない。




「逃げるぞ」




俺は急いでラックにかけてあったローブを取り出した。これで、なんとかバレないようにしよう。


それにしても、まだ夕方くらいだ。


ナギにも俺と同じローブを着せた。


それにしても、相変わらずけしからん胸だ。




「逃げるって、なんでですか?私、急に襲われたんですよ。何も悪くないですよね?」




それはそのとおりだと思うが、おそらくまずいのだ。


俺達が悪くなくても、向こうが正しければそれで終わりだ。


俺はナギの手をぎゅっと握った。そして、棚から食料をいくつか取り出して、他にも使えそうな物を取り出して、カバンに詰め込んで家から出た。


俺の後ろに、ナギもついてくる。




「あの男の人はいいんですか?」




「いいんだ。それよりも、急いで逃げるぞ!!」




だいぶ空も暗くなってきた。


俺はナギと一緒に街の使われていない倉庫の中に隠れた。


倉庫には穴が開いていて、そこから中に入ることができたのだ。


男はまだ死んでいなかったと思うし、あいつが起きたらすぐに街中のギャングが動き出すだろう。




「あの、寒いですね」




ああ、そうだ。砂漠の夜はものすごく寒い。


家には熱を保つ効果があるから普通に寝ることができているが、倉庫にはそんな効果はない。


壁に開いた穴からびゅうびゅうと風が吹き付けてくる。




「そういうもんだ。ていうか、来るときも外で寝ていたんだろ?」




「いや、いい感じに魔法で火を起こしたりしてましたよ。砂を固めて壁にしたり」




魔法か、


信じるしかないのだろうか、




「とりあえず、魔法っていうのは便利かもしれないけど、もう使うなよ。ギャングはいっぱいいる。俺達二人でどうにかできる相手じゃない。いくらナギが強くても、数には勝てないだろ?」




俺がそういうと、彼女は不服そうに「大丈夫ですけどね、」と言ってきた。




「だから、見くびるなって。勝てない!!ギャングには逆らってはダメなんだ」




「じゃあ、最初から謝ってればよかったんじゃないですか?」




彼女は拗ねたようにそんなことを言ってきた。


お前のせいだろ、といって押し倒したい気持ち。いや、ちょっと待て。もうその気持も抑えなくていいのでは?




どうせギャングに捕まるなら、彼女のことを押し倒すべきかもしれない。


ああ、段々とムカついてきた。


ほんと、誰のせいでこうなったと思っているんだ!!


俺は勇気を振り絞って彼女の胸に手を伸ばした。


しかし、彼女はそんな俺のことを真顔で見つめてきた。


俺は彼女の圧に押されて手を下ろした。




「あの、私は騎士ですから。変なことをしたら殺しますよ」




「あ、・・・」




というわけで、俺の童貞卒業の夢は絶たれた。


しかし、


ムカつく。ほんと、ギャングがいつ来るのかわからないし。




「・・・ギャングってそんなに強いんですか?私は、自分の国でも私より強い人を見たことがないですよ」




「だ、か、ら、いくらナギが強くても数には勝てないだろ?」




「勝てますよ。その、魔王とかそれを一回追い払ったっていう勇者様に勝てるかどうかは別ですけど、それ以外の人には勝てますよ」




 はあ、俺はめんどくさいものを拾ってきてしまった。


こんなのに巻き込まれて死ぬのか、


少なくとも、彼女は俺の何倍も強いということはわかった。


クソ、




「私、なんかつまんないんですよ」




「・・・そうなの、」




彼女は、突然なんの脈絡もないことを言い出した。




「なんか、強い人もいないし、国にもめんどくさがられてるのかこんなところまで送り出されて、」




とりあえず、俺は落ち着きたいんだ。


お前のせいで、今どんなことになっているのかわかっているのか?


黙っていてくれ。




「で、私今15歳なんですけど、」




「えっ?!?!」




「・・・15歳なんですけど、」




俺はかなり驚いたのだが、彼女はそんな俺のことは気にせずに続きを喋りだした。


え、年下だとは思ってたけど、18くらいかなって思ってた。


15歳以下の女性と性行為をするのは、合意の有り無しに関わらず普通に犯罪だからな。


危なかった。




「それで、もう軍の隊長をやってるんです。その、全部のじゃなくて、第一部隊とかそんな感じの隊長ですけど、大体の戦争は私が出れば勝てますし、意味ないですよ」




「あ、そう」




「勇者様と話したことはあるんですか?」




「いや、ないけど」




「ほんと、いくら自分が強くたってつまらないですよ。勇者様も、退屈だから魔王と戦ってるんですよ、どうせ」




「・・・違うと思うけどね、」




「いや、絶対にそうです!!そうに決まってます!!」




急に熱量を上げてそんなことを語られても困る。


しかし、今夜はここで寝るしかなさそうだな。


俺はカバンから干した芋を取り出して、彼女に渡した。




「芋ですか?」




「申し訳ないけど、これしかないんだよ」




「いや、全然大丈夫ですよ」




 そういって彼女は一口でそれを食べてしまった。

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