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勇者の秘密  作者: ふたーなる


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第3話 少女との出会い

なんとなく、街を囲う壁の周りを歩いていた。


暇だったのだ。




仕事が無いのはいいけども、遊びに使うような金はない。


近所には俺と年齢の近い人がいないからな。


遊ぶ相手も話す相手もいない。隣のおばさんは、食事をくれるのはいいけれども話すと愚痴ばっかりだからな。




まあ、それを聞くのも助け合いだと思って割り切ってはいるが、人の愚痴を聞くことほど退屈なことはない。


すると、突然声をかけられたのだ。




「あ、あの〜」




俺はぐるりと振り返る。


そこには、ボロボロの服を着た俺より少し年下の女性が立っていた。


ボサボサの長い髪に、それにだいぶいかがわしいというとボロボロの服を着ているのも何か事情があるかもしれないので、失礼なのかもしれないが、服の穴から肌が露出している。




顔も砂で汚れて唇にも砂が付着している。


しかし、目の色が・・・青い?


あまり、見たことのない顔だな。


俺は、ただただ彼女のことを眺めていたら、彼女が「水を、もらえませんか?」と言ってきた。




「あ、ええ、いい、ですよ?」




俺はよくわからないけれども、彼女を連れて自分の家に戻った。


しかし、隣のおばさんくらいしか俺は女性と普通に話したことなんて無いぞ。


仕事場には男しかいないし、女性はどちらかというと家で家事をするのが主流だからな。




俺はとりあえず、家の井戸、説明をすると長くなるが、行政府が管理しているオアシスから水路を引いて色々な家で水を使えるようになっているのだ。


それも、壁の外にあるオアシスからも水を引いてきているので水不足になることはほぼ無い。




というわけで、俺は俺の家の壁に囲まれた庭で彼女が水を浴びるのをこっそりと見たあと、彼女にとりあえず自分の着るような服を差し出した。


それにしても、彼女は結構いい体をしていた。


先程はボロボロの服に目がいっててよくわからなかったが、実に理想的な体型をしていた。




それに、体の汚れを落とすと、・・・なんだろうか、肌が白い。


肌が白い子どもが生まれた、ということを聞いたこともあるが、そういう子どもはすぐに死んでしまったらしい。生まれつき体が弱かったそうだ。


彼女も、その類なのだろうか?




本当なら、裸の女性を見てそりゃ興奮するし、水浴びなんて扇情的な場面で俺だって何も思わないわけでもないが、女性と無理やり性行為をしたやつらは、ことごとくギャングに殺されている。


月に一回くらいはある話だ。




だから、とてもじゃないが彼女に手を出すことはできない。


まあ、彼女が受け入れてくれるならいいけども、さすがに初対面でいきなり手を出されたらギャングに突き出されること間違いなしだろう。


俺は、とりあえず彼女をリビングの椅子に座らせた。




彼女はぐるぐると俺の部屋を見回している。


そして、ぐう〜、という腹の虫の鳴く音が部屋に響いてから彼女は恥ずかしがることもなく、「あの、お腹が空いてて」と俺の方を見て言ってきた。




「あ、まあ、何か持ってくるよ」




俺はそういって、とりあえず棚に入れてあった干し肉を持ち出して、彼女の前に置いた。




「これって、ここらへん特有のやつなんですかね、ありがとうございます!!」




特有のやつって、どういうことだ?


しかし、何かトラブルの元となっても困るな。


彼女がボロボロで、水をくださいと言ってきたのだ。


何か、家で虐待を受けているとか、それならばギャングに相談するのがいいかもしれない。




しかし、このような顔の女性は見たことがない。大体、街の住民の顔なんてものは二十年も暮らしていたらわかってくるものだ。




「ほんと、ありがとうございます。こんな、服までもらっちゃって、」




「いや、まあ、あんなボロボロの服はよくない。ああいうのを着ていたら、


街を歩いている男に何をされるかわからないぞ」




「大丈夫ですよ。水も食べ物ももらって、元気出ましたし」




そういって、ハムハムと干し肉を食べている。




「その、⋯⋯家が大変なのかい?」




俺が彼女にそう聞くと、彼女は首をかしげて「どういうことですか?」と聞いてきた。




「その、そんなボロボロで。まあ、緊急だったならいいけど、困ったときはギャングに頼るもんだ。家で大変なことがあったのか、その、付き合ってる男がああだこうだとかは、ギャングに頼ったほうがいい」




「ギャングって、犯罪者でしょ?なんでそんなのに頼るんですか」




「いや、彼らはいいんだ。街の住民には友好的にしてくれているし、なにより警察なんかよりはよっぽど役に立つ」




「・・・そういうもんなんですか?」




そういって、彼女は干し肉の最後の破片を口に運び込んだ。




「そういえば、キミの名前を聞いてもいいか?」




「ああ、私ナギって言います。お兄さんの名前も聞いていいですか?」




「俺はミロって言うんだ」




しかし、油断していると目線がジロジロと移動していってしまう。


俺の服を着せているのだから、胸ははち切れんばかりに膨らんでいる。




「実は、人を探しているんですよ」




「人?それで、なんでそんなボロボロなんだ?」




「それは、遠くから歩いてきたんですよ」




遠いったって、この街は一日もあれば十分に歩き回れる距離のはずだ。


まあ、一日歩けばボロボロにはなるものか。




「遠くからねえ、・・・何かから逃げてきたってことだろ?」




「逃げてなんていませんよ。むしろ逆です。追っているんです」




「追ってる?誰を?」




「魔王です?」




「まおうって、あの魔王?」




「はい。多分そうです」




「そんな、勇者じゃないんだから」




ふざけているのかと思って、一応突っ込んでおいたが彼女は不思議そうな顔でこちらを見てから「なんですか、ゆうしゃって」と言ってきた。




俺は「親から聞かされなかったか?」と聞こうとしたが、もしかすると彼女には特殊な事情があるかもしれない、と思って聞くのをやめた。


しかし、追っている側なら、別にそんな事情が無いのか。




「魔王を追っているんです。その、私外から来たんですよ」




「外から?」




「はい」




「門が開かないと中には入れないだろ?冗談はよしてくれ」




「壁を飛び越えたんですよ」




「あれは、俺の身長の十倍以上あるぞ。人間には無理だ。それに、壁には見張りも立っている。少なくとも、俺がこの街に生まれてから二十年は勇者軍以外の客は来たことがない」




変な女性だ。


どういうことなのだ?追っているというのも、嘘なのかな。


まあ、多分そうだろうな。


しかし、服はボロボロだったし体にもだいぶ砂がくっついて汚れていたし、


一体、どういうことなのだ?




「あの、私ここらへんに魔王がいるって聞いたんですよ。というか、この街が魔王の本拠地だって」




「まあ、本拠地ではないのは確かだ。だって、勇者がいるんだから」




「その、ゆうしゃってなんですか?すいません。私の国では、そんな話は聞いたことがなかったので。魔王の話は聞いたことがありますけど、」




「俺は小さい頃から、」と話し始めたところで、彼女はさっきなんて言っていたか?私の国?何の話だ。


砂漠の外には、国という街よりもデカい何かがあると聞いたことはあるが、砂漠には街がいくつもあるだけで国などはない。


しかし、一旦その疑問は隅に置いておいて俺は話を続けた。




「その、勇者っていうのがいて、昔この街から魔王軍を追い出したんだ。それで、勇者はまたこの街に魔王が攻めてこないように壁を作った。それで、未だに魔王と戦い続けてるんだ。そういえば、この前勇者が街に帰ってきていたな」




俺がそういうと、彼女は「そんな話があるんですね。ということは、協力してもらえるのかな、」とつぶやいた。




「あの、協力って何の話なんだい?すまないが、キミに嘘をつかれたままだと話が進まない」




そのまま嘘をつき続けるつもりなら、俺といけないことをしてもらおうか、とも言おうとしていたが、俺にはそんな勇気はなかった。


ギャングに殺されるくらいなら、一生童貞の方がだいぶマシだ。




「私、嘘なんか一つもついてないですよ。ただ、よそ者なんで色々とわからないことだらけで、」




「あの壁を超えるのなんか、勇者だってきっと無理だ。キミは、どこらへんに住んでいるんだ。俺も、一応キミのためになりたいと思うから、家が大変だったら、無理をせずに俺に言ってくれ」




「まあ、家は大変でしたけど、多分ミロさんの思っているのとはだいぶ違いますよ。まあ、とりあえず、私の話を」と彼女が言ったところで、またぐう〜、という腹の鳴る音が部屋に鳴り響いた。

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