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勇者と魔王の国  作者: ふたーなる


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第1話 とある砂漠の街の日常

カラッとしたなどとポップな表現で言い表すことも不可能ではないのだが、今にも体中の水分がすべて持っていかれそうなほど暑い。




いや、熱い。


生まれたときからここに住んでいるけれども、だからといってこんな暑さは慣れようがないと思う。


こんなにも暑い日なのだ。日陰に入っても、暑さが「呼んだ?」と言ってひょこっと出てくるような、そんな鬱陶しい日でも人々は市場で物を売ったり買ったりしている。




「おい、ミロ!!」




俺は振り返る。


そこにいたのは、青果店の店主だった。




「すまないが、手伝ってもらえないか?」




手伝いか、


しかし、断る道理もない。俺は仕方なく「なんですか?」と答えた。




「運んでもらいたいものがあるんだ。どうも、最近は腰の調子が悪くてな」




俺は青果店のおじさんの指示通り、箱を運んだ。箱は思いの外重かった。


おじさんが「ありがとな」と言って金をくれた。




まあ、この街ではこういうのが当たり前なのだ。


困っていることがあれば人々は皆、助け合う。


無償で色々と手伝いをすることもあるが、基本的には手伝ったらそれに応じた金を支払うことになっている。




手伝いをしたのに、見返りをもらえなかったなんていうのはトラブルの元だからな。


というわけで、俺は本来の仕事に向かった。




鶏くらいの家畜なら育てられるけれども、ラクダは肉を食べるような家畜ではないからな。


しかし、俺が生まれる前はもっと貧乏だったらしい。俺が生まれる前というか、俺の両親がまだ子供の頃くらいだな。


というわけで、俺は今日も交易品の集まる場所、つまり街を囲う壁のすぐ下まで行った。




「ああ、ミロか。今日は、こんなもんだ」




この街以外の人間は見たことがない。交易に来る人々も、門の外で街の行政府の連中が俺達の代わりに取引をしているのだ。


俺達はそれを買い取って、高く売っているというわけだ。




しかし、この砂漠では交易品なんて必需品だらけだから多少高かろうが売れるのだ。


この壁の内側でも、一応乾燥に強いサボテンの栽培は行っているが、


どうにもこうにもサボテンだけでは物足りない。


だから、交易を行っている。この砂漠の街から売りに出せるようなものがどこにあるのか知らないけど、交易品は毎日のように届く。




俺達はそれを街に流通させる役割なんだ。




「とりあえず、その小麦を配ってきてくれ」




俺がその面倒な仕事をやらされるのかと思ったが、俺ではなく隣のやつだった。


よかったよかった。


というわけで、俺は倉庫に交易品を運び込む。




ここは行政府が交易品の交換に介入しているせいで、税金が後払いじゃなくて給料から直接持ってかれる。


ほんと、酷いもんだ。


給料から税金が引かれれば、毎日食ってれば自然と零になるってもんだ。




だから、3日に1回くらいはお隣のおばさんの家でごちそうになって、という生活をしてなんとか金を貯めている。


しかし、この街で税金をちゃんと払わなければ、何をされるかたまったもんじゃないからな。




まあ、税金を払っている分には何も問題はないし、どうしても税金が払えないってときは、たまにギャングが助けてくれることもあるし、信用が無くてもギャングは高利子で貸してくれる。


というわけで、強い日差しに照らされ、昼間に来た砂嵐を屋内でしのぎながら、今日の仕事が終わった。




まだ、夕方だ。




いつも、このくらいの時間には終わるようになっている。


金は無いのに、時間だけはあるんだ。


とりあえず、何を買うでもないけれど俺は市場を見ながら家に帰ろうと歩いた。


すると、市場でなにやら揉め事が起きているみたいだった。




「おい、今月も金が無いんだよ!!」




通りを歩いている人の何人かが、少し遠くからその様子を見ている。


俺も、それに混ざって少し遠くからそれを眺めた。




「税金は払え。そういう規則だ」




「あんたらは、いいよな!!働かなくても金がもらえるんだもん!!サボってても、


毎日同じだけの金がもらえるんだもんな!!」




「いいから、税金を払え。他の奴らは払ってるんだ」




よく見ると、俺のよく行くパン屋の店主と行政府の徴税官が揉めているみたいだった。


徴税官は、6人の武装した兵士を引き連れている。そして、兵士の内の二人が何やら車のようなものを引っ張っていて、おそらくその上に今日集めた税が乗っているのだろう。




いつだって、庶民の暮らしは苦しい。


だからこそ、お隣同士で助け合って暮らすんだ。




「おい、何してるんだよ」




すると、揉めている彼らの奥の方から、見慣れた男が登場した。


黒い肌に、服の上からでもわかる筋骨隆々の肉体。


薄い色のメガネをかけていて、髪が刈り上げてあって威圧感がある。




しかし、彼は誰にでもフレンドリーに話しかけてくるので、年の離れた兄みたいな感じだった。


そう、彼こそがこの街のギャングを束ねるバルトという男だ。




「⋯⋯徴税は街の住民の義務だ。払えないなら、出ていけ」




「いつも店主は税金頑張って払ってくれてるんだぞ?お前だって、もっと感謝してもいいだろ」




バルトがそういうと、何人かの聴衆が「そうだ!税金が多すぎるんだ!!」と共鳴した。


まあ、俺も同感ではある。


この行政府で働いている連中は、俺達みたいに汗水垂らして仕事をしたことがあるのか?




そう疑問を持たざるを得ない。




「そうですよね、バルトさん。なんで、俺達こんな奴らに従わないといけないんですか?」




パン屋の店主がバルトにそう訴えた。


徴税官たちは、その様子を何も言わずに見ている。




「まあ、そうは言うけどさ、この税金はこいつらの給料というよりは、勇者の遠征費になっていて、勇者が魔王から守ってくれているおかげで俺達は暮らせているんだ。まあ、今回は俺が払ってやるから」




そういって、バルトはどこからともなく袋を取り出して、金貨を二枚徴税官に渡した。


徴税官は不服そうな顔をしていたが、「⋯⋯次はちゃんと払え」と捨て台詞を吐いてどこかに行ってしまった。




「バルトさん、⋯⋯すいません」




「来月はちゃんと払うんだ。税金だって、俺達の暮らしに役立てられているんだ。それに、困ったら隣を頼れ。いつも言っているだろ」




 そういって、バルトはどこかに行ってしまった。


まあ、俺も帰ろう。




そうして、俺の一日はいつものように終わるのだった。

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