プロローグ 勇者の伝説、とある国で広まっている魔王の話
(勇者の伝説)
昔、この街は魔王軍の襲撃を受けました。
魔物は容赦なく人々を襲い、それらに抵抗した人々も大量の魔物には為すすべ無く、皆殺されてしまったのです。
街からなんとか逃げた住民の数はわずかでした。
これからどうしようかと残った住民で話し合っていたそのとき、一人の若者が手を挙げてこう言いました。
『俺達で、街を取り戻そう。魔王を倒そう』
その提案はバカげたものでした。
そもそも、街の住民全員が抵抗して、このような結果になったのです。
魔王というのは、魔物たちを束ねる魔物の王のことです。
おぞましい姿をしていて、見た目通りの残虐さを兼ね備えています。
『何を馬鹿なことを言っているんだ』
『無理だ。魔王には敵わない』
残った街の住民はそう彼に言いました。
しかし、彼は諦めずに何度も街の住民を説得して『魔王を倒そう!!』と訴えかけました。
段々と、街の住民たちもそれに賛同するようになりました。
たとえ負けたとしても、何もせずに街を取られるわけにはいかない。
せめて、自分たちの街なんだから自分たちの力で守りたい。
そういう思いが、街の生き延びた住民たちに芽生え始めたのです。
そして、一人の若者を筆頭に、町の住民たちは結束し、剣や弓はないけれども、鍬と石で最後まで抵抗しよう、そう結束したのです。
彼らは、自分たちの街に行きました。
そこは、もう前の面影は無く、家々は瓦礫の山となり、砂に埋もれていました。
そして、街の中に突入すると街は魔物で埋め尽くされていました。
人の形をした、二足歩行で猫背。キャッキャと気味の悪い鳴き声を出しながら人々を襲った、恐ろしい魔物です。
しかし、今度の住民たちは違います。
もう、怖がっていても仕方ありません。
住民たちが魔物を前にしてそう決心を固めたとき、若者が飛び出しました。
若者は、住民から譲ってもらった唯一残された剣を腰から抜くと、次々と魔物の首を飛ばしていきました。
彼が通る度に、魔物の首が一つ、また一つと飛んでいきました。
住民たちは驚きました。
彼がそこまで強いなんて知っている人がいなかったからです。
彼は一人で魔物を次々と倒していきました。
そんな彼の姿を見て、住民たちも彼に続きました。街の隅々にまで住み着いていた魔物は、一人の若者とそれに奮起された住民たちによって次々と倒されていきました。
そしてついに、残ったのは魔王だけになりました。
先程までは、必死になって魔物を倒していた住民たちも、魔王を前にすると手足がすくんでしまいました。
しかし、若者は違います。
魔王を前にして、堂々と剣を構えました。
そこからの戦いは、一進一退の攻防が続きました。
しかし、若者はまったく気を緩めず、魔王が一瞬止まったところを逃さずに、若者は剣を振りました。
その一撃は、魔王の胸に大きなキズを作りました。
しかし、魔王はそれではやられませんでした。
若者がもう一度魔王に攻撃を入れようとしたところで、魔王は霧のようにどこかへ消えてしまいました。
住民たちは魔王を撃退したと喜びました。
魔物たちから、街を取り戻したのです。
しかし、若者はすぐには喜びませんでした。
街の住民が『なぜ、喜ばないのか?』と聞くと彼はこう答えました。
『また魔王が攻めてくるかもしれない。そのために、大きな壁を作ろう』そういって、住民たちは彼の指示で街を囲うほどの大きな石の壁を何年もかけて作りました。
今まで色々と悩まされていた砂嵐も、壁のお陰で防ぐことができるようになったのです。
住民たちは若者に『この街のリーダーになってくれないか?』と聞いたのですが、彼はそれを断りました。そして、『俺には、やらなきゃいけないことがあるんだ』と言ったのです。
そして、彼は魔王を討伐するために住民を何人も連れて旅に出ました。
そして、今も彼は街を守るために魔王と熾烈な戦いを繰り広げているのです。
人々はそんな彼のことを、
勇者、と呼びました。
(魔王の話)
近頃、魔王というものが突然現れて、我が国の周辺の地域を襲うようになりました。
魔王は、漆黒の悪魔の馬にまたがり、通る街をことごとく攻撃しては自分のものとしている、らしいのです。
話によると、魔王は角を2本生やして鬼のような形相でこちらを睨んでくるとか、
そして、魔王が通ると空には急に暗雲が立ち込めて、立ちはだかる人々を稲妻が焼き払うだとか、
そして、人の形をした魔物を大量に引き連れていて、魔王軍が通り過ぎたあとには骨すら残らないだとか、
色々な噂が我が国にも流れてきています。
彼らは顔に特殊な模様が施されていて、それを見ることで魔物かどうかの見分けをつけることができます。
彼らは征服した街に大きな壁を作って、人々が逃げ出さないようにしました。
そして、街を一つ、また一つと征服して、街を征服するたびに魔物の数は膨れ上がりました。
魔王軍は、我が国に向けてどんどんと領地を広げています。
このままでは、我が国は魔王軍に領土を乗っ取られてしまいます。
塀を作るのも、軍事力を増強するにしても時間が足りません。
この国にも、英雄がいてくれればどうにかなるのですが、




