第5話「新たな出会い」
カクヨムで40日ほど先行して投稿中です。
【タイトル】「ミミは強くなりたい」
URL:https://kakuyomu.jp/works/2912051604706918976
みんなと別れてから、部屋で目を覚ました。
ぬいぐるみを抱くと、少し湿っていた。
頭がぼーっとする。
ゆっくりと体を起こした。
今ごろ、みんなは何をしているのかな。
部屋は静かすぎて耳が痛いよ。
こんな気持ちではダメ……
頬を叩く。
強くなるには……
よし。
行ってみよう。
部屋を出る前に立ち止まった。
「……行ってきます」
挨拶すると、みんなのぬいぐるみが揺れた。
外へ出ると朝日が目に染みた。
辺りにはまばらに人々が歩いている。
洗濯物を干している人。
急ぐように走る人。
そして、ゆったりと歩く人。
私はそんな人たちに紛れ、ギルドへと向かった。
ギルドへ辿り着くと、深く呼吸をした。
そして……
ゆっくりと、静かに息を吐いた。
勢いよく扉を開ける。
ギロリとした視線が、いくつも突き刺さる。
前はソールさんが保護者として、すべて進めてくれていた。
ここに入るのは初めて。
震える足で一歩踏み込んだ。
奥の受付にいる人は、だらけてカウンターに体を置く猫獣人だった。
みんなが要注意と言っていた人物……
息を呑み、一歩踏み出そうとしたときだった。
視界の端に、値踏みするような目つきで近づいてくる、男の人が映った。
体が強張り、心臓の動きが早くなっていく。
手と足が一緒に出てしまいそうになるのを抑えて、カウンターへと向かう。
「おいっ」
恐る恐る声の方を向くと、そこには大柄で筋肉が盛り上がっている男の人がいた。
「ひゃっ、ひゃぃっ!」
ピンと背筋を伸ばして、顔を見上げる。
髪が無く、鋭い目つきに、涙が溢れそうになった。
「嬢ちゃん、こんな場所にどうした?」
低い声が響く。
「嬢ちゃんは、あのロリコン野郎と一緒にいたやつだろ?
とうとう手をつけられて、訴えに来たのか!?」
ロリ……コン?
一瞬頭が真っ白になった。
ロリ……
「ロリーさん?」
「ん? あぁ、そんな名前だったかな」
私は首を振った。
筋肉さんが止めるくらいに振り続けた。
「あの、強くなりたくて……。
でも、どうすれば強くなれるのかわからなくて」
「それは、筋肉をつけることだな!」
筋肉さんが何度もポーズをとり続けていた。
「何言ってんだ!
お前は万年最低ランクだろ!」
ギルド内に笑いが巻き起こった。
「まぁ、依頼するのも手じゃないか?
今ここにはいない強い奴が見てくれるかもしれないぞ」
筋肉さんは気にも留めないように、丁寧に教えてくれた。
実は……強いのでは?
「ありがとうございます!」
私が深くお辞儀をすると、筋肉さんが手を上げて離れていった。
去っていく筋肉さんを見ると、チラチラとこちらを見ていた。
少しだけ、ロリーさんに似てるかも?
私は微笑むと、受付に駆け寄った。
「今は止めた方が……」
そんな言葉が、座っている人たちの方から聞こえた。
「何か用かみゃ?」
すでに、目の前に受付の猫さんがいた。
「えっと、依頼をしたいのですけど……」
「この紙に、住所、氏名、年齢、依頼内容を書くみゃ」
「は、はい」
手早く書いて渡すと、だるそうに読み上げ始めた。
「えっと、強くなれる方法を探しているみたいみゃ! 誰か受けろみゃ!」
あれ?
依頼ってそんな感じで探すのかな?
猫さんが次々に視線を送る。
送られた相手は目を逸らして、決して目を合わせなかった。
「おみゃーが受けろみゃ!」
受付猫さんが、たまたまギルドに入って来た人を指さす。
振り向くと、開いている扉から光が入り、眩しくて、黒いシルエットを映し出していた。
頭の上部についている耳のようなものをピクリと動かし、お尻の辺りから何かが揺れていた。
「わかったにゃー」
女の人の声が聞こえた。
えっと……
なんだか適当に決まった気がするけれど、依頼料とかどれくらいなのだろう?
瞬きをしたら、その人が目の前にいた。
白い歯が笑顔から零れていた。アネットさんより明るい色の栗毛。
そして、首元くらいまでの短めの髪。
薄着の服だけれど……
所々、体毛が肌を隠していた。
まるで模様のようだった。
一瞬で移動したし、凄い人なのかもしれない。
「よ、よろしくお願いします」
私は目を丸くしながらも丁寧にお辞儀をする。
「その代わり……」
私は顔を上げて息を呑んだ。
「飯をよこせにゃ……ツムギが失踪したにゃ。
にゃーの飯が……」
凄いお腹の音がギルド内に響いた。
ツムギさんって、あのツムギさん?
でも、失踪ではないし。
別の人なのかな?
考えるのは後にして、ご飯。
「は、はい! 分かりました!」
いつの間にか近づいていた、栗色の大きな瞳が潤んでいた。
息が当たるほど、顔が近い。
「にゃーはニャーにゃ!」
えっと……ニャーにゃさん?
「私は、ミミ……です」
「ミミ、さっさと行くにゃ」
そのまま手を引かれて走り出した。
鮮魚店へ入ると、ニャーにゃさんが涎を垂らしながら魚を見ていた。
「な、何か買うかい?」
店主さんが少し困ったような顔をしていた。
「この大きな魚をよこすにゃ。お金はミミが払うにゃ」
店主さんが苦笑いしながら魚を渡した。
私はお金を払い、ニャーにゃさんと外へ出た。
よほどお腹が空いていたのか、魚を丸かじりする。
調理もしていないのに、骨までバリバリと噛み砕いていた。
猫獣人さんって、みんなこうなのかな?
「ふぅ、食ったにゃ……。次は料理済みのが食べたいにゃ」
ニャーにゃさんはお腹をさすっている。
とても満足そうな表情だった。
「はい!」
「それで、強くなりたいにゃ?」
「はい、お願いします」
私は手を引かれて歩き始めた。
「よし、ついてこいにゃ!」
「ニャーにゃさん……どこへ?」
「外にゃ!
それから、にゃー先生と呼べにゃ!」
「はい、にゃー先生!」
話しながら歩いていると、町の西門が見えてきた。
「もっと、腹の底から声を出すにゃ!」
「はい! にゃー先生!」
門から出ると、遠くにうっすらと天まで届きそうなほどの大木が見えた。
なんだか、ふんわりと懐かしさを感じ、胸を押さえた。
深く考えようとしたとき、にゃー先生に手を引かれた。
「こっちにゃー」
にゃー先生の栗毛が風に揺れる。
私たちは、南の方にある森へと入っていった。
森に入ると、にゃー先生は鼻を鳴らしていた。
私は静かに見守る。
「ちょっと待ってろにゃ……」
風を嗅ぐように、鼻を上の方へ向けている。
「はい……」
小声になっていたので、私も釣られて小声になる。
「こっちにゃ……」
にゃー先生が私の手を引いて、茂みをかきわけながら慎重に進む。
その先で、キョロキョロと周囲を気にしている様子のゴブリンを発見した。
「ミミ、ここで見てろにゃ」
にゃー先生が飛び出す。
「死ねにゃー!」
ゴブリンが声に反応したときには、もう遅かった。
あっという間に肉薄した、にゃー先生の拳がゴブリンの顔を殴り飛ばした。
にゃー先生がキラキラした顔でこちらを見る。
その拳からは、緑色の血が滴り落ちていた。
「次は、ミミの番にゃ!」
え……
カクヨムで2026/9/19に完結予定です。
【タイトル】「ミミは強くなりたい」
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