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「ミミは強くなりたい」  作者: 月ノ瀬 コロン


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第31話「ミミは木人と言葉を交わす」

 にゃー師匠の空中での体さばきが、頭の中から離れない。


 私もあそこまで動けるようになりたいなぁ。


 前を歩くにゃー師匠が疲れているのか、肩を落としている。


 受付の猫さんを捕まえるのは大変だったのかな?

 でも、何で追いかけていたのだろう?

 みんなの緊迫感に引っ張られていったけれど、魔物がこの街を攻めてきたのかな?


 家の中に入り、温かなお湯で癒されると部屋へと戻った。


「みんな、おやすみなさい」

 みんなのぬいぐるみを、ぎゅっと抱き寄せた。



 翌日、私たちは家を出た。


「にゃーにゃー。先輩と何を話してたにゃ?」

 右から、左から、にゃー師匠が何度も顔を覗かせる。


「ギルドの地下に面白いものがあるって聞きました」


「面白いものにゃ?」

 首を傾げるにゃー師匠を追い抜き、フーラさんが前に出てきた。


「それなら知ってるぞ。魔法を吸収するやつだろ?」


「そんな物があるのか」


 知る人ぞ知るって感じなのかな?


「何でにゃーが知らないんだよ。もう長いだろ?」


「興味ないからにゃー」


「お姉さんは知らなかったのですか?」


「あぁ、私はギルドに在籍してないからな」


 そうだったんだ……

 それなのに、私に付き合ってくれて、魔物討伐にも手を貸してくれたの?


「どうした?」

 私が立ち止まっていると、お姉さんも立ち止まった。


「い、いぇ。いつもありがとうございます」

 微笑むと、お姉さんの頬が少しだけ赤く染まったように見えた。


「早く来るにゃー」


「あの先輩は待たせておくといじけるぞ?」


「は、はい!」


 私はお姉さんの手を取り、駆け出した。

 走りながら首を傾げる。

 あのレイナードさんが……いじける?



 ギルドへ、にゃー師匠が勢いよく飛び込んだ。


「先輩はいるかにゃー」


 えっぐ、えっぐ……

 そんな泣き声が聞こえる。

 受付の猫さんがカウンターに突っ伏して泣いていた。

 胸が締め付けられる。


「あ……」


 声をかけようとした。


「来たか、こっちだ」

 右奥からレイナードさんが手招きをしている。


「まあ、元気出せにゃ……今度差し入れを持ってきてやるからにゃ」

 受付猫さんの背中をさすると、にゃー師匠は先輩の方へ向かっていった。


 私たちも先輩に駆け寄る。


「今日はよろしくお願いします」


「おう!」

 頭を下げると、にゃー師匠がレイナードさんの隣に立つ。


「任せろにゃ!」


「今日は引っ込んでろよ?」

 フーラさんがにゃー師匠を引っ張り、私たちは階段を下りていった。


 レイナードさんが重厚な扉を開ける。

 重そうな分厚い扉を軽々と開けていた。


 私もあれくらい簡単にできるようになるのかな?


 部屋の中から爽やかな風が吹く。

 木の匂いが鼻をかすめた。


 ただの広い部屋。


 その真ん中に人の形を模した何かが立っていた。

 予備なのか、同じものが壁際に並べられている。


 様々な武器も置かれている。


 そして、人の形を模した何かの頭が開かれた。


 紙がせり上がる。

 近づいて見ると文字が書いてあった。


【よく来たな!】


 話せる?


「これは木人君。その昔に小さい女神が作り出したといわれている代物だな」


【よろしくな!】


「よ、よろしくお願いします」


 深々と頭を下げると、木人君が胸を張るように動いた気がする。


 顔を上げ、改めて見てみる。


 丸太……


 そう、受付の猫さんが使っていた丸太をいくつも繋げて人の形をとっている。

 目の部分はくり抜かれ、頭から文字が書かれた紙が出てくるらしい。

 不思議なことに人の言葉が分かっている。

 どうやって動いているのだろう?


 私が考えている間に、レイナードさんが木人君と話をしていたみたい。


「よし、まずは狼だ」


【アオーン……ってね】


 形が狼の姿に変形していく。

 丸太だけど。


「ミミ、メイスを構えろ」


「はい!」

 レイナードさんの顔が近づいてくる。


「顔だけを見ていてもダメだ。相手の目を見て、足の動きを見ろ」

 私の目線になり、指を差して教えてくれる。


「はい!」


「そうにゃ! 普通は空中で方向を変えることができないにゃ! こいつらは、だけどにゃー」


「おい、だから先輩と張り合うなって!」


 ただ見据えるだけではダメだったんだ……


「はい!」


【ジリジリ……行く】


 でも木の枝と、それに引っかかるように出てくる紙が気になっちゃう……

 そんな瞬間だった。


 私は木人君に押し倒されていた。


「あ、あれ……」


【集中力が足りない。たわけ!】


「ご、ごめんなさい。もう一回、お願いします!」


 木人君が離れ、私はメイスを握りしめる。


 深く息をして、腰を落とした。


 目だと思われるくぼみの先には、私がいる。


 ジリジリと周りを歩く木人君に、私も周って常に正面を向く。


 風が止まった。

 息を呑む。


 熱い。

 汗がポタリと地面に落ちた。


 そのとき、木人君が後ろ足を踏み込んだ。

 メイスを下げる。


 木人君の前足が上がり、一息に迫り来る。

 メイスを振り上げた。


 前足が届くよりも早く、木人君の顔を弾く。


【痛い】


 吹き飛んだ木人君が、そのまま両足で着地した。


「カウンターは上手いな」


「ミミ、いい攻撃にゃ!」


「いや、そうじゃない。受け止めて弾く。そして次の攻撃に備える。今のミミにはそういう練習が必要だ」


 あ、そうでした。


 多数の狼に対抗できるようになる訓練でした。


「ご、ごめんなさい。もう一度お願いします!」


 レイナードさんが頷くと、木人君が増えた。


 胸が高鳴る。


 メイスをしっかり握りしめ、三体に増えた木人君を見据えた。

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