↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ミミは強くなりたい」  作者: 月ノ瀬 コロン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/50

第28話「ミミは、お芋が好き」

「ミミー。それ、取ってにゃー」


 びしょ濡れで帰って来てから翌日、私たちはおやつとしてお芋を食べていた。


 大好きなお芋に心が弾む。


「ん~」

 口の中でホクホクとした食感と、甘いタレが舌をとろけさせ、頬に手を当てる。

 甘く煮たお芋の匂いが鼻を抜けていく。

 顔が綻び、幸せな気分になると、再びお芋に手を伸ばした。


「にゃーにゃー!」

 何かを必死に訴えるような声にはっとしてにゃー師匠を見ると、お芋が置かれた大皿を指さしていた。


「あ、はい!」


 お芋が美味しくて気づかなかった。

 私が手を伸ばすと、大皿が持ち上がる。


 あ、全部……


 動きが固まり、手を伸ばしたままになった。


「そんな悲しい顔をするな」

 お姉さんが小皿に分けてくれ、心が跳ねる。


「お姉さん、ありがとうございます!」

 にこりと微笑むと、お姉さんも口元が少しだけ緩む。


「ほら、なんでもミミに頼るな」

 そのまま、大皿をにゃー師匠へと運んでいった。


「ありがとにゃー」

 にゃー師匠が転がりながら次々とお芋を口に入れ、私も食べ進める。


 お姉さんがため息をついたとき、扉が開いた。


「お、何を食べてるんだ?」

 声の方を見ると、フーラさんが入ってきた。


「あ、フーラさんも食べ、ます……か…………」


 小皿に置かれた私のお芋は無く、にゃー師匠が大皿を舐めていた。


「フー、遅かったにゃー」

 立ち上がるにゃーさんが、フーラさんへ近づいていく。

 そのにやついた顔を見て、フーラさんが一歩引く。


「な、何だよ?」

 狼に襲われるウサギのように縮こまるフーラさんに、にゃー師匠が飛びかかった。


「お、おわ! わかったから、止めろ!」


 懐をまさぐられたフーラさんの服は乱れ、私の目の前が暗くなった。

 冷たい手が目元に触れる。


「ミミは見ないほうが良い」


 お姉さんの声。

 にゃー師匠の楽しそうな声。

 フーラさんのくすぐったそうな声が聞こえる。


「これは、貰っていくにゃ!」


 目の前が明るくなっていく。


 フーラさんの帽子が落ちている。

 お姉さんがフーラさんを隠しながら何かをしていて、にゃー師匠は袋を軽く上に投げていた。


「ミミ、お金も手に入ったし、今日は買い物に行くにゃ!」


「はい!」

 にゃー師匠が外へ向かい、服装を正したフーラさんが追っていく。


「ほら、行くよ」

 お姉さんが手を差し出してくれる。

 その手を取り、私は前の二人を追った。

 冷たくひんやりとした手は、少し心地よかった。



 外へ出ると、昨日の急変した天候とは違い、穏やかな日差しが降り注ぐ。

 地面は乾き、優しい風が肌を撫でる。


「早く来いにゃー」

 にゃー師匠が呼んでいる。

 私が走ると、お姉さんも走る。


 これがなんだか、ソールさん、ロリーさん、アネットさんに重なり、少しだけ胸が苦しく、少しだけ胸が軽くなる。

 変な気持ちに蓋をして、私はにゃー師匠たちと道を進んでいく。



 武具屋へ入ると、鉄の臭いが出迎えてくれた。

 穏やかな店主さんの顔が、にゃー師匠を見た瞬間に引きつる。

 何だろうと思いつつ店内を見回すと、そこには様々な武器が並べられていた。


 ソールさんが慎重に選んでいた盾。

 ロリーさんがデザインで選んでいた剣。

 アネットさんが強度を確かめていた杖。


 懐かしい思い出。

 私にとっては大切な思い出。


 そんな思い出にひたっていると、何かが倒れる音が聞こえた。

 目を向けると、防具立てに飾られていたものが横になっていた。


「ご、ごめんにゃー!」


 店主さんは額に手を当てていた。


「あぁ、いいよ、触らないでくれ。で、今日は買っていくのか?」

 片づけ始める店主さんが呟くと、にゃー師匠がキョロキョロと視線を動かす。

 獲物を見つけたように、にゃー師匠の目が鋭くなる。


「これにゃ。これを買うにゃ!」

 一つのブローチを手に取り、店主さんにお金を渡す。

 店主さんはため息をつきながらお金を受け取っていた。


 凄いものなのかな?


「さぁ、出るにゃ!

あと、プレゼントにゃ」


 先ほど購入したブローチを取り出し、私の胸元へつけてくれる。


「ありがとうございます」


 ブローチが日の光を浴びて、キラリと赤く光った。


「お前、いつもあの店でやらかすよな」


「そ、そんなことないにゃ! 買うきっかけを作ってるだけにゃ!」

 ジト目で見るフーラさんに、懸命に言い訳しているにゃー師匠がどんどん赤くなっていく。


「自分でも変なことを言ってるってこと、分かってるんだろう?」


「……にゃ」

 お姉さんの声に、にゃー師匠がしおれていく。


 そのとき、街の門の方から、人が逃げるように必死に走ってきた。


「な、なんですか?」

 途端に、心が曇っていく。

 にゃー師匠たちは目を丸くしている。


「これは……」


「お、おい、これって!?」


「見覚えがある。アイツにゃ!」


 叫ぶにゃー師匠とけたたましい鐘の音が同時に鳴り響いた。


「ギルドに行くぞ!」

 フーラさんの言葉に頷き、私たちは駆け出した。



 ギルドへ到着すると、いつも座って喋っている冒険者たちが武器を手に立っていた。

 男の人が肩を落とし、メガネさんが頭を撫でていた。


 にゃー師匠が鼻を鳴らしている。


「この甘ったるい匂いは、やっぱりにゃ!」


 甘い匂い……?

 私にはよくわからなかった。


 首を傾げつつも中へ入ると、メガネさんと目が合った。


「みなさん……すみませんが、ミャーを見つけたら縛って連れてきてください!」


 ミャーさんって、受付の猫さん?


「やっぱり、アイツかにゃ!」


「それから、街の外で迎撃する部隊、ダンジョンから出てくる魔物を押さえる部隊で分けます。

私は捜索隊を指揮するので、レイナードさんは、にゃーさんのパーティーと外へ。

他の戦える人は街中にあるダンジョンへ。

戦えない人は私について来てください」


 戸惑っている間に話が進んでいく。


「ほら、お前ら行くぞ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。