↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ミミは強くなりたい」  作者: 月ノ瀬 コロン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/50

第24話【ソール視点】「ダンジョンは一筋縄ではいかない」

 曲がり角で、蛇のような尻尾がゆれている。


「氷槍の鋭き穂先、狂い咲き敵を貫け――アイシクルランス!」

 尻尾に手をかざしたアネットから、氷の槍が放たれた。


 蛇の赤い尻尾を捉えた。

 不気味な叫びを上げ、尻尾が千切れるのとともに氷の花が咲く。


「逃げたみたいだけど、何だったのかしら……」


 ロリーが通路を凝視している。


「あいつ、トラップに誘ってたんじゃねぇか?」


 近づいていくロリーが、その途中で足を止めた。

 剣を抜き放ち、床を軽く叩く。

 同時に飛び退いた。

 ガコンという音とともに、その床がへこんだ。

 直後、へこんだ床の横から、明らかに吸うと危なそうな、紫色の煙が噴き出す。


 これは、さらに気を引き締めなくてはいけないな。


「毒……でしょうか」

 ツムギさんがいれば治してもらえそうだが、ツムギさんがやられてしまっては全滅もありうるな。

 狡猾な魔物に、殺しに来るトラップか……


「ロリー、トラップは探せるか?」


「ああ、少しだけ先を見てくるわー」


「では、ロリーさんが戻ってくるまで、少し休憩にしましょう」

 荷物を地面に下ろしたツムギさんは水袋を取り出すと、俺とアネットに手渡してくれた。


「ツムギさん、ありがとう」


「ありがとう、助かるわ」


 ちびちびと水を口へ入れて飲む。

 すぅっと体に染み込み、少し軽くなった気がした。


 同じく手渡された干し肉を噛みちぎり、飲み込んだ。


 緊張感が無いのも良くないが、緊張して硬くなるのも良くない。

 ツムギさんの行動は、適度に緊張をほぐしてくれる。


 そんなことを考えていると、ロリーが戻ってきた。


「あ、いいなそれ」

 ツムギさんがロリーに近づいていく。


「はい、ロリーさんの分です」

 満面の笑みを浮かべるツムギさんに、ロリーは顔を赤くして目をそらした。


「とにかく、トラップが多いな」


「解除はできそうか?」


「いや、避けていくしかないな」


 一息つくロリーを置いて、通路の先を見据えた。

 一定間隔で通路が分かれている。


 よく見ると、蛇の尻尾は赤、青、黄と三色あるみたいだ。


 休憩を終えた俺たちは、ロリーを先頭に通路を歩き始めた。


「ここは端を通ってくれ」

 壁に沿って、ロリーが軽々と通っていた。


「ええ……」

 壁にもたれながらアネットが慎重に進んでいく。

 俺は先にツムギさんを行かせて、念のために後方を警戒する。


「通りました」

 透き通るような、綺麗な声が響いた。


 俺も向かおうと振り向く。


 けれど……


 ツムギさんが慎重に進んでいる途中だった。


「気のせいか?」

 そう思ったけれど、クスクスと女の笑う声が聞こえる。


 前の三人は聞こえないのか、慎重に通るツムギさんを見ている。


 右も左も壁だ。

 後ろには誰もいない。


 残るは……


 俺はお玉を抜き放つと、上を見た。

 天井から女の顔だけが見え、俺を見て笑っている。


「魔物か!?」


 足を踏ん張り、思いっきり飛び跳ねた。

 天井へ届くくらいまで飛び、お玉を振るう。

 甲高い音とともに、女の顔が霧のように消えてしまった。


「何なんだ……」

 着地し、周囲を確認するけど、女の顔は姿を消していた。


「ソール、何かあったのか?」


「ちょっと、大丈夫?」


「ソールさん、大丈夫ですか?」

 それぞれが心配そうに俺を見ていた。


「今魔物がいた気がしたんだが、気のせいだったみたいだ。すぐにそちらへ行く」

 俺は壁際を通り、みんなの元へと向かった。


「ここから、よっと。

飛び越えてくれ」

 ロリーが軽々と飛び越え、それぞれもならって飛び越えていく。


 俺は周囲を警戒していた。


「ねぇ、そっちに行くの?」

 右の壁に出てきた女の顔にお玉を振るう。

 お玉は空を切り、やはり霧のように消えてしまった。


「そうそう、そっちには何もないよ?」

 左の壁から男の顔が出てきた。


「……お前らは何なんだ」

 お玉を握りしめ、男の顔と向かい合った。


「あははっ。あははははっ!」

 笑いながら、男の顔は消えていった。


「一体、何なんだ……」

 頭に手を当てて俺が首を振っていると、肩に手を置かれた。


「ソールさん、大丈夫ですか?」

 ツムギさんが俺の顔を覗き込んでくる。

 その綺麗な手から、温かな光が流れ込んできた。

 穏やかな気分になり、気持ちが落ち着く。


「ツムギさん、ありがとう」


「はい」

 微笑んだツムギさんはトラップを飛び越えていく。

 俺も同じように飛び越える。

 俺は床をよく見た。


 トラップがある場所は少しだけ色が違ったり、他とは形が違うのがあるんだな。

 しかし、ぱっと見では溶け込んでいて、まったくわからないな。


「あの尻尾は何なのでしょうね?」

 呟くツムギさんの視線を、俺たちも追う。

 襲ってくる様子もないし、さっきの顔と何か関係があったりするのだろうか?



 いくつもトラップを乗り越え、ようやく突き当りに辿り着いた。


 奥の部屋へと続く扉がある。

 俺たちは息を呑み、扉を開けた。


 足を踏み入れると、中は広い空間になっている。

 神聖な空気はなく、かすかに鉄の臭いがする。


 壁には何かがはまっていた。


 中央に辿り着いたとき、それらの目が赤く輝いた。

 前に三体、左右にも三体ずついる。


 ツムギさんを中心に、俺たちが囲む。

 鋭く冷たい光に包まれる。

 武器の強度が増した気がする。


 俺たちはツムギさんに視線だけ送り、頷く。


 鉄鍋とお玉を構え、俺は気合を入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。