↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ミミは強くなりたい」  作者: 月ノ瀬 コロン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/50

第14話「ミミの耳は甘い」

 今日も、私はメイスの素振りをする。


 だらりと地面へつけ、一瞬だけ力を込めて振り上げる。 

 ブゥンッと風を切る音がして、体がメイスの重さに振り回される。

 当たれば痛そうだけれど、こんなに振り回されていて良いのかな?


「あの、にゃー師匠」

 聞こうとしたけれど、にゃー師匠とフーラさんの言い合う声が聞こえてきた。


「ミミはにゃーの弟子にゃ!」


「本人が魔法を知りたいって言ってるんだから、別に良いだろうが!」

 私の方針で争っているのを見ると、少し心苦しい。


「それもそうにゃ」


「何なんだよ……」

 よくわからないけれど、魔法を教えてもらえそうなことに、心がウキウキと踊る。


「というわけで……ミミ、ついてこい!」


「はい!」


「フーは偉そうにゃ」


「師匠とか呼ばせている、お前のほうが偉そうだろうが!」


 やっぱり、二人は仲が良いのか悪いのかわからない。

 いつも何かと言い合っているけれど、険悪な雰囲気は感じない。



 いつもの森、その手前で止まると、フーラさんが振り向いた。


「よし、ミミは魔力の流れが見えるか?」


 私にはよくわからないので、首を傾げた。


「流れ……ですか?」


「とめどなく、溢れ消えゆく水流よ、清め轟き豪雨をここに」

 詠唱を始めたフーラさんは浮き上がり、空へ上がっていく。


 これが流れ?


「――ウォータープレッシャー!」

 勢いのある大量の水が森を呑み込む。

 木々を押し流しそうな水流が森の中へと流れていった。


 フーラさんが空から降ってきた。

 そのまま両手を広げて着地する姿が、なんだか可愛らしい。

 こんなことを思っていると、怒られるかもしれないけれど、つい笑みがこぼれてしまう。


「と、まぁ。俺の場合は魔力が体を浮かせてしまうんだ」


 ほぇ~。


 頭に入ってこなかった。

 結局、魔力の流れは私には見えない。


「お、おい……大丈夫か?」


「お前の話は難しいにゃ。もっと体で教えろにゃ」

 口をぽかんと開けていると、フーラさんが心配そうに覗きこんでいた。


「ご、ごめんなさい。私には見えませんでした」


「そ、そうか……じゃぁ、基本形だ! 手を前に突き出し、今から言う言葉を復唱してみるんだ」


「はい!」

 手を上げて、大きな声で返事をする。


「雷よ……」

 フーラさんに続いて、私も言葉を紡ぐ。

「雷よ……」


「炎よ……」

 フーラさんが言うように、魔力を意識して……

「炎よ……」


 その後も色々な詠唱の一節を紡いでいった。


「くっ。俺の教え方が下手なのか……」

 フーラさんが地面に手をつけて頭を下げていた。


「あ、あの……ごめんなさい」

 なにもできなかったことが心苦しい。


「ミミは悪くないにゃ」

 私が目を伏せると、にゃー師匠が頭を撫でてくれた。

 ソールさんとは違う心地よさを感じ、顔を上げる。


「魔力自体はあるんだよなぁ。垂れ流しているくらいだから魔力量は多いはず」


「垂れ流しているのですか?」

 私が首を傾げていると、フーラさんと目が合った。


「あぁ。ずっと耳から出ているぞ」


「甘かったにゃ」

 そういえば、にゃー師匠に舐められたけど、あれって起こそうとしたわけではない……?

 そのうち、食べられる……

 ゾッとした。


「顔を青くしてどうしたにゃ?」


「い、いぇ。なんでもないです」

 笑ってごまかす。


「本来は離れた場所に魔力を送って、形にするんだよなぁ。ミミのは離れたら自分のではないのかもしれないなぁ」


 送る?

 離れる?


「難しい話は止めるにゃ! ミミがわからないって顔をしてるにゃ」

 頭に「?」が浮かんでいる私を見かねて、にゃー師匠がフーラさんに詰め寄った。


「つまり、どういうことにゃ!?」


「あ、あぁ。つまり、触れれば発動できるかもしれない?」

 にゃー師匠が私の手を掴み、フーラさんに触れさせる。


「もう一回やるにゃ!」


「は、はい!」

 暴れるフーラさんをにゃー師匠が押さえている。

 私は魔力を意識して、先ほどの一節を思い出した。


「雷よ……」

「炎よ……」

 フーラさんが涙目になっているなか、口にした言葉に対して何も起こらなかった。


「実験は失敗にゃ……」


 私には無理なのかな……


「お前、大丈夫にゃ?」

 にゃー師匠が覗き込んだ先には、フーラさんが恍惚とした表情を浮かべ、頬は赤みがかっていた。


 よく見ると、淡い光に包まれている。

 この光は覚えている。

 みんなの傷に触れて、傷を治したときと同じだ。


「おーい。帰って来いにゃー」

 にゃー師匠がフーラさんの体を揺すり始めた。


 回復魔法が発動したのかな?

 詠唱の一節は関係ないってこと?


 にゃー師匠がフーラさんを持ち上げて、ガクガクと揺らす。


「あ、あの。にゃー師匠、そんなに揺らしたら……」

 フーラさんは白目をむき、動かなくなっていた。


「にゃー! ミミ、頼むにゃ!」

 そっと地面に置かれたフーラさんへ触れる。

 呼び起こすように優しく丁寧に……


 淡い光に包まれ、フーラさんが目を見開いた。


「うにゃっ! びっくりしたにゃ」

 心配そうに覗きこんでいたにゃー師匠が、後ろへ飛び跳ねた。


「いててて……」

 気づいたフーラさんが頭を手で押さえて振っている。


「うーん。ミミは回復魔法しか無理だと思う」

 フーラさんが真剣な眼差しで、私の目を見た。


 やっぱり、私には無理なんだ。


「だが、悪いことじゃないぞ。ミミは回復魔法のスペシャリストだ!」


「すぺしゃりすと?」

 私が首を傾げて聞くと、フーラさんが頷いていた。


「あぁ。回復魔法なら誰にも負けないってことだ!」


 誰にも負けない……

 心がすぅっと軽くなった。

 思わず顔が緩む。


「えへへ……」

 とろけそうな頬に手を当てていた。


 今まではこれしかできないって思っていたけど、それで良いと認められたみたいでなんだか胸が温かくなった。


 そうじゃなかったんだ。

 これで良かったんだ……


 もっと伸ばす方へ頑張っていれば、みんなと一緒にいられたのかな。


 ううん、違う。


 もっと、もっといろいろなことを学んで、みんなが帰ってくる前に迎えに行くんだ。


「あの、フーラさん。ありがとうございました!」


「あ、ああ……?」

 フーラさんは首を傾げていた。


「そうと分かったら、次の特訓にゃ!」


「はい! にゃー師匠、お願いします!」


 そして、にゃー師匠との修行が再開した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。