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「ミミは強くなりたい」  作者: 月ノ瀬 コロン


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第13話【ソール視点】「ソールは調子が出ない」

 何かと世話を焼いてくれるツムギさんには、足を向けて眠れないな。


「ああ、ツムギさん、ありがとう」


 ミミと別れてからというもの、なぜか調子が出ない。

 知らず知らずのうちに鍋の蓋を持っていたり、剣ではなくてナイフだったりと……

 もっとしっかりしなくては。


「ソール。ほら、食べなさいよ」

 アネットが俺のスープをよそってくれたようだ。


「ああ。ありがとう」

 一気に飲み干すと、出発する支度を始める。


「器は置いていきなさいよ? 洗ってくるから」


「ん? ああ、すまない」

 器をアネットに渡し、テントを片づけ始めた。


 ミミは元気にしているだろうか。

 寂しくしていないだろうか。


 そもそもこの依頼を……

 いや、直々の指名依頼を断るわけにはいかないか。世話になってるしな。


 俺もミミのぬいぐるみを作ってもらうんだったなぁ。


「はぁ……」

 ロリーと同時にため息をついた。


 こいつも寂しいんだな。

 よし、俺が慰めてやるか。


「ロリー」


「ん? どうした?」

 ロリーの頭に手を置いた。


 ゴワゴワの髪だな。


「お、おい! 何しやがる!?」

 ロリーが飛び退いた。


 何かを間違えたらしい。


「ああ、ミミ……」


「俺はミミちゃんじゃねぇ!」


 何を怒っているんだ?


「ああ、すまない。お前も寂しいんじゃないかと思ってな」

 顔を青ざめるロリーはさっさと片づけを終わらせ、震えながら走っていった。


 まだ震えているのか。


 俺も手早く片付けてみんなに合流した。


 アネットの分はツムギさんが片付けてくれたみたいだな。

 みんなのことを気遣ってくれて、本当に助かる。

 感謝してもしたりないな。


「お待たせ」

 微笑む俺を見て、みんなは目を丸くしていた。


「ちょっと、ソール?」


「お、おい?」


「ソールさん、私が取ってきますね?」

 俺は何かしただろうか?


 ツムギさんがテントを設営した場所へ走っていった。

 そして、俺の荷物とともに帰ってくる。


 おっと……うっかりしていた。

 テントを片づけて荷物にまとめたんだけどな。


「はい、ソールさん。荷物を忘れないでくださいね」

 満面の笑みで、嫌な顔一つ浮かべずに俺に手渡してくれた。


「ああ、ありがとう。ツムギさん」


「さて、行くか!」

 俺はみんなを見る。


「そうね!」

 アネットは詠唱の練習をしている。大丈夫だろう。


「早く終わらせようぜ!」

 ロリーは手の震えがおさまっている。これも大丈夫だろう。


「はい!」

 ツムギさんは微笑みながら、みんなをきちんと見ている。問題ないだろう。



 俺たちは未知のダンジョンへ向かって歩き出した。

 確か渓谷の上の方だったな。


 渓谷へ向かって歩いていると、再び熊の魔物が現れた。


 咆哮を上げる構えをしている。


「同じものは通しません!」

 ツムギさんが結界を発動させた。


 外から入ってくる音が一切消え、アネットが慎重に、一音一音、大切に詠唱を紡ぐ。


「天から 来たれ 雷よ 唸り上げ 敵に穿たん」


 詠唱の完了とともに、ツムギさんとアネットが目配せをした。

 結界が消えるのと同時に、魔法が放たれる。


「――サンダーレイン!」


 前とは違う極太の雷が轟き、熊を襲う。

 辺りが何度も瞬き、あまりの眩しさに手で視界を遮り、目を細めた。

 稲妻の轟音が止むと、焦げた臭いが漂ってくる。


「アネット……すごいな」

 アネットを見ると、膝に手を当て、背中を丸くしていた。


「はぁ、はぁ……魔力をほとんど込めちゃったわ……」


「アネットさん、凄かったですよ」

 ツムギさんが駆け寄り、背中をさする。


「これ、ヤバいな……」

 ロリーは熊の魔物近くの地面で、まだバチバチと弾けている雷を見ていた。


「仕方ないな、ほら……乗れ」


 俺はアネットに近づき、背中を見せてしゃがむ。

 ツムギさんがアネットを支えながら、俺の背中にアネットを預けた。


「意外と重いな」


 これは言わないほうが良いだろう。女は体重を気にするらしいからな。

 いや、人によるのか? 男にも気にする人がいるかもしれない。

 言わなくても良いことは言わないに限る。


「ソールさん……」


「ん?」

 アネットがプルプルと震えていた。


「後で覚えていなさいよ……」

 低い声が耳元で聞こえた。


「す、すまん……」

 何かわからないけど、とりあえず謝っておくか。



 俺たちは再び歩き始めた。


「そういえば、さっきの熊は少し大きくなかったか?」


「ん? そうだったか? 分からなかったぞ」


「よく見る暇がなかったしね」


「そうですね。私も分からなかったです」


 俺の勘違いだったのか?



 橋を渡ってしばらく平地を歩くと、洞窟が静かに口を開けていた。


「未知のダンジョンって、ここか?」


「えっと、ここの内部に見つかったみたいですね」


「そうか。入口にキャンプを張って、この洞窟から調べてみるか」


「ああ、そうだな」

 それぞれが平地にテントを設営していく。

 俺もそのまま、設営を始めた。


「ね、ねぇ……降ろしてくれないかしら?」

 耳元でアネットが囁いた。


「ああ、すまん。忘れてた」


 まるで体の一部のようになっていて、すっかり忘れていた。

 俺がしゃがむと、アネットが地面に足をつける。


「もう、大丈夫なのか?」


「えぇ、ありがとう」

 アネットが俺の頭をくしゃくしゃにする。


「これはさっきの仕返しよ」

 そのままツムギさんの元へ走っていってしまった。


 この程度で済ませるとは、まだ調子が悪そうだな。

 アネットを降ろして体が軽くなり、俺たちは手早く設営を終えた。


「さて、必要最低限。念のために軽く食料を持って入るか」

 全員を見て頷き合い、俺たちは洞窟へと足を踏み入れた。

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