↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ミミは強くなりたい」  作者: 月ノ瀬 コロン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/50

第11話【ツムギ視点】「ツムギは頑張る」

 ミミちゃんと別れてから街道を歩いていく。


 詠唱で噛んで、しょげるアネットさん。

 禁断症状が出ているロリーさん。

 一番まともそうに見えて、一番放っておけないソールさん。


 このパーティーは大丈夫なのでしょうか?


 横の森から視線を感じる。


 私は素早く、みんなへシールドを張った。


 突如走ってきた熊の魔物が、木を引っこ抜いて薙ぎ払う。


「私が押さえます!」

 幾重にもシールドを張り、薙ぎ払う木を受け止めた。

 パリンと何枚か砕けたけれど、被害もなく止められた。


「アネットさん、お願いします」


「え、えぇ……」

「天から来たれ雷よ、唸り上げ敵に穿だん――チャンダーレイン!」


「あっ!」

 上空から稲妻が降り注ぐ。

 極小の稲妻がちょろっとだけ熊に当たり、少しだけ痺れさせた。


「俺がやる!」

 ロリーさんが飛び出し、震える手で剣を抜き放った。

「くそっ!」

 ガタガタと手足を震わせ、熊に斬りかかる。


 熊が大きな手を振りかぶった。

 私は熊の手をシールドで囲む。

 腕を抑えられ、無防備な熊に剣が入っていった。


 ロリーさんの手足がブルブルと震え、すぐに止まると抜けなくなった。


 私はもう片方の腕もシールドで止める。


 鼓膜が破れそうなほどの咆哮に、みんなが耳を塞ぎ、私は耳から血が流れた。

 シールドが悲鳴を上げるように軋む。これを消すわけにはいかない。


 鼓膜が破れたらしく、キーンという耳鳴りがして、もう誰が喋っているのかさえわからない。


 ソールさんが駆け出すのが見えた。

 鍋の蓋を持ち、肉を斬るときのナイフを持っている。

 なにか叫び声を上げながら必死の形相で駆け抜けていた。


 ソールさんはナイフを投げ放ち、お鍋の蓋で刺さっている剣を懸命に叩く。

 剣が胴へ深々と食い込んでいく。熊からは血がドクドクと流れ出ていた。

 ロリーさんも熊の脛を蹴り、アネットさんの杖が熊の目を抉る。


「はぁ、はぁ……」

 頭がクラクラする。


 熊が口から血を吐く。

 頭がふらつき、腕の力が無くなっていった。


 私はシールドを解き、ソールさんの頭上へ魔法の剣を作り出した。


「ソールさん、上ので!」

 気づいたソールさんが跳躍し、魔法の剣を握るとそのまま振り下ろした。

 熊は二つに分かたれ、音を立てながら倒れた。


 私はそっと自分の鼓膜を治療する。


「みなさん、怪我とかありませんか?」

 何だかやつれた顔をしている。

 私と同じように鼓膜をやられたのかもしれないと思い、それぞれの鼓膜にも治癒魔法をかけた。


「ツムギさん、助かったよ。ありがとう」


「ご、ごめん。なんだか手足が震えて……」


「ごめんなさい、詠唱が少し違ったせいで威力が出なくて……」

 みんな重症な気がするけれど、ミミちゃんがいてくれたら、きっとみんなも普通に戦えていたのだろうなぁ。


「大丈夫ですよ。ほら、少し休憩しましょう? 調子が出ないことなんて誰にでもありますから、元気を出してください」

 微笑みかけると、みんなは一瞬だけ笑顔になる。


 未知のダンジョン。引き返した方が良い気がするけれど、大丈夫かなぁ。



 少し進んだ先に川が流れていた。その近くでテントを張り、野営の準備をした。

 お肉と野菜を煮込んだスープを作り、みんなに振舞う。


「ツムギさん、ありがとう。美味しいよ」

 ソールさんが微笑んでいるけれど、どこか寂しさを感じさせる。


「あ、あぁ。美味しいな」

 ロリーさんがガタガタと器を揺らしながら口をつける。

 顔のあちこちに跳ね飛ばしていた。


「もう、ロリーさん……」

 布を手に取り、私はロリーさんの顔をふき取る。


「料理を任せっきりになってしまって、ごめんなさい……」

 アネットさんは申し訳なさそうに顔を伏せている。


「もう……本当に大丈夫ですか?」

 それぞれの顔を覗き込んでみると、誰も目を合わせてくれなかった。


 困ったなぁ。

 みんなのことは私が守ると言ったけれど、強敵が出たら守り切れるかわからない。


 みんなが立ち上がりテントへと入っていく。


「ソールさん、お鍋の蓋を持って行かないでください」 


「んあ? す、すまない……」

 しれっと鍋の蓋を持っていくソールさんは、どうしたら立ち直ってくれるのかな。


 私にはまだ知らないことが多すぎる。

 みんなのこともよく知らないし、ミミちゃんのこともよく知らない。

 ただ、みんながミミちゃんを、ミミちゃんはみんなを好きだってことだけはわかる。


 歩いているロリーさんが、フラフラと揺れていた。


「大丈夫ですか?」

 私が肩を貸すと、すごい震えが伝わってくる。


「ご、ごめん……」


「謝らなくても大丈夫ですよ。でも、どうしてこんなに震えて?」

 ロリーさんの震えが伝わり、私の声まで震えていた。


「あ、あぁ。ミミを見ることができないだけで、こうなるとは思わなかったな……」

 苦笑いするロリーさんをテントの中まで連れて行くと、私はアネットさんの元へ向かった。



 アネットさんはぶつぶつと呟いていた。


「天から来たれ、天から来たれ、天から来たれ。雷よ唸り上げ、雷よ唸り上げ、雷よ唸り上げ。敵を穿たん、敵を穿たん、敵を穿たん。サンダーレイン、サンダーレイン、サンダーレイン」


「アネットさん、どうしたのですか?」

 私が顔を覗き込むと、視線が合った。

 嬉しそうにアネットさんが顔を綻ばせる。


「詠唱できたわ!」


「わぁ。それはおめでとうございます」

 二人で両手を取り合い、ピョンピョンと飛び跳ねた。

 良かった。アネットさんは大丈夫そう。


 問題はロリーさんとソールさんかな?


 私はそっと周囲に結界を張り、見張りを兼ねてテントの外で眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。