第9話
目が覚めると――医務室のベッド。
体が鈍く痛むけど回復力のおかげで大事には至らない。
ベッドサイドに銀色の髪。
レオンハルトが椅子に座ってエリシアの手を握っている。
「……レオンハルト殿下?」
目を開けた瞬間、彼がびくりと体を震わせた。
「無茶を、しないでください……」
声が震えている。
「私が守るって言ったのに……」
――ぎゅっ。
握る手が少し強くなる。
(やばい……可愛すぎる……)
「ごめんなさい……ご心配をおかけして」
レオンハルトは小さく首を振った。
「今度はちゃんと守ります。だから……もう危険なことはしないでくださいね」
ドアが勢いよく開く。
ガチャッ! バンッ!
「おいエリシア! 大丈夫か!?」
カイルが一番先に飛び込むように入り、続いてハインリヒとギルベルトが部屋に入ってきた。
父のギルベルトは無言でベッドに近づき、エリシアの傷を鋭い目で確認している。
ハインリヒは少し後ろで控え、静かに見守っていた。
エリシアが苦笑いで腕を見せると――
カイルがまっすぐ見つめてきた。
「次は絶対俺が守るからな」
その瞬間レオンハルトが口を開く。
「いいえ、私が守ります」
カイルが振り返る。
「は? 何言ってんだよ殿下!」
「……私が守ると誓った」
――ピリピリ。
二人が訓練場よりも大きく火花を散らす。
エリシアは二人の顔を交互に見て――
(待って! これはもう修羅場!)
――ゴンッ!
ハインリヒの大きな手がカイルの頭を叩いた。
「カイル。いい加減にしなさい。エリシア嬢が困ってらっしゃる」
カイルが「いてっ!」と頭を押さえしょんぼりする。
ギルベルトは無言でエリシアの傷を確認し終えると淡々と告げた。
「対魔法の防御訓練を、明日から追加だ」




