第10話
エリシアの部屋には毎日プレゼントが届くようになった。
最初は小さな箱だった。
白いリボンで結ばれた繊細な木箱。
中には淡い青の宝石が一粒だけ入った銀の髪飾り。
そして折りたたまれた便箋があった。
『エリシア様。あの日貴女が私のために傷を負われた瞬間から私の胸は悔恨と深い感謝に震えております。貴女の勇気は冬の氷よりも清らかで、夏の炎よりも熱く私の魂を永遠に焼きつけて離しません。どうかこの髪飾りを貴女の黒髪に添えてください。あの時守れなかった無力さを私は生涯背負って生きるでしょう。それでもどうか――私が貴女を永遠に護ることをお許しください。レオンハルト』
エリシアは便箋を読み終えた瞬間――熱が一気に体を駆け巡った。
(うわあああああ! ポエムすぎる! しかもとてつもない長文! 誠実すぎて心臓に悪いって!!)
膝を抱えてベッドの上でゴロゴロ転がる。
髪飾りを胸に押し当てた。
――ドキドキ、ドキドキ。
心臓がうるさいくらい鳴ってる。
宝石が朝の光を受けてキラキラと輝いていた。
次の日は花束だった。
白と青の花を組み合わせた清楚で美しいもの。
また手紙が添えられていた。
『エリシア様。貴女の傷が静かに癒えていくのを遠くからただ祈るばかりです。貴女の微笑みは私の暗い日々を照らす唯一の星。どうかこの花のように常に純粋でしなやかに強く咲き続けてください。そしていつか私が貴女の側で息をする日が訪れることを、心の底から願って――レオンハルト』
(もうやめてぇぇぇ! こんなの訓練どころじゃないって!!)
エリシアは慌てて顔を両手で覆い、ふぅふぅと息を吐いた。
「今日は一段とお美しいですわ」
マリアに笑われながら必死に平静を装う。
鏡を見たら耳まで赤くなっていた。
そんな日々が一週間ほど続いた。
――訓練場。
エリシアは父の手加減のない木剣を受けながら汗だくで防戦に徹していた。
対魔法防御の訓練も追加された。
毎日体はボロボロだったが回復力が早いおかげで翌朝にはほぼ完治する。
それがまた父の容赦なさを増幅させていた。
「エリシアー! 元気かー!?」
遠くから聞き慣れた元気な声。
カイルが手を振って駆け寄ってきた。
「昨日もすげえ訓練してたって聞いたぞ! もう完治したか!?」
エリシアは木剣を下ろし、息を切らしながら口元をほころばせた。
「……まあ、なんとかね。カイルこそ魔法の練習頑張ってる?」
「当たり前だろ! 次は絶対殿下に勝つ!」
カイルはしばらくエリシアの傍で雑談してから「じゃあまた明日な!」と手を振って去っていった。
カイルは訓練の合間を見ては顔を出して、元気そうかを確認して帰っていく。
そんなやり取りがほぼ毎日続いていた。
(……なんか、嬉しいな)




