第11話
ある日カイルがやってきた直後だった。
「エリシア様」
振り返るとレオンハルトが立っていた。
「今日……もしよろしければ一緒にお茶でもいかがでしょうか」
エリシアが「え、あ、えっと……」と口ごもっていると、
カイルがぴくりと反応した。
「お、おい! 俺が今からエリシアの訓練に付き合うって決めてたんだぞ!」
カイルが一歩前に出て胸を張る。
レオンハルトは首を振った。
「でしたら私がやりますので。カイルは自分の訓練があるだろう?」
「なっ……!」
カイルがムッとしてレオンハルトを睨む。
レオンハルトも瞳を細めた。
「私の方が魔法の制御に長けています」
「俺だって制御上達してるし!」
二人がじーっと睨み合う――けどすぐに微妙に頰を赤らめる。
エリシアは二人を交互に見てふふっと笑った。
(……なんだかんだ仲いいんだなぁ)
胸の奥が静かに安堵で満たされた。
その日の夕方。
マリアが伝言を届けてきた。
「お嬢様、お茶会の招待状でございます。ヴァイス家のお嬢様――リリアナ様からでございますよ」
エリシアは紅茶のカップを持った手を止めて瞬きをした。
(リリアナ様……カイルのお姉さんか。会うのは初めてだわ)
少し緊張しつつどこか楽しみな気持ちが胸に広がる。
カイルの姉というだけでなんとなく元気で面倒見のよさそうなイメージが浮かんだ。
「ありがとう、マリア。楽しみだわ」
エリシアは答えた。
「お嬢様らしいお返事ですこと」
マリアが小さく付け加えた。
次の日。
エリシアは馬車でヴァイス家の屋敷へと向かった。
レーヴェント領内でも有数の騎士の家柄で、屋敷は質実剛健な造りだった。
案内された庭園の東屋にはすでに数人の少女たちが集まっていた。
中央に座るのはリリアナ・フォン・ヴァイス。
15歳とは思えないほど落ち着いた雰囲気で、長い金髪をポニーテールにしている。
背はエリシアと同じくらい。
「お待ちしておりました、エリシア嬢」
リリアナは席を勧めた。
――がその傍らで。
カイルがふてくされた顔で立っていた。
リリアナがぴしりと言った。
「カイル、この間は本当に失礼なことをしたそうですね。ちゃんと謝りなさい」
「えー……姉上、もういいだろ……」
「謝りなさい」
「…………」
カイルは渋々エリシアの方を向き頭を下げた。
「この間は……本当にごめん。俺殿下を守ろうとしてたのに、エリシアに怪我させちゃって……ほんと悪かった」
声は小さかったが、目はまっすぐで誠実さが伝わってきた。
エリシアは笑って首を振った。
「もういいよ、カイル。私も無茶しちゃったし」
カイルはほっとしたように顔を上げ笑った。
リリアナは穏やかに口角を上げ少女たちも楽しげに声を上げ始めた。
(……なんだか、ほっこりするなぁ)




