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王子殿下の殺傷力が高すぎて死にそうです ~公爵令嬢は溺愛ルート突入中~  作者: 川合 佑樹


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第45話

 魔法実技の対人勝負から二週間――。

 王立学園の日常は甘い夢のように流れていた。

 毎朝レオンハルトの馬車が屋敷の門前に停まる。

 王子が馬車から降りてエリシアに手を差し伸べてくれる。

「おはようございます、エリシア様。今日も一緒に登校しましょう」

「……おはようございます、レオンハルト殿下」

 授業中は隣同士の席でこっそり手を握ったり、ノートにメモを滑り込ませたり。

『エリシア様の横顔、とても美しいです』

 そんな一文を読んだ瞬間、エリシアは顔を赤らめて殿下を睨むふりをする。

 殿下は照れくさそうに微笑むだけだった。


 昼休みにはカイルとセレナも加わり、四人で弁当を囲むのが日課になった。

 セレナが「お姉さま、これ、私が作ったクッキーです!」と目を輝かせて差し出してくる。

 カイルは「俺のも食えよ!」と元気よくおかずを分けてくれる。


 生徒会活動も順調で学園祭の準備が少しずつ進んでいく。

 イザベラは、表面上は完璧な笑顔で接してくるがエリシアとは必要最低限の会話だけ。

 あの対人勝負の後、クラス全体も「鬼姫」の強さを認めたのか誰も文句を言わなくなっていた。

 エリシアは毎晩ベッドに倒れ込んで思う。

(この学園生活、幸せすぎて夢みたい……。殿下と一緒にいられるだけで世界が輝いてる)

 そんな穏やかな日々が続いていた。



 その朝もいつものようにレオンハルトの馬車で登校した。

 教室に着くとセレナが駆け寄ってきた。

「お姉さま、おはようございます!」

 エリシアの袖を軽く引く。

 カイルも後ろから「おう!」と元気よく手を上げた。


 朝の挨拶を交わしていると――ユーリウスが教室の扉を開けて入ってきた。

 笑みを浮かべたままクラス全体を見渡す。

「皆さん、少しお時間をいただけますか。重大な発表があります」

 クラスが静まり返る。

 ユーリウスは続けた。

「本日、特別編入生をお迎えします。聖女、アリア・フォン・セイントクレア嬢です」

 一瞬教室が凍りついた。


 聖女。

 神託により選ばれた特別な存在。

 回復魔法は聖職者しか使えず、しかも聖女級の魔力なら戦場で死者を蘇生させるほどだという。

 処女性を守るため婚姻はできないが王族の庇護下に置かれるのが慣例。

 そんな人物が学園に編入する――。

 レオンハルトが少し複雑な表情を浮かべた。

 エリシアは隣で呟く。

「……すごい人なのですね」

 殿下が頷いた。

「ええ……国のため重要な役割を担う方です」


 やがて教室の扉が開いた。

 エレノア先生が手を引いて入ってきたのは――見た目5、6歳くらいの銀髪の幼女だった。

 ふわふわの白いドレスに大きなリボン。

 金色の瞳がキラキラと輝き、無垢そのものの表情で教室を見回す。

 その小さな体躯はレオンハルト殿下よりもさらに頭一つ分低く、人形のように愛らしい。

 クラスにどよめきが広がった。

「あれが……聖女」

「……とてつもない魔力量だ」

「すごい……」

 皆の視線は驚きと感嘆に満ち、聖女の証である強大な魔力の気配を誰もが肌で感じ取っていた。

 可愛らしさと同時に圧倒的な存在感が教室を満たす。


 エレノア先生が説明した。

「アリア嬢は遅れての編入となりますので、皆さんで温かく迎え入れてください」

 アリアは先生の後ろに少し隠れながらおどおどと教室を見回していた。

 促されて前に出て自己紹介する。

「ア、アリア・フォン・セイントクレアです……。よろしくお願いします……」

 声も仕草もまるで天使のように可愛らしかった。

 クラスがどよめいた。

「可愛すぎる……」

「守りたい、この子……」


 エレノア先生が続けた。

「アリア嬢のお世話係をお一人お願いしたいのですが……第七王子殿下の婚約者であるエリシア嬢が最適かと存じます。いかがでしょうか?」

 エリシアは一瞬目を丸くした。

「え、私ですか……?」

 でもすぐに微笑んで頷く。

「喜んでお引き受けします」

 アリアが顔を上げエリシアに駆け寄ってきた。

「エリシアお姉さま……よろしくお願いします!」

 その無垢な笑顔にエリシアは即落ちした。

(天使みたい……!)

 思わず頭を撫でてしまう。

 アリアは笑ってエリシアにぴったりと寄り添った。


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