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王子殿下の殺傷力が高すぎて死にそうです ~公爵令嬢は溺愛ルート突入中~  作者: 川合 佑樹


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第42話

 生徒会室の空気は意外なほど和やかだった。

 ユーリウスはレオンハルトに視線を向ける。

「レオンハルト、ずいぶん立派になったね。生徒会に入ってくれるなんて嬉しいよ」

 レオンハルトは少し照れくさそうに頭を下げた。

「兄上こそ会長をお務めでご苦労様です。少しでもお役に立てるよう頑張ります」

 そのやりとりにエレナが無表情のまま小さく頷き、ガルドが「期待してるぜ」と低く呟いた。

 リリアは眠そうな目をこすりながら「書類の手伝い……よろしくね」と軽く手を振った。

 エリシアはまだ少し緊張しながらも皆の顔を見回して唇を緩めた。

「頑張りますっ」

 ユーリウスが目を細める。

「エリシア嬢、君の入学試験の成績は素晴らしいと聞いているよ。婚約者として弟を支えてやってくれ」

 その言葉にエリシアは慌ててお辞儀を返した。


 短い雑談の後ユーリウスが時計を見て立ち上がった。

「では今日はここまでにしようか。また明日から本格的に活動だ」

 皆が頷き部屋を出ていく。

 エレナが最後に淡々と告げた。

「明日の朝、書類の説明をするから遅刻しないように」

 そう言って扉を閉めた。


 廊下に出るとレオンハルトがエリシアの手を握ってきた。

「エリシア様、今日はお疲れ様でした。一緒に教室に戻りましょう」

 エリシアは自然と笑顔になった。

「……ええ、殿下も」


 教室に戻るとすでにほとんどの生徒が帰った後だった。

 エリシアは自分の席に戻り鞄に教科書をしまい始めた。

 レオンハルトは隣で自分の荷物をまとめている。

「あれ……?」

 エリシアは筆箱を開けて中を覗き込んだ。

 さっきまで確かにあった万年筆が一本なくなっている。

(え、どこ行ったっけ? 朝は使ってたはずなのに……)

 鞄の中をもう一度探ってみるがやはり見当たらない。

(まあ、新しいのを買えばいいか……)


 その様子に気づいたレオンハルトが声をかける。

「エリシア様、どうかしましたか?」

 エリシアは軽く首を振って笑ってみせた。

「万年筆をなくしちゃったみたい。でも大したことないわ」

 レオンハルトの眉が少し心配そうに寄った。

「……では、私に贈らせてください」

 エリシアは目を丸くした。

「え、でもそんな悪いです! 私がなくしただけですし……」

 レオンハルトは視線を逸らさず、エリシアを捉え続けていた。

「私が贈りたいのです。エリシア様に使っていただくならそれだけで嬉しい……。それに――」

 一瞬頰をほんのり赤らめて囁く。

「使っていただくたびに私のことを思い出していただけるでしょうし」

(うわあああ!)

 エリシアは心の中で絶叫した。

 殿下の真剣な瞳を見たら拒否なんてできるはずもなく。

「……ありがとうございます、殿下。楽しみにしています」

 レオンハルトの顔が明るくなった。

「はい! 明日の朝、必ずお持ちします」

 二人は荷物をまとめ教室を出た。



 帰りの馬車の中はいつものように二人きりだった。

 窓の外を流れる王都の夕景色が徐々に美しい茜色に染まっていく。

 レオンハルトは言った。

「今日は生徒会に入れて本当に嬉しかったです。エリシア様と一緒に活動できるなんて……夢みたいです」

 エリシアは表情を和らげた。

「私もですよ。殿下と一緒ならどんなことでも頑張れそうです」

 レオンハルトは穏やかに目を細めた。

「……明日も一緒に登校しましょう」

「ええ、約束です」


 馬車が屋敷に着く頃にはすっかり夕暮れになっていた。

 レオンハルトは馬車から降りてエリシアに手を差し伸べた。

「では、おやすみなさい、エリシア様」

 エリシアはその手を握り返した。

「おやすみなさい、レオンハルト殿下」

 門の前で別れエリシアは屋敷に戻りながら胸の奥が温かくなるのを感じた。

(万年筆、なくしちゃったけど……むしろラッキーかも?)

 なんだか明日がまた楽しみで仕方ない。

 甘い余韻を胸にエリシアは部屋へと向かった。


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