第26話
馬車が賑やかな中央広場に到着した。
窓の外はもうすっかり活気に満ちていた。
色とりどりの旗が風にはためき、露店がずらりと並ぶ。
人々の波が行き交う。
レオンハルトが先に馬車を降り、振り返って手を差し伸べてくる。
お付きの騎士は馬車の陰で見守る。
「どうぞ、エリシア様。私がしっかりお支えしますから」
エリシアはその手に自分の手を重ねた。
「……お願いします、殿下」
二人は広場に降り立ち、歩き始めた。
レオンハルトはエリシアのすぐ横に並び、少しだけ前を歩きながら道をリードしてくれる。
人混みが近づくと自然とエリシアの側に体を寄せて、さりげなく守るような位置取りをしてくれた。
お付きの騎士は数歩後ろから周囲を警戒しながらついてきてくれる。
「この広場は王都で一番賑わう場所なんですよ。いろんな国の商人も来ていて珍しい品物がたくさん並んでいます」
レオンハルトはそう言いながら周りの露店を指差して楽しそうに説明してくれた。
広場の中心に差し掛かると突然人波が一気に押し寄せてきた。
「新鮮な果物だよー! 安くするよ!」
「こっちのアクセサリー、かわいいお嬢ちゃんにぴったりだよ!」
露店の呼び込みの声が飛び交う。
買い物客や観光客でごちゃごちゃと混み合い肩がぶつかりそうな人波に、二人の距離が少しずつ離れそうになった。
エリシアの手がレオンハルトの手からツルッと滑り落ちそうに。
「……っ!」
レオンハルトが慌てて背伸びし体を寄せて――必死に握り返す。
指がギュッと強く絡みついてくる。
「離れないで……エリシア様」
――ドキン。
エリシアの心臓が大きく跳ねた。
エリシアは小さく呟いた。
「……ありがとうございます、殿下」
それ以降二人は指を絡めたまま広場を歩き続けた。
レオンハルトは時折エリシアの顔を覗き込んで声をかけてくれる。
「お疲れじゃないですか?」
そんな気遣いを自然に重ねて完璧にエリシアをエスコートしてくれた。
広場を抜け少し落ち着いた通りへと入った。
石畳の道沿いに上品な店舗が並ぶエリア。
レオンハルトが足を止め微笑んで提案してきた。
「エリシア様、お腹空いていませんか? 私のおすすめのお店があるんです。どうぞこちらへ」
そう言って案内してくれたのは窓辺に可愛いスイーツが並ぶカフェだった。
店に入ると――。
店内は完全に貸し切り。
柔らかなランプの灯りがテーブルを照らす。
お付きの騎士は外で待機。
完全に二人きり。
エリシアはキョロキョロと店内を見回した。
(……事前に貸し切りにしてくれたんだ)




