第25話
屋敷の門をくぐると専用の馬車が待っていた。
青と銀を基調とした上品な馬車でクッションもふかふかだ。
レオンハルトが先に乗り込みエリシアに手を差し伸べた。
「どうぞ、エリシア様」
「ありがとうございます……」
エリシアはその手を取り馬車に腰を下ろした。
――隣に座るレオンハルトがすぐそば。
肩が触れそうな距離で甘い香りが漂う。
馬車が動き出した。
陽射しが窓から差し込み王都の広い石畳の通りを滑るように進んでいく。
貴族街の静かな石畳の道へ。
両側に並ぶ屋敷はどれも重厚で、門番たちが丁寧に一礼してくれるのが見えた。やがて道幅が広がり、人通りが増えていく。
馬車の車輪が石畳を叩く音が少しずつ賑やかになり、窓から差し込む陽射しが強くなった。
そして――
王都の広い通りに出た瞬間、景色が一気に華やかさを増した。
高い建物に色とりどりの旗がはためき、行き交う人々の衣装も鮮やかだ。
花屋の前を通ると甘い花の香りが車内に入ってきて、遠くで噴水の水音が聞こえ、街のざわめきが心地よく響いてきた。
エリシアは窓に頰を寄せた。
「王都……本当に綺麗ですね」
レオンハルトが窓の外を指差した。
「あそこに見えるのは王立劇場です。いつか一緒にオペラを見に来られたらいいなと……思っていました」
「そうなのですね……楽しみです」
レオンハルトはエリシアを見つめた。
「エリシア様とこうして過ごせる日が来るなんて……」
その純粋な言葉にエリシアの心が温かくなった。
馬車は賑やかな広場近くを通過し進んでいく。
レオンハルトが提案した。
「今日は私が案内します。王都には素敵な場所がたくさんありますから」
エリシアは頷きながら窓の外を眺めた。
人混みの中で露店の色とりどりの花やキラキラ光るアクセサリーが見える。
焼きたてのパンの香りまで漂ってきてお腹が少し鳴りそうになった。
レオンハルトがふと手を窓枠に置いた。
その指先が――エリシアの手のすぐ近く。
(もしかして……繋ぎたい、のかな?)
エリシアは息を潜め視線を落とす。
風が窓から入り二人の髪を揺らす。
合格の喜びとこれからの学園生活。
そして今日という特別な日――。
馬車は王都の街を進み二人の時間を運んでいく。
エリシアの胸は期待と甘い緊張でいっぱいだった。




