第23話
新居の大理石の床が冷たく、エリシアは少し身震いしながら食堂へ向かった。
長いテーブルの上には朝食がすでに並べられていた。
――珍しく、母が席に着いていた。
「おはよう、エリシア」
母は柔らかく口元を緩めた。
青白かった頰に、少しだけ血色が戻っているように見える。
王都の空気が体に合っているのかもしれない。
こんなに明るい笑顔を久しぶりに見た気がした。
「おはようございます、母様」
自然と笑顔になって、母の隣に腰を下ろした。
二人でスープを啜り、ちぎったパンを分け合う。
母がエリシアの手にパンを置いてくれる。
その笑顔がこんなに近くて、こんなに明るくて。
(王都に来て、本当によかった……)
スープの優しい香りが二人の間に漂う。
そんな朝食の最中だった。
執事が慌ただしく食堂の扉を開け、深く頭を下げた。
「お嬢様、奥様。第七王子レオンハルト殿下がご挨拶にお見えでございます」
「え……!?」
エリシアはスプーンを止め、口元を押さえた。
スープが少しこぼれそうになり、慌ててハンカチで拭う。
母は一瞬目を丸くしたものの、すぐに笑ってティーカップを置いた。
「……ふふ、若いわねぇ」
エリシアは慌てて立ち上がった。
「マ、マリア! 急いで準備を!」
ドレスの裾を軽く整え、廊下へと小走りで向かう。
(先触れなしって……! 殿下ぁ!)




