第13話
話題は自然と最近の王都の噂に移った。
新しいドレスの流行、舞踏会の予定、貴族たちのスキャンダル。
そして――。
「そういえば」
リリアナの隣に座る金髪の少女が目を輝かせた。
「エリシア嬢、第七王子殿下とご懇意だと伺いましたけど……どんな感じなんですか?」
周りの少女たちが一斉に身を乗り出す。
「きゃー! 私も気になってた!」
「本当にあんなに美しいの?」
「ぜひ教えてくださいませ!」
エリシアは紅茶を飲もうとした手が止まった。
(うわ、来た! 異世界女子トーク!)
「え、えっと……その……」
必死に平静を装いつつ話せる範囲で答えることにした。
「殿下は……とても優しくて穏やかでいらっしゃいます。この間も訓練で私が怪我をしたときわざわざ予定を早めてお見舞いに来てくださって……」
「きゃあああ! 予定を早めて!?」
「それって、もう完全に――!」
少女たちが一斉に身を乗り出し、目をキラキラさせてキャーキャー騒ぐ。
エリシアは耳まで赤くなりながら続ける。
「それに毎日……その手紙やお花を届けてくださったりして……」
「毎日!? お手紙!? お花!?」
「なんてロマンチック……!」
少女たちが手を叩いたり頰を押さえたりして大興奮。
「エリシア嬢、うらやましすぎますわ!」
リリアナも笑いながら言った。
「殿下は普段なかなか感情を表に出されない方だと聞いておりますのに……エリシア嬢の前ではずいぶん素直になられるようですね」
エリシアはなんとか微笑みを保った。
「……光栄すぎて戸惑ってるんですけど」
少女たちはさらに盛り上がった。
「エリシア嬢なら当然ですわ!」
「こんなに素敵なのですもの!」
「私、憧れちゃいます……!」
お茶会は終始和やかに甘い話題で満たされた。
――そしてそろそろ終わりという頃。
リリアナが立ち上がりエリシアに向かって深くお辞儀をした。
「エリシア嬢、本日はお運びいただきありがとうございました。この度は弟のカイルが本当に失礼なことをいたしました。エリシア嬢にご怪我を負わせてしまい……ヴァイス家一同心よりお詫び申し上げます」
エリシアは慌てて首を振って立ち上がる。
「い、いえ! 私こそ無茶をして……カイルは悪くないんです!」
リリアナはまっすぐエリシアの目を見て続けた。
「それでも弟の不始末は私が責任を持って謝罪いたしますわ。そして――これからもヴァイス家はレーヴェント家を、そしてエリシア様をお支えいたします。どうか何なりとお申し付けくださいませ」
その言葉に確かな重みが込められていた。
エリシアは自然と口元を緩めて頭を下げた。
「……ありがとうございます、リリアナ様」
(味方、か……嬉しいな)
庭園の風が吹き抜けお茶会は幕を閉じた。




